ジェリコの戦い
Joshua fit the battle of Jericho

ジョシュアのジェリコ攻略を歌った黒人霊歌 合唱曲としても有名

『ジェリコの戦い Joshua fit the battle of Jericho』は、ジョシュア(ヨシュア)のジェリコ攻略を歌った有名な黒人霊歌・スピリチュアル。 合唱曲としても歌われるほか、ジャズのスタンダードナンバーとしても定着している。

ジェリコ(エリコ、イェリコ)とは、イスラエルやヨルダンに近い古代オリエントの古い町の名前。上の写真はジェリコの街。

死海(Dead Sea)に注ぐヨルダン川河口から北西約15km、現在はヨルダン川西岸地区に含まれる場所にある。

【YouTube】ジェリコの戦い

歌詞の意味・日本語訳

Chorus:
Joshua fit the battle of Jericho
Jericho Jericho;
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls came tumbling down.

<コーラス>
ジョシュアはジェリコの戦いに挑んだ
砦の壁は崩れ落ちた

You may talk about your kings of Gideon,
You may talk about your men of Saul
But there's none like good old Joshua
At the battle of Jericho.
Chorus:

ギデオンもサウルもかなわない
ジェリコの戦いに挑んだ
古き英雄ジョシュア

注:ギデオンは、旧約聖書に登場するヘブライ人の士師(指導者・裁き人)。サウルは「サムエル記」に登場するイスラエル王国最初の王(紀元前10世紀頃)。

Up to de walls ob Jericho;
He march'd wid spear in han'
"Go blow dem rams" horns, ÅhJoshua cried,
"Kase de battle am in my han'."

ジェリコ砦へ向かい
槍を手に進軍したジョシュア
さあ 羊の角を吹き鳴らせ
戦いは我が手中にあり

Den de lam'ram sheep horns begin to blow,
de trumpets begin to soun',
Joshua commanded de chil'en to shout,
An' de walls come tumblinl down.
Dat mornin'

雄羊の角笛が吹き鳴らされ
トランペットが響き出すと
ジョシュアは命じた「叫べ!」
ジェリコの壁は崩れ落ちた

ヨルダン川とジェリコの町

下の地図中央を上から下へ流れるのが、黒人霊歌『深い河』、『こげよマイケル』などの歌詞にも登場するヨルダン川。

地図にあるとおり、ヨルダン川はやがて死海(Dead Sea)に流れ込むが、その死海への河口地点から北西に約15kmほど行ったところが『ジェリコの戦い』の舞台「ジェリコ」の街だ。

モーゼの後継者ジョシュア

神の意志の下、ヘブライ人(ユダヤの民)をエジプトから脱出させたモーセ(モーゼ)は、約束の地カナンへ向けて、何人かの偵察を送った。その中の一人に、黒人霊歌『ジェリコの戦い』の主人公であるジョシュア(ヨシュア)がいた。

参照:黒人霊歌『行け、モーセ Go Down Moses

偵察に行った者たちは、カナン攻略は無理だと口々に不平を吐き猛反対。中にはエジプトへ戻るべきとまで言い出す有様だったが、ジョシュア(ヨシュア)はこう言った。

我々が偵察して来た土地は、とてもすばらしい土地だった。
もし、我々が主の御心に適うなら、主は我々をあの土地に導き入れ、
あの乳と蜜の流れる土地を与えてくださるであろう。
ただ、主に背いてはならない。
あなたたちは、そこの住民を恐れてはならない。
彼らは我々の餌食にすぎない。
彼らを守るものは離れ去り、主が我々と共におられる。
彼らを恐れてはならない。

挿絵:ランフランコ作 「モーセとカナンからの使者」(バロック絵画)

モーゼの意志を継ぎジェリコ攻略へ

モーセから約束の地に入ることを許されたジョシュア(ヨシュア)は、モーセの死後その意志を受け継ぎ、神の民を率いる指導者としてヨルダン川を目指した。

ヨルダン川の激流に行く手を阻まれた一行だったが、モーセ(モーゼ)の十戒が刻まれた石板を収めた「契約の箱 Ark of the Covenant」により、神の奇跡が起きてヨルダン川は瞬く間に干上がった。

上写真:サント・マリー大聖堂(フランス)のレリーフに彫られた契約の箱

ジェリコの壁に阻まれたジョシュア一行

神の奇跡で無事川を渡りきったジョシュア一行。ジェリコの街へ進軍するが、街は固い城壁で囲まれ、城門も固く閉ざされてジョシュア達の入場を拒んだ(いわゆる「ジェリコの壁(エリコの壁)」)。

ここで神がジョシュアに告げた。「6日間ジェリコの街を一周せよ。7人の司祭は雄羊の角笛を携え契約の箱を先導せよ。」

さらに神は続けた。「7日目には街を7周し、司祭らは角笛を吹き鳴らすのだ。そして皆で時の声をあげよ。さすれば城壁は崩れ落ちるだろう。」

神のお告げに従い、角笛の先導で契約の箱と共にジェリコの街を6日間周回したジョシュア軍は、7日目に見事城壁を打ち崩し、ジェリコ攻略を果たしたのであった。以上のストーリーが黒人霊歌『ジェリコの戦い』の歌詞の背景である。

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