向う横丁のお稲荷さん 歌詞の意味

一銭あげて ざっとおがんで お仙の茶屋へ

『向う横丁のお稲荷さん』は、江戸時代から伝わる古いわらべうたまりつき歌(手まり歌)、お手玉うたとして親しまれた。

歌詞に登場する「お仙(おせん)」は、江戸中期に実在した茶屋の美人看板娘のこと。この『向う横丁のお稲荷さん』は、彼女の人気が生んだ江戸の流行歌である。

お仙については「お仙 おせん 茶屋の美人看板娘」で詳しくまとめている。

写真は、大阪府高槻市にある笠森稲荷(笠森神社)。ここから江戸の谷中へ勧請された稲荷社の境内(または門前)の茶屋でお仙が働いていた。

【YouTube】向こう横町のお稲荷さん(舞台芸として)

歌詞の一例(わらべうた・毬つき歌として)

向う横丁のお稲荷さんへ
一銭あげて ざっとおがんで お仙の茶屋へ
腰をかけたら 渋茶を出した
渋茶よこよこ 横目で見たらば
米の団子か 土の団子か
お団子 団子
この団子を 犬にやろうか
猫にやろうか
とうとう とんびに さらわれた

落語・寄席での珍芸「ステテコ踊り」

明治中期に活躍した落語家の初代・三遊亭 圓遊(1850-1907)は、わらべうた『向う横丁のお稲荷さん』の歌に合わせて、「すててこ てこてこ♪」と軽妙な囃子詞(はやしことば)で寄席舞踊「ステテコ踊り」を披露し、大変人気を博したという。

この「ステテコ踊り」では、着物の裾をまくって半股引(はんだこ/半ダコ)を見せて踊っていたことから、膝下丈まであるズボン下が「ステテコ」と呼ばれるようになったとされている(異説あり)。

三遊亭 圓遊の「ステテコ踊り」で歌われる『向う横丁のお稲荷さん』の歌詞は、わらべうたとしての歌詞とは若干異なっている。参考までに「ステテコ踊り」版の歌詞を掲載しておくので適宜参照されたい。

ステテコ踊り版の歌詞(一例)

1.向う横丁のお稲荷さんへ
一銭あげて ざっと拝んで おせんが茶屋へ
腰を掛けたら 渋茶を出して
渋茶よこよこ 横目で見たらば
米の団子か 土の団子か お団子団子

またまたそんなこちゃ 真打にゃなれね
あんよを叩いてしっかり おやりよ
おまはんのあしばとおもっちゃいけね
ひとのあしばと思っておたたき

2.さても酒席の大一座
小粋な男子の振りごとや
端唄に大津絵 字余り都々逸
甚句にかっぽれ 賑やかで
芸者に浮かれて 皆さまご愉快
お酌のステテコ 太鼓を叩いて
三味線枕で ゴロニャンゴロニャン

関連ページ

お仙 おせん 茶屋「鍵屋」の美人看板娘
その美しさから江戸中の評判となり、浮世絵師・鈴木春信の美人画のモデルとなった
手まり歌・まりつき歌
ゴムまり遊びで歌われる定番の手毬唄・まりつき歌まとめ
わらべうた・遊び歌 歌詞の意味・解釈
「あんたがたどこさ」、「はないちもんめ」、「おちゃらかほい」、「ずいずいずっころばし」など、日本の古いわらべうたの歌詞の意味・解釈
タヌキのうた
『あんたがたどこさ』、『げんこつやまのたぬきさん』など、タヌキが曲名や歌詞に登場する世界の民謡・童謡、日本の唱歌まとめ
キツネのうた
『こぎつね』、『こぶたぬきつねこ』など、かわいいキツネが出てくる世界の歌まとめ