下町の太陽 倍賞千恵子
ロシア歌曲と下町情緒が融合された倍賞千恵子のデビュー曲
『下町の太陽』は、1962年(昭和37年)にリリースされた倍賞千恵子のデビュー曲。作詞:横井弘、作曲:江口浩司。
歌い出しの歌詞は「下町の空に かがやく太陽は よろこびと 悲しみ 写すガラス窓」。
ジャケット写真:倍賞千恵子 全曲集 限定版
『下町の太陽』がリリースされた当時は、全国のうたごえ喫茶でロシア民謡・歌曲が盛んに歌われていた時代。
そのためか、同曲はロシア歌曲的な哀愁漂う曲調となっており、特に歌い出しのメロディは、ロシア歌曲『カチューシャ』のそれを思い出させる。
さらにイントロの弦楽器も、ロシアの民族楽器バラライカの音色のようにも聞こえる。
冒頭からロシア歌曲を意識した構成とする事で、当時のうたごえ喫茶愛好者を取り込もうとするレコード会社の思惑が垣間見える。
【YouTube】 倍賞千恵子/下町の太陽
カチューシャの歌詞にも関連
歌い出しのメロディがロシア歌曲『カチューシャ』に似ていると説明したが、メロディ以外にも共通点がある。
ロシア歌曲『カチューシャ』では、出征した恋人を想う少女カチューシャの切ない思いが描写されており、次のような歌詞が登場する。
Ой, ты песня, песенка девичья,
Ты лети за ясным солнцем вслед,
おお 歌よ 乙女の歌よ
太陽をかすめ 鳥の如く飛んでゆけ<引用:ロシア歌曲『カチューシャ』より」>
「太陽」というキーワードが『カチューシャ』の歌詞に存在しており、『下町の太陽』とメロディだけでなく歌詞でも共通点が見られるのが興味深い。
イントロはバラライカ?
上述したロシアの民族楽器「バラライカ(Balalaika/балала́йка)」とは、ギターのように演奏する弦楽器で、ボディが三角形(三角すい)という特徴的な形状となっている。
写真:バラライカを演奏する女性(出典:barynya.com)
『下町の太陽』のイントロが本当にバラライカで演奏されているかどうかは不明だが、時代的にロシア歌曲の影響が強かった頃の楽曲なので、実際にバラライカが用いられていたとしても何ら不思議ではないだろう。
【YouTube】 バラライカの音色(曲は『カリンカ』)
翌年に映画化
1962年にリリースされた『下町の太陽』はヒット曲となり、翌1963年に山田洋次監督により映画化され、倍賞千恵子が主演を務めた。
映画『下町の太陽』は、山田洋次にとって第2作目の監督作品。倍賞千恵子にとって山田洋次監督との出会いとなった作品であり、後の1969年から続く映画『男はつらいよ』シリーズで、倍賞千恵子は寅次郎の妹さくら役を長年務めることとなる。
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