雁がわたる 文部省唱歌
月のさやかな秋の夜に 鳴くはなげきか喜びか
『雁がわたる』(かりがわたる)は、作詞者・作曲者不明の文部省唱歌。明治45年(1912年)刊行の「尋常小学唱歌」(第三学年用)に『雁』(かり)として掲載された。
歌詞では、晩秋の日本に飛来するマガンやカリガネなどの渡り鳥「雁(かり/がん)」の様子が描写されている。
「雁」は俳句の世界でもよく取り上げられるが、文脈によって秋の季語としても春の季語としても用いられる(渡り鳥が帰る頃は春なので)。
【YouTube】雁がわたる 杉並児童合唱団
歌詞
雁(かり)がわたる
鳴いてわたる
鳴くはなげきか喜びか
月のさやかな秋の夜(よ)に
棹(さお)になり かぎになり
わたる雁 おもしろや
雁がおりる
連(つ)れておりる
連(つれ)は親子か友だちか
霜(しも)の真白(ましろ)な秋の田に
睦(むつ)まじく つれだちて
おりる雁 おもしろや
雁が登場する有名な作品あれこれ
清少納言「枕草子」では、「秋は夕暮れ」の段において、「雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。」として、雁が連なって飛ぶ趣深さが述べられている。
明治34年(1901年)に発表された瀧廉太郎の名曲『荒城の月(こうじょうのつき)』では、「秋陣営の霜の色 鳴きゆく雁の数見せて」として、秋の空に舞う雁の様子が描写されている。
『雁がわたる』の2年前に発表された唱歌『秋の夜半(あきのよわ)』においては、雁が群れ飛ぶ姿や雁の声などが登場する。
そして大正時代における北原白秋の童謡『里ごころ』では、「雁(かり)雁 棹(さお)になれ さきになれ」のように、『雁がわたる』の歌詞と類似した表現が用いられているのが興味深い。
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