冬景色 ふゆげしき 歌詞の意味
日本の童謡・唱歌/さ霧消ゆる湊江の 舟に白し朝の霜
『冬景色(ふゆげしき)』は、1913年(大正2年)刊行の「尋常小学唱歌」第五学年用』に掲載された文部省唱歌。
歌詞の季節は冬の初め頃、1番は水辺の朝、2番は田園の昼、3番は里の夕方が描写されている。2007年(平成19年)に「日本の歌百選」に選ばれた。
写真:静岡県・用宗(もちむね)海岸(出典:excite用宗Webサイト)
【YouTube】冬景色 唱歌
【YouTube】冬景色 歌:森 麻季
歌詞
さ霧(ぎり)消ゆる 湊江(みなとえ)の
舟に白し 朝の霜
ただ水鳥(みずとり)の 声はして
いまだ覚めず 岸の家
烏(からす)啼(な)きて 木に高く
人は畑(はた)に 麦を踏む
げに小春日(こはるび)の のどけしや
かへり咲(ざき)の 花も見ゆ
嵐吹きて 雲は落ち
時雨(しぐれ)降りて 日は暮れぬ
若(も)し灯火(ともしび)の 漏れ来(こ)ずば
それと分かじ 野辺(のべ)の里
一番の歌詞の意味
さ霧(ぎり)
「さ霧」の「さ」は、語調を整えるための接頭辞。漢字では「狭霧」と書くが、歌詞では「さ霧」。
秋の季語であり、「さ霧消ゆる」とすることで、秋の終わりから初冬へ、季節の移り変わりが表現されている。
湊江(みなとえ)
「湊江(みなとえ)」とは、港になっている入江のこと。
早霧(さぎり)
ちなみに、「早霧」と書いて「さぎり」と読む用例があり、静岡県伊豆市修善寺にある「早霧湖(さぎりこ)」や、元宝塚歌劇団の雪組トップスター「早霧 せいな」という人名などが知られている。
「早霧(さぎり)」の意味を国語辞書で調べようとしたが、残念ながら、該当する語句を辞書で確認できなかった。漢字を見る限り、「朝早くに出る霧」といった意味がありそうだが、辞書で意味を確認できないため、これ以上の言及は控えることとしたい。
二番の歌詞の意味
「麦を踏む」とは、秋播きの麦が発芽した後に足で踏みつける「麦踏み(むぎふみ)」のこと。写真は麦踏の様子(出典:小平ふるさと村Webサイトより)
芽を踏むことで茎の伸び過ぎを防ぎ、根の張りをよくして、より多くの実がつくようになる。11月~2月に毎月一回程度行う。
げに
「げに」とは、「本当に、いかにも」。
小春日(こはるび)
「小春日(こはるび)」とは、晩秋から初冬にかけての、暖かく穏やかな晴れの日。冬の季語。小春日和(こはるびより)。現代の暦では11月頃になる(陰暦10月)。
のどけし
「のどけし」とは、天候が穏やかでのどかな様子。
かへり咲(ざき)
「かへり咲(ざき)」は、ツツジやサクラ、ウメなどの春の花が小春日和に誘われて時季外れに咲くこと。冬の季語。「返り咲き」、「二度咲き」、「帰り花」などと呼ばれる。
花も見ゆ
「花も見ゆ」の「見ゆ」は、「見える」の文語形(終止形)。
三番の歌詞の意味
雲は落ち
「雲は落ち」は、雲が低く垂れ込めること。
時雨(しぐれ)
「時雨(しぐれ)」は、秋の末から冬の初めごろに、降ったりやんだりする小雨。
最後の2行 現代語訳
日暮れと悪天候で真っ暗になってしまったため、里の集落もほとんど見えず、もし家の明かりが漏れ見えていなければ、そこが集落だとは分からなかっただろう(「それと分かじ」)という意味。
関連ページ
- 冬の童謡・唱歌・日本のうた
- 『雪(ゆきやこんこ)』、『冬景色』、『たきび』など、冬を感じる日本の歌・世界の歌まとめ
- カラスのうた
- 『七つの子』、『夕焼け小焼け』、『からすの赤ちゃん』など、カラスに関する日本の民謡・童謡・世界の歌まとめ。
- 日本の民謡・童謡・唱歌
- 子供から大人まで親しまれる有名な童謡・唱歌、日本の四季を彩る春夏秋冬・季節の歌、わらべうた、地元の民謡・ご当地ソング
- 尋常小学唱歌 有名な唱歌
- 日本人の作曲家による日本独自の楽曲が用いられた文部省唱歌