アクロス・ザ・ユニバース Across the Universe 歌詞の意味・和訳

ビートルズがインドで瞑想修行 サンスクリット語のマントラが歌詞に

『Across the Universe』(アクロス・ザ・ユニバース)は、1969年にリリースされたビートルズの楽曲。レノン=マッカートニー名義だが、実質的にはジョン・レノン作曲。

前年の1968年2月中旬、ビートルズはジョージ・ハリスンの発案でインドへ旅立ち、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーのアシュラム(修行場)で瞑想を行った。

ビートルズの4人は朝3時から瞑想の修行に入り、1日5時間を瞑想にあててマハリシの説教を熱心に聴き入ったという。

なお、『Across the Universe』の初レコーディングは1968年上旬であり、インドへの出発前に録音されている。

レット・イット・ビー スペシャル・エディション SHM-CD

ジャケット写真:レット・イット・ビー スペシャル・エディション (SHM-CD)

『Across the Universe』の歌詞にある「ジャイ・グル・デーヴァ、オム(Jai Guru Deva, Om)」は、マハリシと関連するサンスクリット語のマントラ(祈祷の言葉)に由来している。

このページでは、まず『Across the Universe』の歌詞について和訳を行い、そのあとで歌詞で繰り返されるマントラの意味について簡単に解説してみたい。

【YouTube】 Across The Universe (Remastered 2009)

歌詞の意味・和訳(意訳)

『Across the Universe』

作詞・作曲:Lennon–McCartney

Words are flowing out
Like endless rain into a paper cup
They slither while they pass
They slip away across the universe

言葉はあふれ流れ出ていく
紙コップへ降り注ぐ止まない雨のように
滑るように流れ行き
全宇宙へ広がっていく

Pools of sorrow, waves of joy are
Drifting through my opened mind
Possessing and caressing me

悲しみの水溜まり 喜びの波
僕の開かれた心を漂いながら
僕を包み込み 優しく撫でていく

Jai Guru Deva, Om
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world

神聖なる導師に栄光あれ(感謝する)
何者も僕の世界は変えられない

Images of broken light which dance
Before me like a million eyes
They call me on and on
Across the universe

ゆらぐ光の像が
無数の瞳となり
僕の前で踊る
そして僕に呼びかける
宇宙の至る所から

Thoughts meander like a restless wind
Inside a letter box
They tumble blindly as they make their way
Across the universe

思考はあてもなくさまよう
郵便箱の中で吹き止まない風のように
そしてやみくもに転がり進んでいく
宇宙の至る所へ

Jai Guru Deva, Om
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world

神聖なる導師に栄光あれ(感謝する)
何者も僕の世界は変えられない

Sounds of laughter, shades of life are
Ringing through my open ears
Inciting and inviting me

笑い声 人生の影
私の開かれた耳に響きながら
心をかき立て 招いている

Limitless undying love
Which shines around me
Like a million suns
It calls me on and on
Across the universe

限りなき不滅の愛が
無数の太陽のように
僕の周りで輝く
そして僕に呼びかける
宇宙の至る所から

Jai Guru Deva, Om
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world
Nothing's gonna change my world

神聖なる導師に栄光あれ(感謝する)
何者も僕の世界は変えられない

Jai Guru Deva
Jai Guru Deva...

神聖なる導師に栄光あれ(感謝する)

Jai Guru Devaの意味は?

『Across the Universe』の歌詞で繰り返し登場するフレーズ「ジャイ・グル・デーヴァ、オム(Jai Guru Deva, Om)」について、簡単に解説してみたい。

下写真は、インドでビートルズに超越瞑想を指導したマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー(Maharishi Mahesh Yogi/1918-2008)。

マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー Maharishi Mahesh Yogi

写真:マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー(出典:Wikipedia)

まずは「ジャイ・グル・デーヴァ」の部分について。最後の「オム(Om)」は後述する。これらはヒンドゥー教における礼拝用言語のサンスクリット語が用いられている。

全体の意味としては「神聖なる導師に栄光あれ(勝利あれ)」といった内容になる。海外サイトでは「感謝します」といった訳も見られた。

ジャイ(Jai)

「栄光」、「勝利」、「感謝」などの意味がある。

グル(Guru)

「グル(Guru)」とは、サンスクリット語で「師、導師、師匠」、「指導者」、「教師」、「尊敬すべき人物」などを意味する。

デーヴァ(Deva)

「デーヴァ(Deva)」とは、サンスクリットで「神」を意味する。ラテン語の「デウス(Deus)」、ギリシア語の「ゼウス(Zeus)」、英語の「ディヴァイン(divine)」、イタリア語の「ディーヴァ(diva)」などと同じ語源。

マハリシの師匠「グル・ディーヴァ」

ちなみに、ビートルズがインドで瞑想の指導を受けたマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーには、スワミ・ブラフマナンダ・サラスワティ(Swami Brahmananda Saraswati)という師匠がおり、スワミは「グル・デヴ(Guru Dev)」(神聖なる指導者)と呼ばれていた。

スワミはヒンドゥー教シャンカラ派の僧院の法主であり、マハリシが創立した「超越瞑想(ちょうえつめいそう/Transcendental Meditation/トランセンデンタル・メディテーション)」は、スワミの教えを受け継ぐ「マントラ瞑想法(マントラ・ヨーガ)」の一種である。

オム(Om)の意味は?

「ジャイ・グル・デーヴァ、オム(Jai Guru Deva, Om)」の末尾「オム(Om)」について。

「オム(Om)」とは、バラモン教をはじめとするインドの諸宗教において神聖視される呪文で、「オーム」とも表記される。

日本でも有名な密教の真言「オン アビラウンケン ソワカ」の「オン」と同じ由来。

ヒンドゥー教では、「om」は「aum」の3文字で表され、「a」は創造神ブラフマー、「u」は維持神ヴィシュヌ、「m」は破壊神シヴァを表し、全体として三神一体(トリムールティ)の真理を表すものとされる。

ちなみにウィキペディアによれば、かつて存在したオウム真理教の「オウム」という名称もこの「aum」に由来しているとのこと。教団のマークには、「オム(Om)」を意味するインドの文字(デーヴァナーガリー)が用いられている。

冒頭の歌詞について

歌詞冒頭の「words are flowing out」のくだりは、レノンの当時の妻であるシンシアとのエピソードが元になっている という。

ウィキペディアでは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコへのインタビューをまとめた書籍「All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono」からの記述として、次のような趣旨の逸話が紹介されていたので、簡単に引用してみたい。

I was lying next to my first wife in bed, you know, and I was irritated, and I was thinking. She must have been going on and on about something and she'd gone to sleep...

当時の妻シンシアと一緒にベッドで横になっていたんだけど、僕はイライラしてて、考え事をしてた。彼女は何かについて延々としゃべり続けていたんだろう。そして彼女は寝てしまった。

...and I kept hearing these words over and over, flowing like an endless stream. I went downstairs and it turned into a sort of cosmic song rather than an irritated song...

僕は彼女の言葉を何度も聞き続け、それは尽きることのない流れのようだった。僕が階下に降りていったときに、それはイライラの歌から宇宙の歌へと変わったんだ。

...purely inspirational and were given to me as boom! I don't own it you know; it came through like that.

純粋に霊感を受けた感じで、ブーン!と僕に降りてきたんだ。あの歌詞は僕が作ったというよりも、あんな感じで突然やってきたんだ。

松尾芭蕉から影響を受けた?

『Across the Universe』をネットで検索すると、この曲は松尾芭蕉から影響を受けた「らしいです」との記述を見かけることがある。

ジョン・レノンは1966年11月にオノ・ヨーコと出会い、彼女を通じて松尾芭蕉「奥の細道」やその他の俳句に触れる機会があったようだ。

『Across the Universe』をレコーディングした1968年に、ジョン・レノンはオノ・ヨーコと同棲を開始し、シンシアと法的に離婚している(1968年11月8日)。

この曲と松尾芭蕉にどのような関連性があるのか、明確に説明できるほど筆者は松尾芭蕉に詳しくないので、ここではジョン・レノンと松尾芭蕉のつながりについて軽く触れておくだけにとどめた。

ご興味のある方は、ジョン・レノンと松尾芭蕉についてさらにネットで掘り下げて調べてみると、何か面白い発見に出会えるかもしれない。

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