「盛岡さんさ踊り」や『さんさ時雨（しぐれ）』の「さんさ」とは、一体どんな意味や由来・語源があるのだろうか？

様々な説が提唱されているが、その主要な説について簡単にまとめてみた。

まとめに際しては、主に国立国会図書館レファレンス協同データベースを参考にした。

なお、「さんさ」は曲名だけでなく、『こきりこ節』や『南部牛追唄（牛方節）』の囃子ことばとしても使われている。

さんさ時雨

「さんさ」の意味や語源については、『さんさ時雨（しぐれ）』との関係で次のように説明される場合がある。

さんさ時雨の説 我友大屋士由曰 さんさ時雨は少々（ささ）時雨にてさゝと降時雨也細雨を云”

＜引用：「新撰陸奥風土記」＞

この説明では、「さんさ時雨」は「少々（ささ）時雨」であり、「ささ」と降る時雨（しぐれ）が「さんさ時雨」と解説している。

サァサ（サーサ）踊れ

さあ踊れとみんなに声をかける掛け声が「さんさ」の語源と考える説がある。

またある和尚が修行中の坊主を集めて、皆踊れサーサと声をかけて始めたのが、さんさ踊りになったとも言われている。

＜引用：「増補版 盛岡の民俗芸能」大宮さんさ踊り＞

殿様は大いに喜び「サァサ踊れ、サァサ踊れ」と、自らも踊りの中に入って楽しまれた。その時の「サァサ」が「さんさ踊り」の名になったという。

＜引用：「増補版 盛岡の民俗芸能」山岸さんさ踊り＞

笹踊り

「増補版 盛岡の民俗芸能」によれば、「大宮さんさ踊り」の解説の中で、さんさ踊りの由来について次のように説明している。

住民が喜んで岩石を囲み手に笹を持って踊ったのが笹踊り、言葉がなまってさんさ踊りの始まりだと伝えられている。

＜引用：「増補版 盛岡の民俗芸能」大宮さんさ踊り＞

「笹踊り」→「ささ踊り」→「さんさ踊り」の変化は確かにありそうな雰囲気だ。

参差踊り

「さんさ」とは「参差」であるとの次のような解説をネットで確認できた。

三ッ石権現の加護で悪鬼を撃退した。この地の住民は里の平安を喜ぶ余り、欣喜雀躍して三ッ石の周辺をサンサ入り乱れて踊り狂った。」これが「参差踊り」のはじまりだと伝えられている。

＜引用：三本柳さんさ踊り・都南太鼓保存会　「３０年の歩み」より＞

小学館デジタル大辞泉で「参差」を引くと、読み方は「しいし」であり、「互いに入りまじるさま。また、高低・長短などがあって、ふぞろいなさま。」と説明されている。

「さんさ」＝「参差」説では、これを漢字の読み通りに「サンサ」と読んだうえで、様々な住民が踊り狂う様子が「参差踊り」の起源だと解説している。

三十三踊り

さんさの語源は、さんさ踊りの種類が「33」あったことに由来するという説明もある。

さんさ踊りは本来33種の踊りがあってサンサ（三十三）踊りと云われていたという。

＜引用：「増補版 盛岡の民俗芸能」澤目さんさ踊＞

三十三の踊りについては、参差踊りの「参差」に合わせて考えられたとの解説もある。

しかし年月が経つにしたがい、踊り方もだんだん変わり遷って藩制の中期即ち 文化文政(約200年前)の頃芸能が盛んとなり、時の藩公（利敬）の奨励によって この踊りの基本が改良され、更に獅子踊り、奴踊り、囃踊り、剣舞、笠踊り、神 楽、田植踊り、よしゃれ踊り等の一部が流用され、参差踊りの「参差」にならっ て三十三のくずしの参差踊りを新作し、見前（みまえ）の三本柳部落に「お前ら の手によりこの参差踊りを永久に保存せよ。」と一巻の巻物を授けた。

＜引用：三本柳さんさ踊り・都南太鼓保存会　「３０年の歩み」より＞

囃子ことば

「さんさ」は、歌の中にある「サンサヨー」という囃子ことばに由来するとの次のような説明がある。

『日本民謡辞典』によれば、「サンサヨー」というはやし言葉からきた名称であろうとしています。『日本民謡集』を著した町田嘉章も、「サンサは囃子詞より出。（略）」と記し、「さんさ」が近世において囃子詞として慣用されてきたところからの名称としており、これが通説になっています。

＜引用：「盛岡さんさ物語」＞

「さんさ」の語源については、別な書籍で次のように解説されている。

「さんさ」という囃し詞自体は、おそらく一音の囃し詞「サ」を重ねた「ササ」に撥音や促音がはいって「サンサ」とか「サッサ」になっていったもの

＜引用：「口訳日本民謡集」＞

確かに囃子ことばには「サッサ」や「ササ」をよく見かけるので、この辺が「さんさ」の語源・由来と考えるのが自然なようにも思われる。

最後に

「さんさ」の意味・語源・由来については上述のとおり諸説あり、どれも決定的なものではないが、どの説もそれなりに説得力があり興味深い。

研究家による今後の更なる研究がまたれるところだ。

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