南部牛追唄(牛方節)

田舎なれども 南部の国は 西も東も 金の山

『南部牛追唄(牛方節)』は、岩手県で南部牛を扱う牛方(うしかた)らが唄っていたとされる岩手県民謡。岩手県出身の演歌歌手・福田こうへいも同曲を得意としている。

「田舎なれども南部の国は 西も東も金の山(かねのやま)」の歌詞が有名。実際には囃子詞(はやしことば)を入れて、次のように歌われる。

田舎なれども サァーハーエー 南部の国は サァー
西も東も サァーハーエー 金の山 コラ サンサーエー

『南部牛追唄(牛方節)』で唄われる代表的な歌詞や意味等については後述する。

写真:岩手県岩泉町の早坂高原(出典:岩泉町役場Webサイト)

【YouTube】南部牛追い唄 菊池信夫

「南部の国」の意味

前述の歌詞で唄われる「南部の国」とは、安土桃山時代に豊臣秀吉から公認された東北地方の南部藩(のちの盛岡藩)のこと。

現在の岩手県、青森県・秋田県の3県にまたがっており、砂金、紫紺、良馬の産地だった。南部藩名産の南部牛は「赤べこ」と呼ばれ、『南部牛追唄(牛方節)』は牛での荷物運搬や放牧時などに唄われていたという。

「なぎの葉」の意味

『南部牛追唄(牛方節)』では次のような歌詞もよく歌われる。

今度来るときゃ 持て来てたもれ 奥の深山(みやま)の なぎの葉を 

ナギ(梛)は、関東以南に生息するマキ科の常緑樹。熊野神社では神木とされており、熊野巡礼者は袖や笠につけて魔よけやお守りにしていたという。

浄瑠璃「霊山国阿上人(りょうぜんこくあしょうにん)」では、熊野比丘尼が歌う「びくにうた」として、次のような唄が登場する。

今度御座らば 持て来てたもれ みつのお山の なぎのはを

『南部牛追唄(牛方節)』で唄われる「なぎの葉」のくだりは、この熊野比丘尼の唄が元になっていると考えられる。

ちなみに、ナギの葉といえば静岡県熱海市の伊豆山神社(いずさんじんじゃ)も有名。伊豆山神社は源頼朝が北条政子と逢瀬を重ねていた場所としても知られ、二人は変わらぬ愛の証として御神木のナギの葉をもっていたという。

代表的な歌詞

沢内三千石 お米の出どこ つけて納めた お蔵米

江刈葛巻 牛方の出どこ いつも春出て 秋もどる

さても見事な 牛方浴衣 肩に籠角 裾小班(こぶち)

肥えた牛(べこ)コに 曲木(まげき)ょの鞍コ 金の成る木を 横づけに

牛よ辛かろ 今ひと辛抱 辛抱する木に 金がなる

さんさの意味は?

『南部牛追唄(牛方節)』の囃子ことば「サンサーエー」の「サンサ(さんさ)」については、その意味や語源・由来に関して様々な説が提唱されている。

詳しくは、こちらのページ「さんさ 意味・語源・由来」を参照されたい。

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