エンヤー えんや 意味・語源・由来
日本の民謡・童謡で使われる囃子ことば・掛け声
日本の民謡で「エンヤー」と囃子ことばや掛け声が入ることがある。「エンヤードット」の『斎太郎節(大漁唄い込み)』や、「エンヤーコラヤ」の『北海盆歌(ほっかいぼんうた)』がその典型だ。
この「エンヤ(えんや)」とは、一体どんな意味があるのだろうか?その語源・由来は何だろうか?
このページでは、「えんや」は「えいや」が転じた言葉であると仮定したうえで、その意味や語源・由来について簡単にまとめてみたい。
「えいや」から「えんや」へ
筆者の私見では、「えんや」は「えいや」が訛った言葉であると推測している。
「えいや」を辞書で調べてみると、次のように説明されている。
力を入れるときなどに発する掛け声。「えいや、と綱を引く」
<出典:デジタル大辞泉(小学館)>
次に、「えんや」を含む言葉として、「えんやら」を辞書で引いてみると次のとおり。
重い物を押したり引いたりするときの掛け声。えんやらや。
<出典:デジタル大辞泉(小学館)>
「えいや」も「えんやら」も、どちらも力を入れて何かを引いたり動かしたりする際の掛け声であり、「えいや」と「えんや」は密接な関係にあると考えられる。
発音がラクな「えんや」
「えいや」と発音しようとすると、「え」「い」「や」と母音を三つ発音しなければならない。特に真ん中の「い」は口をある程度横に開く必要がある。
これと比べると、「えんや」の発音は、真ん中の「ん」がノドの動きだけで発音できるため、口の動きを休むことが出来る。その分、「えいや」よりも発音がラクになる。
日常会話においては、発音の楽な方に言葉が変化することは珍しくなく、「えんや」も「えいや」が発音上自然な方で定着した言葉であると考えられる。
「えいや」の語源・由来は?
さて、「えいや」の語源・由来は何だろうか?
これを考えるにはまず、「えいや」を「えい」と「や」に分解する必要がある。
「や」については、語調を整えるための、実質的な意味のない間投助詞と考えてよいだろう。
すると焦点は、「えい」という言葉の語源・由来に絞られることになる。
「えい」の語源・由来
「えい」という言葉の語源・由来を調べていくと、「えい声」という言葉がすぐに見つかる。
精選版 日本国語大辞典によれば、「えい声」の意味は次のとおり。
力を入れて何かをする時に、また元気づけるために発する掛け声。えいや声。えいえい声。
<出典:精選版 日本国語大辞典「えい声」>
「力を入れて何かをする時」という点は、「えいや」・「えんや」が使われる場面と同じなようだ。
「えい」は「曳」?
さらに「えいえい」を辞書で調べていくと、次のような興味深い解説を見つけたのでご紹介したい。
力を入れる時に発することば。
※名語記(1275)五「大物をひく人勢が、えいえいといふ、如何。えいは曳也。ひくといへる字の音をとなへてひく也」
<出典:精選版 日本国語大辞典「えいえい」>
「名語記(みょうごき)」とは、鎌倉時代に編纂された語源辞書(国宝)。上記辞書によれば、「えいは曳也(えいなり)」、つまり「えい」は「曳(えい)」であると説明されている。
「曳」は、「引きずる、引き寄せる」を意味する漢字。つまり「引く」を意味する漢字の音である「えい」を掛け声として用いたと、鎌倉時代の名語記では解説しているのだ。
エイエイオーの語源?
ちなみに、テレビ番組やドラマなどで、戦国時代の合戦前や勝ち戦において「エイエイオー!」と声を上げるが、これも「えいえい声」の一つである。
「エイエイオー!」の語源・由来については諸説ある。詳しくは、こちらの「エイエイオー! 意味・由来・語源は?」を参照されたい。
まとめ
「エンヤ(えんや)」は「えいや」が転じた言葉であり、力を入れるときなどに発する掛け声の意味合いがある。
その語源は「えい」であり、「引きずる、引き寄せる」を意味する「曳」の発音に由来すると考えられる。
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