四季 ピアノ曲集
チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840-1893)
チャイコフスキー『四季』は、1月から12月まで一か月ごとにロシアの風物詩を曲の題材として作曲された全12曲のピアノ曲集。副題は「12の性格的描写」。
音楽雑誌の企画として、1875年に作曲が依頼された。毎月の季節感が表現されたロシアの詩人による作品と、その詩の性格を音楽的に描写したチャイコフスキーのピアノ曲が合わせて掲載され、一つの雑誌上でロシアの詩と音楽の芸術的コラボレーションが実現した。
ボリス・クストーディエフ「マースレニツァの火曜日」(1916年).Isaak Brodsky Museum 蔵
なお、当時のロシアでは旧暦が使われていたため、チャイコフスキー『四季』で描かれる季節感も1か月ほどのズレがあるようだ(例:作品中の「4月」は現在の「5月」頃)。
ちなみに、チャイコフスキー『四季』はピアノ曲ではあるが、その各曲には管弦楽・オーケストラで用いられるような楽器を彷彿とさせる書法が見られる。実際、ソ連の作曲家アレクサンドル・ガウクによってオーケストラ(管弦楽)向けに編曲された『四季』も存在する。
【YouTube】6月 舟歌 Barcarolle
チャイコフスキー「四季」 全12曲のタイトルと詩
- 1月 炉端にて At the Fireside
- 夜が薄明かりのうちに静かな喜びの一隅をつつむ
いろりの火は小さくなり ろうそくは溶けてしまった
アレクサンドル・プーシキン(Alexander Pushkin/1799–1837) - 2月 謝肉祭 Carnival
- 間もなく感謝祭で賑やかな楽しいお祭り騒ぎが始まる
ピョートル・ヴャゼムスキー(Pyotr Vyazemsky/1792–1878) - 3月 ひばりの歌 Song of the Lark
- 空の光と輝きが まだ眠っていた花の上に落ちる
春のひばりの歌は 明る青い深みに響き渡る
アポロン・マイコフ(Apollon Maykov/1821–1897) - 4月 松雪草(雪割草) Snowdrop
- 明るい光が積もった雪を通してかすかに光り
こんなに青く清らかな松雪草が輝いている
古い運命への涙の最後 そして幸福の夢への最初のあこがれ
アポロン・マイコフ(Apollon Nikolayevich Maykov/1821–1897) - 5月 白夜(五月の夜) Starlit Nights
- 何という夜! 何という恍惚!
私の真夜中の国 お前に感謝する
何と新鮮で澄んでいることだろう この五月の爽やかさは!
アタナシイ・フェート(Afanasy Fet/1820—1892) - 6月 舟歌 Barcarolle
- 浜辺で波を我々の足で愛撫させておくれ
輝く星は我々に 悲しくひそかなあいさつをおくる
アレクセイ・プレシチェーエフ(Aleksey Pleshcheyev/1825–1893) - 7月 刈り入れの歌(草刈り人の歌) Song of the Reaper
- 私の手はむずむずする 打つために振り上げよ!
風よ 南から顔に吹いてくれ!
アレクセイ・コリツォフ(Aleksey Koltsov/1809–1842) - 8月 収穫の歌 Harvest
- 今 男も女も子供も
茎がそんなにも背高く伸びた穀物を刈っている
それらを束にして村に運んでいく
そして一晩中 車の軋む音が聞こえる
アレクセイ・コリツォフ(Aleksey Koltsov/1809–1842) - 9月 狩りの歌 September: The Hunt
- さあ今だ! 角笛が鳴っている!
狩人たちはすでに構えた
猟犬は跳びはね 前へ行こうとする
そのうちに 今にもとめておくことができなくなりだしている
アレクサンドル・プーシキン(Alexander Pushkin/1799–1837) - 10月 秋の歌 Autumn Song
- わたしたちの庭から秋が
金色の木の葉の飾りを奪った
そして木の葉はゆっくりと
林の中を風にはためいて行く
アレクセイ・ニコラエヴィチ・トルストイ(Aleksey Nikolayevich Tolstoy/1883-1945) - 11月 トロイカ Troika
- あこがれに満ちて遠くを見てはいけない
トロイカの馬を追ってはならない
心の中であんなに悲しく語った絃は
永久に消えさせてしまえ
ニコライ・ネクラーソフ(Nikolay Nekrasov/1821–1878) - 12月 クリスマス週 Christmas
- 少女達はかつて未来のことをたずねてみようと企てました
自分たちの靴をクリスマスの日に門の前へ投げました
ヴァシーリー・ジュコーフスキー(Vasily Zhukovsky/1783–1852)
出版社: 全音楽譜出版社; 菊倍版 (2008/12/1) |
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