恋はやさし野辺の花よ
スッペ作曲 オペレッタ「ボッカチオ」より

オーストリアのオペレッタから生まれた日本の愛唱歌

『恋はやさし野辺の花よ』は、19世紀オーストリアの作曲家フランツ・フォン・スッペ(Franz von Suppé/1819-1895)が1879年に作曲したオペレッタ「ボッカチオ Boccaccio」劇中歌に基づく日本の歌謡曲。

大正時代にブームとなった浅草オペラで誕生した日本独自の内容の歌謡曲で、「ボッカチオ」第1幕のアリア『あなたが愛して下さるならば Hab' ich nur deine Liebe』のメロディが流用されている。

浅草オペラにおける「ボッカチオ」からはもう一曲「迷曲」が誕生しており、同じく第1幕のセレナーデ『うるわしの人よ、聴き給え(スカルツァのセレナーデ/三馬鹿の歌)』が、スカルツァの妻ベアトリーチェの名前から『ベアトリ姐ちゃん(姉ちゃん)』というコミックソング(ナンセンス・ソング)として大変人気を博した。

その後も『恋はやさし野辺の花よ』は日本的な愛唱歌として定着し、様々なアーティストがカバーしているが、近年では、堀北真希が出演するクラシエ「いち髪」テレビCMにおいて、秦 基博(はた もとひろ/1980-)が歌う『恋はやさし野辺の花よ』がCMソングとして使われ注目を集めた。

日本語歌詞(作詞:小林愛雄)

恋はやさしい 野辺(のべ)の花よ
夏の日のもとに 朽ちぬ花よ 
熱い思いを 胸にこめて
疑いの霜(しも)を 冬にもおかせぬ
わが心の ただひとりよ

胸にまことの 露(つゆ)がなけりゃ
恋はすぐしぼむ 花のさだめ
熱い思いを 胸にこめて
疑いの霜を 冬にもおかせぬ
わが心の ただひとりよ

原曲の歌詞と意味

Hab ich nur deine Liebe
Die Treue brauch ich nicht.
Die Liebe ist die Knospe nur,
Aus der die Treue bricht.

私がただあなたを愛するなら
誠実さはいらない
愛はただのつぼみ
そこから誠実さは生まれる

Drum sorge für die Knospe,
Daß sie auch schön gedeih,
Auf daß sie sich in voller Pracht
Entfalten mag, o gib drauf acht

だからつぼみの世話をする
それが美しく咲くように
満開の花を開くように
目を離さないで

Ob mit, ob ohne Treu!
Ob mit, ob ohne Treu!

誠実さがあろうとなかろうと!

Denn selbst auch ohne Treue
Hat Liebe oft entzückt,
Denn ohne Liebe Treu allein
Hat keinen noch beglückt!

誠実さはなくとも 愛は喜び
愛なき誠実さは
誰も幸せにしない

Drum sorge für die Knospe,
Daß sie auch schön gedeih,
Auf daß sie sich in voller Pracht
Entfalten mag, o gib drauf acht

だからつぼみの世話をする
それが美しく咲くように
満開の花を開くように
目を離さないで

Ob mit, ob ohne Treu!
Ob mit, ob ohne Treu!

誠実さがあろうとなかろうと!

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