交響曲第45番「告別」ハイドン
早く自宅に帰りたい楽団員らの思いを代弁した異色の演出
交響曲第45番「告別」ヘ短調は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1772年に作曲した交響曲。「告別交響曲」「Farewell Symphony(フェアウェル・シンフォニー)」とも呼ばれる。
当時ハイドンは、ハンガリー有数の大貴族エステルハージ家の副楽長を務めていた。ハイドンと楽団員は離宮のエステルハーザ(Eszterháza)に住み込みとなり、冬以外の1年の大半をそこで滞在していたため、正直なところ多くの楽団員は早く妻や家族の元に帰りたいと不満を抱いていたようだ。
写真:ハンガリーのエステルハーザ宮殿(出典:Wikipedia)
楽団員らの帰宅をエステルハージ侯に認めてもらうため、ハイドンはこの交響曲第45番「告別」終楽章に異色の演出を施し、次のようにエステルハージ侯に披露した。
終楽章後半のアダージョにおいて、演奏者は1人ずつ演奏をやめ、ロウソクの火を吹き消して立ち去って行く。
そして最後には、弱音器をつけた2人のヴァイオリン奏者(ハイドン自身とコンサートマスター)だけが取り残されるというメッセージ性あふれる演出がなされた。
エステルハージ侯はすぐにこの演出の意図を汲み取り、その翌日には宮廷を避暑地のエステルハージから元のアイゼンシュタットに戻したという。
「告別」という副題は、演奏者が演奏中に去っていくという演出に由来するものだろう。ハイドン自身が命名したものではないが、19世紀初め頃から広く使われていたようだ。
【YouTube】Haydn Symphony No. 45 in F-sharp minor "Farewell"
【YouTube】最終楽章 フィナーレ
エステルハーザ正面
写真:エステルハーザ正面(出典:Wikipedia)
エステルハーザ内部
写真:エステルハーザ内部(出典:Wikipedia)
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