種山ヶ原 宮沢賢治 歌詞の意味

宮沢賢治がドヴォルザーク交響曲第9番に歌詞をつけた楽曲

『種山ヶ原』(たねやまがはら)は、岩手県出身の詩人・宮沢賢治が1924年(大正13年)に作詞した日本の歌。

歌詞では、岩手県・種山高原の自然が描写されている。種山ヶ原は、宮沢賢治ゆかりの景勝地「イーハトーブの風景地」の一つとして、国の名勝に指定されている。

種山高原

写真:種山高原(出典:岩手県奥州市ウェブサイト)

メロディは『遠き山に日は落ちて』と同じく、ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」第2楽章のメロディが用いられている。

同曲のメロディに日本語の歌詞をつけたのは、宮沢賢治『種山ヶ原』が初めて。堀内敬三が『遠き山に日は落ちて』を発表したのは戦後。

なお、ウィリアム・フィッシャーが英語の歌詞をつけた『Goin' Home(ゴーイング・ホーム)』は、宮沢賢治『種山ヶ原』より数年前の1922年に発表されている。

【YouTube】 種山ヶ原 宮沢賢治

歌詞(作詞:宮沢賢治)

1.
春はまだきの朱雲(あけぐも)を
アルペン農の汗に燃し
縄と菩提樹皮(マダカ)にうちよそひ
風とひかりにちかひせり

四月は風のかぐはしく
雲かげ原を超えくれば
雪融けの草をわたる

2.
繞(めぐ)る八谷(やたに)に劈靂(へきれき)の
いしぶみしげきおのづから
種山ヶ原に燃ゆる火の
なかばは雲に鎖(とざ)さるる

四月は風のかぐはしく
雲かげ原を超えくれば
雪融けの草をわたる

歌詞の意味・補足

春はまだき

春の早い時期、早春。「マダの木」の「マダ」と頭韻を踏んでいる。

アルペン農

高原で営まれる農業・放牧

マダの木

シナノキやボダイジュ(菩提樹)は、東北や北陸ではマダ、マンダ、モーダなどと呼ばれることがある。

マダの皮は「マダカ」となる。シナノキやボダイジュの皮はゆでられ、取り出した繊維で布を織り衣服が作られた。

うちよそひ

(マダの皮で作った)衣服(蓑/みの)を身にまとい

ちかひせり

誓いを行った

劈靂(へきれき)

急に雷が激しく鳴ること。かみなり、いかずち、雷鳴。

いしぶみ(石文/碑)

文字などを刻んで建てられた石碑 (せきひ) 、碑 (ひ) 。

しげき

多い。たくさんある。種山ヶ原の周辺は雷が多く、雷神を祀った石碑が多い。

おのづから(自ら)

自然に。いつのまにか。

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