星めぐりの歌 歌詞の意味・星座
あかいめだまの さそり ひろげた鷲の つばさ
『星めぐりの歌』は、作詞作曲:宮沢賢治による星座を題材とした歌。歌詞は「銀河鉄道の夜」や「双子の星」などに登場する自身の詩が用いられている。
2021年に開催された2020東京オリンピックでは、閉会式で聖火が消される直前のパフォーマンスで『星めぐりの歌』が歌われた。
そのほか、2013年のNHK朝ドラマ「あまちゃん」サントラ版や、高畑勲監督のアニメ映画「セロ弾きのゴーシュ」オープニングでも『星めぐりの歌』が使われている。
高倉健最後の主演作品となった映画「あなたへ」では、主人公の妻役を務めた田中裕子が『星めぐりの歌』を歌い上げている。
カバーについては、坂本龍一・矢野顕子の娘・坂本美雨や、高畑充希(みつき名義)、元ちとせ盤などが知られている。
宮沢賢治の出身地である花巻市では、東北新幹線・新花巻駅到着時の車内チャイムや、釜石線・新花巻駅のSL銀河が接近時から発車まで、『星めぐりの歌』のメロディが流れる。
【YouTube】坂本美雨 with CANTUS 『星めぐりの歌』
【YouTube】映画「あなたへ」より 田中裕子『星めぐりの歌』
ジャケット写真:セロ弾きのゴーシュ/オープニング曲『星めぐりの歌』
歌詞
あかいめだまの さそり
ひろげた鷲(わし)の つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。
さそり座
「あかいめだまの さそり」は、天の川沿いに見える夏の星座・さそり座と、さそり座で最も明るい赤色の恒星アンタレスのこと。
アンタレスは、さそりの心臓として位置づけられることが多い。
写真:さそり座のアンタレス(左下の赤い星)出典:Wikipedia
わし座
「ひろげた鷲(わし)の つばさ」は、夏を代表する星座の一つ、わし座のこと。1等星のα星アルタイルは、七夕(たなばた)伝説の彦星(ひこぼし)として有名。
わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ、こと座のベガの三つを結んた三角形は「夏の大三角」と呼ばれる。
こいぬ座
「あをいめだまの 小いぬ」は、1等星プロキオンを擁する冬の星座・こいぬ座。おおいぬ座のシリウスであるとの解説も見られる。
写真:こいぬ座と冬の大三角(出典:Yahoo!きっず)
こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のベテルギウスの3つを結んだ三角形は「冬の大三角」と呼ばれる。
へび座(へびつかい座)
「ひかりのへびの とぐろ」の「へび」は、へびつかい座によって頭部と尾部に分断されている「へび座」のこと。
へび座はとぐろを巻いていないので、へび座に属する「M16わし星雲」を「とぐろ」と表現している可能性も考えられる。
写真:へび座のM16わし星雲(出典:Wikipedia)
オリオン座
「オリオンは高く うたひ」の「オリオン」は、言わずと知れた冬の星座・オリオン座のこと。
オリオン座の1等星ベテルギウスと、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンの3つの1等星を結んだ三角形は「冬の大三角」と呼ばれる。
オリオン座が見える夏の終わり頃から秋にかけて夜露・朝露がおり、冬に入れば霜が降りる。それが「つゆとしもとを おとす」の「つゆとしも(露と霜)」で表現されている。
アンドロメダ座(銀河)
「アンドロメダの くもは」は、アンドロメダ座、またはアンドロメダ座に位置するアンドロメダ銀河(M31)のこと。
「くも(雲)」という表現から、かつて「アンドロメダ星雲」と呼ばれていたアンドロメダ銀河を指していると思われる。
写真:アンドロメダ銀河(出典:Wikipedia)
「さかなのくちの かたち」とは、長い楕円形に見えるアンドロメダ銀河の形状を、例えば池のコイがエサを食べようと水面で口をぽっかり空けた時のような状態に例えたのではないだろうか。
おおぐま座
「大ぐまのあしを きたに」の「大ぐま」は、腰から尻尾にあたる7つの星が「北斗七星」として有名な北天の星座・おおぐま座のこと。
北斗七星のα星とβ星を結んだ線を、α星側に5倍ほど延長すると、北極星(ポラリス)に突き当たる。これが『星めぐりの歌』の歌詞「五つのばしたところ」として歌われている。
アルファベット「W」の形に見えるカシオペヤ座からも北極星の位置が分かる。「W」の外側の斜線が交差するように延長し、その交点から「W」の中央の星へ線を結び、さらにそれを上へ5倍延長すると、北極星の位置に到達する。
画像:北極星の見つけ方(出典:Raymay Fujii webサイト)
こぐま座
「小熊のひたいの うへは」の「小熊」とは、北極星ポラリスを擁する北天の星座・こぐま座のこと。小北斗七星と呼ばれる事もある。
「そらのめぐりの めあて」の「そらのめぐり」とは、天体が地球の周りを回るように見える見かけ上の運動「日周運動(にっしゅううんどう)」のこと。
北極星は、日周運動(そらのめぐり)の中心点(めあて)となる。なお、北極星はこぐま座のしっぽの先に位置している。
写真:北極星を中心とした日周運動(出典:Wikipedia)
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