鯉のぼりの意味・起源・由来は?
武家社会と中国の故事や思想に由来する伝統行事
鯉のぼりの起源・由来や歴史、吹き流しや矢車の意味、取り付ける上下の順番などについて簡単にまとめてみた。
なぜ鯉を飾る? 中国の故事「登竜門」
かつての武家社会において、お家の跡取りとなる男児の健やかな成長と立身出世を願って飾られた鯉のぼり(参照:端午の節句 意味と起源・由来)。
なぜ鯉・コイを空高く掲げるのか?その理由・由来については、中国の故事「登竜門」が大きく関係している。
その故事によれば、中国の山奥には「竜門」という大きな滝があり、この滝を登り切った魚は龍になり天を舞うという。
龍になることを夢見て、数多くの魚たちが滝に挑んだがことごとく失敗。そんな中、一匹の鯉が見事に竜門を登り切り、龍となって空へ上っていた。
この故事により、空高く舞う鯉のぼりは立身出世の象徴となり、お家発展を願う武家社会の縁起物として重用されるようになった。
「登竜門」のエピソードは、童謡・唱歌『こいのぼり』の歌詞にも描写されている。
鯉のぼりの数や順番は?
時代によって鯉のぼりの数や意味合いは異なる。まず、江戸時代の鯉のぼりは、嫡男(長男)のために真鯉だけを一旒(りゅう)飾る形式だった。
明治から昭和にかけては、家父長制の下で強い父権を表すために大きい真鯉が父親を表すようになり、小さい緋鯉が子供を表す形式が定着した。
真鯉と緋鯉の組み合わせは、童謡・唱歌『こいのぼり』の歌詞(近藤宮子版)にも描写されている。
戦後になって少し大きい緋鯉が母親・お母さんを表すようになり、青や緑・ピンクなどで子供たち(兄弟姉妹)が表現され、家族全員が揃う形が好まれるようになった。
吹き流しの色の意味
鯉のぼりの一番上に飾る5色の吹き流しは、中国の五行説(五行思想)に由来している。
五行説の考え方は、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという思想で、それぞれに「青・赤・黄・白・黒」の5色が当てはめられている。
日本の鯉のぼりにおける吹き流しにはこの五行説の5色が使われおり、主に魔よけの意味合いで用いられているようだ。
ちなみに、五行説では春夏秋冬も当てはめられており、青の「木」は「春」で、「青春」の語源となっている。白の「金」は秋で、北原白秋の「白秋」のルーツ。
また、童謡・唱歌『たなばたさま』の歌詞にある「五色の短冊(ごしきのたんざく)」の「五色」も、鯉のぼりの吹き流しの五色のルーツが同じ。
矢車や天球の意味
鯉のぼりをつけるポール(幟竿/のぼりざお)の一番上(先端)には、矢車(やぐるま)や天球(てんきゅう)などの飾りがつけられていることがある。
矢車は、風車のように矢羽根がつけられており、風を受けてクルクルと回る構造になっている。
矢車の矢は武家社会における武具の弓矢を表しており、正月の縁起物である「破魔矢(はまや)」のように、矢で邪悪な気を打ち払う意味合いがある。現代では、幸運を射止める意味を持たせてもいいかもしれない。
一番上の天球または回転球は球状に形作られ、矢車と同じく風を受けてクルクルと回る仕組みになっている。天球の意味としては、男の子のいる家庭を神様に知らせる役割があるようだ。
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