ジョン・ニュートンの人生・伝記

アメイジング・グレイスを作詞したイギリスの牧師 神の奇跡で回心

賛美歌『アメイジング・グレイス Amazing Grace』を作詞したイギリスの牧師ジョン・ニュートン(John Newton/1725-1807)。その人生・伝記を簡単にまとめてみた。

ストーリーは大きく分けて5つ。「少年時代」、「海軍時代」、「商船時代」、「グレイハウンド号で神の奇跡に遭遇」、そして「キリスト教への回心」。全5ページ。

世界地図とコンパス

このページではまず、ジョン・ニュートンの少年時代や家族についてストーリーを展開してみたい。ほぼ史実に基づいている(脚色あり)。

ジョン・ニュートンの少年時代・家族

ジョン・ニュートンは、ロンドンで1725年7月24日に生まれた。父親は、イギリス東インド会社(British East India Company)の地中海貿易に携わる貿易船の船長。

母親エリザベスは、敬虔で宗教熱心な女性。足しげく礼拝堂(非国教会)に通っており、幼い頃からジョンに聖書や問答、賛美歌などに触れさせていた。残念なことに、彼女は肺の病気を患い、ジョンが7歳の頃に、30歳の若さでこの世を去っている(父はその後再婚)。

笑顔の子供

8歳になると、ジョンは全寮制の学校に通い始めるが、ラテン語を少し学んだ以外は特に興味を引かれるものはなく、2年ほどで中退してしまった。彼にとっては、幼い頃に母親から教わった事の方が、学校の授業よりも遥かに高度で価値の高いものだったのかも知れない。

11歳になってからは、貿易商であった父親の船に乗り込み、地中海への航海を数年間にわたり経験。17歳頃には父親が貿易業を止めてしまったため、それ以降は一緒に海へ出ることはなかった。

父親は、自分が船を下りた後の息子の将来を案じ、自分の友人であるジョセフ・マネスティ(リバプールの商人で船のオーナー)に、息子の面倒を見てくれるよう手紙を出した。

マネスティ氏はこの依頼に対し、ジャマイカにあるプランテーションの監督役の職を推薦。将来は園主としての地位も与えられるということもあり、ジョンはこれを喜んで受け入れたが、運命は彼に安定した将来を許さなかった。

彼女との運命の出会い

ジャマイカに向けて出発するまでの間、ジョンはイングランド南東部ケント州の州都メイドストン(Maidstone)で父親の仕事を手伝っていた。

メイドストンは、彼の母親のいとこであり親友であったエリザベス・カトレット(Elizabeth Catlett)が住んでいるチャタム(Chatham)にとても近い場所だった。

チャタム Chatham イギリス

チャタム(上写真)は古くからイギリス海軍の基地があり、今日では国立造船所や造船博物館などがある歴史ある街。

ジョンが近くまで来ていることを知ったカトレットは、彼を家に招いた。一家から手厚い歓迎を受ける中、ジョンの視線は一人の女性に釘付けになっていた。

その女性とは、カトレットの娘で、自分より3歳年下のメアリー(Mary Catlett/当時14歳/愛称:ポリー)だった。

一目で彼女を好きになってしまったジョンは、彼女といる時間が楽しくて楽しくて、あっという間に予定の3日間は過ぎてしまった。

一旦ジャマイカへ出発してしまえば、少なくとも4~5年は戻って来れないことをわかっていたジョンは、なんとかあれこれ理由をつけてずるずると、予定の3日間を遥かに超えて、なんと3週間も彼女の家に長居していたという。

激怒する父親

もともとジャマイカへの出発まであまり時間はなかった。カトレットの家に長居していた間に、ジョンの将来を約束するはずだったジャマイカへの船は、彼を置いて出発してしまった。

若いジョンにとっては、彼女といることがすべてであり、たとえ将来につながる大事な仕事とはいえ、数年間も彼女と会えなくなることは耐え難かったのだろう。

この事実を知った彼の父親は嘆き、怒り、陸での仕事を与えるのは取り消しにして、商船の水夫として彼を一から叩き直すことを決意する。

ジャマイカでのチャンスをみすみす逃し、罰として父親から命じられて商船の水夫として地中海への航海をこなしている間も、ジョンはチャタムの家で出会った彼女の事が頭から離れなかった。

航海を終えてイングランドに戻ってくれば、いてもたっても居られず、次の商船に乗り込むまでの時間を利用して、なんとか彼女に会いに行こうとするほどだった。

18歳という年頃のジョンにとって、異性に対するはち切れんばかりの情熱を抑えられなかったのは無理のないことだった。しかし、この彼女への情熱が、後のジョンの人生の歯車を大きく狂わせていくことになる。

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