Children Go To And Fro
チルドレン・ゴー・トゥー・アンド・フロー
日本の童謡『すずめのおやど』メロディのルーツ
『Children Go To And Fro』(チルドレン・ゴー・トゥー・アンド・フロー)は、19世紀アメリカで幼児教育向けに作曲された子供の歌(歌詞は後掲)。
アメリカ合衆国の国立図書館であるアメリカ議会図書館では、同曲の1879年時点の楽譜画像をネット上で公開しており、日本でも簡単にその内容を確認することができる。
その楽譜によれば、作曲者(編曲者)はイギリス出身のフェルディナンド・クエンティン・ダルケン(Ferdinand Quentin Dulcken/1837-1901)と記されていた。
ただ、『Children Go To And Fro』自体は1840年代にも出版されていた曲(メロディは若干異なる)なので、ダルケンは同曲の編曲者であろう。
歌詞の一例・日本語訳(意訳)
Children go to and fro,
In a merry pretty row;
Footsteps light, faces bright,
'Tis a happy, happy sight,
子供たちが行ったり来たり
元気に可愛く列になって
足取り軽く 明るい笑顔で幸せそうに
Swiftly turning round and round,
Do not look upon the ground
Follow me, full of glee, singing merrily.
すばやく向きを変え 下を向かずに
ついておいで 満面の笑みで
元気に歌いながら
メロディは日本の童謡『すずめのおやど』と同じ
日本の童謡『すずめのおやど』は、この『Children Go To And Fro』がルーツと考えられている。アメリカ議会図書館でネット公開されている楽譜でも、両曲が同じメロディであることが確認できる。
時系列的には、明治時代に『Children Go To And Fro』が翻訳され日本の幼稚園向け唱歌『進め進め』として導入され、その後昭和時代に歌詞が差し替えられて童謡『すずめのおやど』として生まれ変わった。
ルーツといっても共通しているのはメロディのみで、歌詞の内容的な関連性はまったくない。
フランス民謡とのつながりは?
日本の童謡『すずめのおやど(雀のお宿)』のルーツが外国曲であることは間違いないが、それがアメリカではなく、なぜか「フランス民謡」であると紹介されるケースが散見される。
『すずめのおやど』と『Children Go To And Fro』のメロディの同一性については、アメリカ議会図書館の公開資料で客観的に確認できるので、ルーツとなる国を表示するとすれば「アメリカ」とするのが自然な流れのはずだが、日本国内の出版物では「フランス民謡」と表記される場合が多い。
もし「フランス民謡」と表記される理由があるとすれば、『Children Go To And Fro』のルーツがフランス民謡である、という仮説に基づくものである可能性が高い。
『Children Go To And Fro』のルーツについては、残念ながら筆者は客観的な資料を見つけることはできなかった。
ただ、『Children Go To And Fro』のメロディは、例えばドイツ民謡にルーツをもつ『蝶々(ちょうちょ)』に似た構造を持っており、ドイツ民謡的な雰囲気が強く感じられる。
これがフランス民謡にルーツを持つ曲と考えるのは若干難しい気がするが、「火のない所に煙は立たず」であり、「フランス民謡」説には何らかの根拠があるのかもしれない。もしそれがあるのなら、後学のために是非とも情報を公開してほしいものだ。
関連ページ
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