チロルの子守歌(ハイジ ブンバイジ)
オーストリア民謡(チロル民謡?)
『チロルの子守歌(ハイジ ブンバイジ) Heidschi Bumbeidschi』は、ゆったりとしたワルツ調が優しい響きのオーストリア民謡(チロル民謡?)。
「チロル」とは、オーストリア西部のチロル州のこと。アルプス山脈の一部。ドイツのバイエルン州南部(シュヴァーベン地方)と国境を接している。
オーストリア・チロル州の教会
曲名の意味は?
曲名の「ハイジ ブンバイジ」には意味はなく、子供を寝かしつけるための「ねんねんころりよ おころりよ」的なフレーズとして使われている。
アルプスの少女ハイジとの関係も気になるが、こちらはドイツ語圏の女性名アーデルハイト(Adelheid)の愛称ハイジ(Heidi)なので、『チロルの子守歌』との関係はないだろう。
ちなみに、オーストリアとの国境に位置するドイツのバイエルン地方では、「眠る」という意味の「heidigehen」(ハイディゲーエン)という言葉があるそうだ。
【YouTube】Heintje - Heidschi Bumbeidschi
【YouTube】チロルの子守歌 (ハイジ ブン ハイジ)
歌詞の一例・日本語訳
Åber heidschi bumbeidschi, schlåf långe,
es is jå dein Muatter ausgånga;
sie is jå ausgånga und kimmt neamer hoam
und låßt dås kloan Biabele gånz alloan!
Åber heidschi bumbeidschi bum bum,
åber heidschi bumbeidschi bum bum.
だが眠れ ぐっすりと眠れ
お前の母親は行ってしまった
彼女は去り行き 二度と帰っては来ない
幼い子を一人残して
だが眠れ 安らかに眠れ
Åber heidschi bumbeidschi, schlåf siaße,
die Engelen låssn di griaßn!
Sie låssn di griaßn und låssn di frågn,
ob du in’ Himml spaziern willst fåhrn.
Åber heidschi bumbeidschi bum bum,
åber heidschi bumbeidschi bum bum.
だが眠れ 安らかに眠れ
天使がお前を見守っている
天使は知りたがってる
お前が天国に行きたいかを
だが眠れ 安らかに眠れ
歌詞の内容は?母に捨てれらた子の歌?
『チロルの子守歌(ハイジ ブンバイジ)』の歌詞では、母親に見捨てられてしまった可哀想な子供が描写されるくだりがある(死別の可能性も)。
日本語版(作詞:中山知子)では母親との別れはまったく描かれていないが、コーラス部分の「アバ ハイジ」の「アバ」に原曲のなごりが隠されているように思われる。
原曲の歌詞「Aber」は、ドイツ語では「だが、しかし」を意味する逆接の接続詞。「アバ ハイジ」で「だが眠れ」の意味になる。
母親との別れという悲しい出来事があったが、「だが眠れ、今は眠れ(アバ ハイジ)」と子どもを慰めるような原曲のストーリーが、日本語版にも微妙に残されているのである。
なお、偶然にも、日本語では赤ちゃんをあやすときに「あばばばば」というフレーズを用いるため、「アバ ハイジ」という言葉はそれ自体で日本語的に「子守歌」のフレーズとして違和感なく収まっているのが興味深い。
しかも「アバ ハイジ ブンバイジ ブンブン」とコーラス全体で呪文のようなフレーズが完成しており、元のドイツ語の意味から独立したユニークな存在感を放っている。外国語のカタカナ表現ならではの面白さがうまく活かされているようだ。
関連ページ
- 世界の子守歌 有名な曲
- 『シューベルトの子守歌』、『モーツァルトの子守歌(フリース)』など、日本でも有名な子守歌特集