喜びも悲しみも幾歳月
おいら岬の灯台守は 妻と二人で沖行く船の 無事を祈って灯をかざす
「おいら岬の灯台守は」が歌い出しの『喜びも悲しみも幾歳月(いくとしつき)』は、1957年(昭和32年)に公開された同名の映画における主題歌。
木下惠介監督によるこの映画では、観音崎(神奈川県)や御前崎(静岡県)など、日本各地の灯台を転々とする灯台守(とうだいもり)夫婦の人生ドラマが描かれる。
作詞・作曲は、木下惠介監督の実弟である木下 忠司(きのした ちゅうじ/1916-2018)。12年後の1969年には、テレビ時代劇「水戸黄門」主題歌『あゝ人生に涙あり』を作曲している。
写真:観音埼灯台(神奈川県横須賀市三浦半島/出典:Wikipedia)
灯台守(とうだいもり)とは、有人灯台に滞在して管理を行う専門職のこと。灯台近くの住居に住み込む形で管理を行う。
長崎県五島市の女島灯台が最後の有人灯台(2006年12月に無人化)であり、映画「喜びも悲しみも幾歳月」の舞台の一つにもなった。現在は海上保安庁が灯台管理を行っている。
【YouTube】喜びも悲しみも幾歳月 若山彰
歌詞について
映画主題歌として作曲された『喜びも悲しみも幾歳月』では、映画の内容がどの程度反映された歌詞となっているのだろうか?次のとおり歌詞を引用して確認してみたい。
俺(おい)ら岬の 灯台守は
妻と二人で 沖行く船の
無事を祈って 灯(ひ)をかざす
灯をかざす冬が来たぞと 海鳥(うみどり)なけば
北は雪国 吹雪の夜の
沖に霧笛(むてき)が 呼びかける
呼びかける離れ小島に 南の風が
吹けば春来る 花の香(か)便り
遠い故里(ふるさと) 思い出す
思い出す星を数えて 波の音(ね)きいて
共に過ごした 幾歳月の
よろこび悲しみ 目に浮かぶ
目に浮かぶ<引用:木下 忠司『喜びも悲しみも幾歳月』歌詞>
歌詞の冒頭では、「灯台守」「妻と二人」のようにキーワードを明示することで、映画の題材・主人公が明確に表現されている。
吹雪の冬に、花咲く春、季節の変化で時間の流れが描写され、灯台守として夫婦で悲喜こもごもの年月を重ねてきた主人公の感慨が歌い込まれている。
映画に登場した主な灯台について
灯台守の主人公は日本各地の灯台を転々としており、「北は雪国」、「離れ小島」といった歌詞にもそれが見て取れる。
写真:新潟県佐渡島の弾埼灯台と灯台守の銅像(出典:Wikipedia)
実際に映画で主人公が灯台守として赴任した主な灯台は次のとおり。
石狩灯台(北海道)
映画ではここで長男・長女が誕生する
弾埼灯台(新潟県・佐渡島)
読み:はじきさきとうだい/夫婦の灯台守の銅像が建てられている
観音埼灯台(神奈川県・三浦半島)
日本初の洋式灯台/映画のファーストシーンに登場
御前埼灯台(静岡県)
読み:おまえさきとうだい/歴史的・文化的価値の高いAランクの保存灯台に指定
安乗埼灯台(三重県・志摩)
読み:あのりさきとうだい/初代は1873年(明治6年)4月に設置された
男木島灯台(香川県・瀬戸内海)
読み:おぎしまとうだい/灯塔は総御影石(庵治石)造り
女島灯台(長崎県・五島列島)
読み:めしまとうだい/日本で最後の有人灯台(2006年12月に無人化)
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