あんたがたどこさ 歌詞の意味・解釈

熊本市の船場・洗馬?それとも埼玉県川越市の仙波山?

『あんたがたどこさ』は、熊本市船場地区に関連する日本の童謡・わらべうた。古くは女の子の手まり唄(まりつき唄)として歌われた。

遊び方は、4拍子のリズムでボールをついて、「さ」の所で足にくぐらせる。最後の「ちょいとかぶせ」でスカート(昔は着物)でボールを隠す。

熊本市船場地区の市電・船場橋駅には、親子たぬきやハガキたぬきなど様々なタヌキ像が建てられている。親子たぬきの誕生日の2月16日には、近くの幼稚園児らを集めて毎年誕生祭も開催されているという。

挿絵:講談社「童謡画集(3)」(1958年)より

歌詞

あんたがたどこさ 肥後さ
肥後どこさ 熊本さ
熊本どこさ 船場(せんば)さ

船場山には 狸がおってさ
それを猟師が 鉄砲で撃ってさ
煮てさ 焼いてさ 食ってさ
それを木の葉で ちょいとかぶせ

船場山とは?

熊本には船場(せんば)という地名や船場川があるが、船場山(せんばやま)という山はない。では、歌詞にある船場山とは一体どこを指しているのだろうか?

一説には、熊本城付近の新町地区で城の堀が建設された際、堀を作ったときの土を盛り上げた土塁を「せんば山」と呼んでおり、そこに狸がいた様子が『あんたがたどこさ』の歌詞で描写されているという。

熊本城天守

写真:熊本城天守(2005年撮影/出典:Wikipedia)

エビと漁師・洗馬川

熊本に伝わる『あんたがたどこさ』には、「たぬき」が「エビ(海老)」となり、「船場山」が「洗馬川」となっている歌詞も存在する。

洗馬川には えびさがおってさ
それを漁師が 網さでとってさ
煮てさ 食ってさ
うまかろさっさ
(うまさのさっさっさー)

洗馬川とは、熊本城周辺を流れる坪井川のこと。上流の厩橋(うまやばし)あたりには、かつて熊本藩の厩(うまや)が置かれていた。「えびさ」は「エビ(海老)」のこと。

熊本城の長塀と坪井川

写真:熊本城の長塀と坪井川(出典:Wikipedia)

坪井川で熊本藩の厩(うまや)の馬を洗っていたことから、坪井川は洗馬川とも呼ばれていたという。

この歌詞では、山で鹿や猪などを狩る「猟師」ではなく、川や海で魚を取る「漁師」になっているのが大変興味深い。

坪井川には船場橋がかけられており、橋のたもとにはエビ(海老)をかたどったオブジェが設置されている。

船場橋とエビ(海老)のオブジェ 熊本

写真:船場橋とエビ(海老)のオブジェ(出典:Wikiwand)

本当は埼玉県川越市の仙波山?

『あんたがたどこさ』の「せんば(船場)」とは、熊本の船場地区ではなく、埼玉県川越市の仙波山(現在の日枝神社古墳付近)を指しているとの有力説が存在する。

川越市の日枝神社古墳(仙波山)

写真:川越市の日枝神社古墳(仙波山)出典:Google Map

江戸時代後期の幕末に、薩長連合軍が倒幕運動のために川越の仙波山に駐屯していたときのこと。

そこで付近の子供たちが、薩長連合軍の兵士らにどこからきたのか尋ねたとされ、その様子が『あんたがたどこさ』の歌詞に描かれているという。

川越市には「仙波山」があり、仙波山には徳川家康公を祀った仙波東照宮(せんばとうしょうぐう)が存在する。徳川家康は「狸」の俗称で知られている。

徳川家康公

写真:徳川家康公(出典:Wikipedia)

こう考えると、「船場山には狸がおってさ」の部分は「仙波山」と歌詞を書き変えても話の筋が通ることになる。

歌詞の言葉遣いについても、熊本弁ではなく関東なまりに近いことから、『あんたがたどこさ』は関東発祥のわらべうたとする説も有力だ。

仙波東照宮 埼玉県川越市

写真:仙波東照宮(埼玉県川越市/出典:じゃらん.net)

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