刈干切唄 かりぼしきりうた
宮崎県高千穂地方を中心に唄われた茅の刈り取り作業歌
『刈干切唄(かりぼしきりうた)』とは、高千穂地方を中心に唄われた宮崎県民謡。ススキ・チガヤ・スゲなどの「茅(かや)」を刈り取る作業を「刈干し切り」と言い、その仕事歌として唄われた。
刈り取られた茅は、乾燥させたのち、茅葺屋根(かやぶきやね)の材料になるほか、牛馬の冬期のまぐさ・飼料となる。
写真:高千穂町五ヶ村(出典:宮崎県五ヶ瀬自然学校 フォレストピア・フットパス)
『刈干切唄』のメロディには主に2種類あり、半音を含まない五音音階である陽旋法・田舎節(いなかぶし)で唄われるものと、『黒田節(酒は飲め飲め)』のような陰旋法・都節(みやこぶし)音階で唄われるものがある。
高千穂地方では、半音を含まない陽旋法・田舎節で唄われ、その他の全国的な地域では都節(みやこぶし)で唄われることが多い。
写真:長野県小谷村の茅刈り(出典:本日、おたり日和。)
【YouTube】刈干切歌 陽旋法・田舎節
【YouTube】 刈干切歌 陰旋法・都節
歌詞の一例
ここの山の 刈干(かりぼ)しゃ すんだヨ
明日はたんぼで 稲刈ろかヨ
もはや日暮れじゃ 迫々(さこさこ)かげるヨ
駒(こま)よ いぬるぞ 馬草負えヨ
屋根は萱(かや)ぶき 萱壁なれどヨ
昔ながらの 千木(ちぎ)を置くヨ
歌詞の意味
「迫々(さこさこ)かげるヨ」とは、「谷間も暗くなる」の意味。「迫(さこ)」とは、関西・九州地方で「山あいの小さな谷」を意味する。
「駒(こま)よ いぬるぞ」は、「馬よ、帰るぞ」の意味。
千木(ちぎ)とは?
「千木(ちぎ)」とは、屋根の大棟の上にあげられたX字形に交叉する組木。茅葺き屋根のほか、神社建築に多く見られる。
神社の場合と異なり、茅葺き屋根における千木は、大棟や屋根葺き材が風でとばされるのを防ぐための重みの役割を果たしている。
挿絵:茅葺きに千木を乗せる作業(出典:富士かやぶき建築 茅吉)
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