めえめえこやぎ(児山羊/小山羊)
首が折れる怖い童謡? 原曲はドイツ?
『めえめえこやぎ(児山羊/小山羊)』は、1921年に作曲された日本の童謡。作詞:藤森秀夫. 作曲:本居長世。原題は「めえめえ児山羊」。
『七つの子』や『赤い靴』など童謡の名曲を残した本居長世(もとおり ながよ)によるメロディだけあって、優しく穏やかでメルヘンチックな世界観が巧みに表現されている。
ただ、歌詞については若干引っかかるところが多く、素直に歌を楽しめないという方もいらっしゃるのではないか。
特に「首こが折れる」のところが、優しく穏やかなメロディとのギャップもあって、人によっては「怖い」「不気味」と感じる場合もあるだろう。歌詞の意味については後述する。
【YouTube】めえめえ児山羊 持田ヨシ子
歌詞の一例(原詩とは表記が異なる)
めえ めえ 森のこやぎ 森のこやぎ
こやぎ走れば 小石にあたる
あたりゃ あんよが あー痛い
そこでこやぎは めえと鳴く
めえ めえ 森のこやぎ 森のこやぎ
こやぎ走れば 株こにあたる
あたりゃ あんま(頭)が あー痛い
そこでこやぎは めえと鳴く
やぶこあたれば はらこがちくり
朽木(とっこ)あたれば 首こが折れる
折れりゃこやぎは めえと鳴く
歌詞の意味
2番の「株こ」は木の切り株。当初の歌詞は「株(かぶつ)」だった。
「株こ」の「こ」は、物への愛着や親愛の情を示す接尾語。現代的な例では「にゃんこ」「わんこ」など。童謡『どじょっこ ふなっこ』の方言もこの例。吉幾三『俺ら東京さ行ぐだ』の歌詞にある「銭コ(ぜにこ)」も同様。
3番の「やぶこ」は「藪(やぶ)」+「こ」。「はらこ」は「腹(はら)」+「こ」。「朽木(とっこ)」は腐った倒木。
これらの接尾語は、作詞者があえて東北地方の方言を取り入れようとした苦心の作だという。泥臭い方言と美しいメロディとのギャップが何とも言えないクセを生み出している(賛否両論だろう)。
折れるのは首?足首?
さて、問題の「首こが折れる(頚こが折れる)」だが、これは足首を指しているのか?それとも頭を支える頸椎、すなわち「首」のことなのだろうか?
子供向けの童謡として、一般的な感覚で考えれば、これは「足首」を表していると考えるのが自然だろう(そうでなければ子供に聴かせたくない)。
しかし、藤森秀夫の作詞によるこの歌詞では、足首の方ではなく、頭の方の首を表していると考えられているようだ。
童謡研究家の池田小百合氏によれば、『めえめえこやぎ』の「首こが折れる」について次のように述べている。
(朽木)にあたると(頸)が折れて死んでしまうよ。だから、あわてて走るのはいけないよ」と教えているのです。
人によって色々な解釈があっていいと思うが、首が折れたら激痛と呼吸困難でまともに発声できないのではないだろうか?声を出すとしたらもはやそれは遺言になるだろう。
様々な童謡が「怖い童謡」として取り上げられることがあるが、この歌詞が「(頭の方の)首が折れる」を意味しているとしたら、「怖い」というよりもちょっとグロテスクで気味が悪く、もはや童謡として受け入れ難い印象を受ける。他の「怖い童謡」とはだいぶ意味合いが異なっているように思われる。
ドイツの童謡が原曲?
『めえめえこやぎ』の情報を調べていくと、どうやらこの曲はドイツの童謡をある程度翻訳したような内容になっているという。
そのドイツの童謡では、子ヤギまたはヒツジが登場し、野原で石や切り株などにつまずいて足や頭、お腹を打ってメーと鳴くが、首(または足首)のくだりは出てこないようだ。
ドイツ語の原曲とやらを見たことがないのでこれ以上詳細は不明だが、また何か原曲について判明次第、このページに追記してお知らせする予定だ。