ちんから峠 歌詞「チンカラホイ」由来・意味

ドラえもんにも影響を与えた「ちんからほい」のフレーズで有名

『ちんから峠』は、『あの子はだあれ』や『お猿のかごや』などで知られる作曲家・海沼 實(かいぬま みのる)が1939年(昭和14年)に発表した日本の童謡。

歌詞は、細川雄太郎の作詩による『ちりから峠』を原詩としている。ドラえもんにも影響を与えた有名な「ちんからほい」というフレーズは、細川の詩を元に作曲者の海沼 實が考案したもの。

「ちんからほい」の由来は、細川の原詩に登場する「ちりからしゃん」という擬音語。これは、馬の背や首などに着けられた鈴が鳴る音を意味している。原詩の詳細については後述する。

ちんから峠と馬

挿絵の出典:武田将美「童謡画集(3)」講談社 1960年

『ちんから峠』のモデルとなった可能性がある具体的な場所・地名については、原詩の作者・細川雄太郎の故郷である滋賀県蒲生郡日野町の瓜生津峠(国道307号、東近江市境)や笹尾峠(甲賀市境)などが挙げられることがあるが、モデルの場所について作者本人によるコメントは残されていない。

【YouTube】 童謡 ちんから峠

歌詞と原詩の違いは?

海沼 實が発表した『ちんから峠』の歌詞と、その原詩『ちりから峠』には、どのような違いがあるのだろうか?

まずは、海沼 實『ちんから峠』の歌詞を次のとおり引用して、その内容を簡単に確認してみよう。

ちんからほい ちんからほい
ちんから峠の おうまはほい
やさしい おめめで
ちんからほいほい ちんからほい
おすずをならして とおります
はるかぜ そよかぜ うれしいね

ちんからほい ちんからほい
ちんから峠は おひよりほい
ふもとの 子どもが
ちんからほいほい ちんからほい
わまわしごっこで あそんでる
小鳥もぴいちく ないている

ちんからほい ちんからほい
ちんから峠の おうまはほい
町から お帰り
ちんからほいほい ちんからほい
おせなにおみやげ 花のたば
おくびをふりふり 帰ります

歌詞では、荷物や人を運ぶ馬が「ちんから峠」を超えて行く様子が描写されている。「ちんから」とは、馬の背や首につけられた鈴が鳴る音を表現したもの。

こうした馬を引く労働者は「馬子(まご)」と呼ばれ、彼らが道中で歌った労働歌は「馬子歌(まごうた)」として、現代まで伝えられている。『箱根馬子唄(はこね まごうた)』が特に有名。

原詩『ちりから峠』

次に、『ちんから峠』の原詩『ちりから峠』を次のとおり引用して、その内容を簡単に比較してみよう。

『ちりから峠』
 細川雄太郎

ちりから峠の お馬はホイ
やさしいお目々で ちりからしゃん
お鈴を鳴らして 行きまする
春風そよ風 うれしいね

ちりから峠は 日和(ひより)でホイ
ふもとの子供が ちりからしゃん
輪まわしごっこで あそんでる
小鳥もちょうちょも あそんでる

ちりから峠の 茶店にホイ
じいさんばあさん ちりからしゃん
はちまきたすきで おはたらき
どこかでお鐘が なっている

ちりから峠の お馬はホイ
町からかえりに ちりからしゃん
おせなにおみやげ 花の束
お首をふりふり かえってく

原詩では、「ちんから」という言葉も、「ちんからほい」というフレーズも一切登場しない。これらは、作曲者の海沼 實が独自に考え出した表現であることが分かる。

それ以外の部分については、ほぼそのまま『ちんから峠』の歌詞として反映されているようだ。

子供たちに親しみやすい「ちんからほい」というユニークなフレーズを生み出した作曲者の童謡センスが素晴らしい。

映画ドラえもん のび太の魔界大冒険

『ちんから峠』から生まれた「ちんからほい」というフレーズは、漫画・アニメ『ドラえもん』にも影響を与えている。

1984年3月公開の劇場版『ドラえもん のび太の魔界大冒険』では、魔法を発動する呪文として「チンカラホイ」というセリフが連呼される。

この「チンカラホイ」は、2007年公開のリメイク版『映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』にもしっかりと継承されている。

映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い

ジャケット写真:映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い

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