秋桜 コスモス 歌詞の意味・理由
季節は秋なのに、一体なぜ春や桜が含まれる歌詞が使われるの?
『秋桜 コスモス』は、1977年10月にリリースされた山口百恵のシングル曲。作詞・作曲:さだまさし。
倍賞千恵子、中森明菜、平原綾香、夏川りみなどの女性歌手から、 福山雅治、徳永英明、河村隆一、そして山口百恵の長男・三浦祐太朗などの男性歌手まで、幅広いアーティストがカバーしている。
ジャケット写真:山口百恵 コンプリート・シングルコレクション(試聴あり)
歌詞では、明日に結婚を控えた娘が、過ぎ去り日々の思い出と母の愛をかみしめる様子が描写されている。
歌詞のポイントは二つあると考えられる。一つは「秋桜(あきざくら)」という花の名前、もう一つは「小春日和(こはるびより)」という季語。
歌の季節は秋なのに、あえて桜や春が含まれる言葉が使われる意味や理由とは?簡単に考察してみたい。
【YouTube】山口百恵『秋桜 コスモス』
【YouTube】さだまさし セルフカバー
歌詞
淡紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜りに揺れている
此頃涙脆くなった母が
庭先でひとつ咳をする縁側でアルバムを開いては
私の幼い日の思い出を
何度も同じ話くり返す
独言みたいに小さな声でこんな小春日和の穏やかな日は
あなたの優しさが浸みて来る
明日嫁ぐ私に苦労はしても
笑い話に時が変えるよ
心配いらないと 笑ったあれこれと思い出をたどったら
いつの日もひとりではなかったと
今更乍ら我儘な私に
唇かんでいます明日への荷造りに手を借りて
しばらくは楽し気にいたけれど
突然涙こぼし元気でと
何度も何度もくり返す母ありがとうの言葉をかみしめながら
生きてみます私なりに
こんな小春日和の穏やかな日は
もう少しあなたの子供で
いさせてください
秋桜 あきざくら
秋桜(あきざくら)は、コスモスの異名。メキシコを原産とするキク科の一年草で、日本へは明治20年(1887年)ごろにもたらされたようだ。
写真:コスモス(出典:Wikipedia)
秋の桜という名前の由来については、小学館「精選版 日本国語大辞典」によれば、「花が桜の形と似ていることから」と説明されている。
なお、「秋桜」という漢字を「あきざくら」と読まずに「コスモス」と読むようになったのは、この山口百恵『秋桜 コスモス』のヒットに由来している。
小春日和 こはるびより
小春日和(こはるびより)とは、晩秋から初冬にかけての暖かく穏やかな晴天のこと。冬の季語。
晩秋に、厳しい冬の到来を前にして、過ぎ去った春がまるでまた戻って来たかのような穏やかな陽気の日に使われる用語だ。
これらが意味するのは?
秋桜(あきざくら)も小春日和(こはるびより)も、冬が近づく秋の季節に、過ぎ去った春の気候や風景がよみがえってきたかのような、秋に春をいとおしむような、ある意味で懐古的な名称であるといえる。
山口百恵『秋桜 コスモス』の歌詞の内容に照らして考えれば、それはまるで、明日に結婚を控えた秋の日にしみじみと思いだされる、まだ母が若く娘が幼かった頃の懐かしく穏やかな時間を暗に表現しているかのよう。
娘が無邪気な子供でいられた穏やかな春の時間が、結婚を控えた秋のひとときに、母への感謝の気持ちや寂しさとともに鮮やかによみがえってくる。
長い春に比べればほんのわずかだけれど、それは母と娘の二人が積み重ねてきたかけがえのない人生が凝縮された時間。
ありがとうの言葉を かみしめながら
生きてみます 私なりに
こんな小春日和の 穏やかな日は
もう少し あなたの子供で
いさせてください<引用:『秋桜 コスモス』二番の歌詞より>
『秋桜 コスモス』歌詞の最後には、そんな母と娘の願いや祈りにも似た万感の思いが切々と歌い上げられているのである。
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