白虎隊 歌詞の意味 詩吟入り
戦雲暗く 陽は落ちて 弧城に月の 影悲し
1868年の戊辰戦争において、会津藩が組織した少年部隊・白虎隊(びゃっこたい)。絶望的な負け戦の中、武士の本分を明らかにした彼らの生き様は、現代まで多くの作品で描写されている。
白虎隊を題材とした楽曲もいくつかあるが、中でも古賀政男が作曲し藤山一郎が歌った1937年の『白虎隊』(詩吟入り)が有名(作詞:島田磬也)。歌い出しの歌詞は「戦雲暗く 陽は落ちて」。
このページでは、古賀政男が作曲した『白虎隊』について歌詞を引用しながら、その意味や歴史的背景を補足・解説していきたい。
写真:鶴ヶ城(若松城)出典:Gurunavi, Inc.
【YouTube】『白虎隊』 作曲:古賀政男 歌:島津亜矢
一番の歌詞の意味
島田磬也作詞による『白虎隊』一番の歌詞を次のとおり引用する。
戦雲暗く 陽は落ちて
弧城に月の 影悲し誰(た)が吹く笛か 識(し)らねども
今宵名残の 白虎隊
戦雲(せんうん)とは、戦いが始まりそうな緊張した気配。戦そのものを指すことも。戊辰戦争における主戦場の一つとなった福島県会津地方は、薩摩藩・土佐藩を中心とする明治新政府軍が攻め寄せていた。
弧城(こじょう)とは、新政府軍に包囲された会津勢が立て篭もった若松城のこと。鶴ヶ城(つるがじょう)、黒川城、会津若松城などとも呼ばれる。
二番の歌詞の意味
『白虎隊』二番の歌詞を次のとおり引用する。
紅顔可憐(こうがんかれん)の 少年が
死をもて守る この保寒(とりで)
滝沢村の 血の雨に
濡らす白刃(しらは)の 白虎隊
紅顔可憐(こうがんかれん)とは、文字の意味だけを見れば、元気でかわいらしい若者のたとえのようにも見えるが、「可憐」の意味合いが異なる。
語源となった漢詩を見ると、そんな若者もいずれは必ず老いる定めであり、時の流れが無常であることを示す文脈で使われているのが分かる。
此翁白頭眞可憐
伊昔紅顏美少年<引用:劉希夷「代悲白頭翁」より一部抜粋>
意味:この白髪の翁は、まことに憐れである。これでも昔は紅顔の美少年だったのだ。
ここでの「可憐(かれん)」は、「可憐な少女」のような表現ではなく、「あわれむべし」、つまり「気の毒である、あわれである」といった意味合いとなる。
『白虎隊』の歌詞における「紅顔可憐」は、若い白虎隊の哀れな運命と無関係ではないだろう。
滝沢村について
滝沢村とは、現在の会津若松市一箕町あたり。戊辰戦争(会津戦争)の際には、戸ノ口方面から若松城下にはいる街道の拠点として、会津勢の本陣が置かれた(いわゆる「滝沢本陣」)。
現在まで、旧滝沢本陣は当時の建物がそのまま残されており、国の重要文化財・史跡に指定されている。室内の一部では、当時の戦闘による弾痕や刀傷なども確認できる。
写真:旧滝沢本陣(出典:Wikipedia)
詩吟の意味
『白虎隊』で引用されている詩吟の歌詞は次のとおり。
原典は、明治時代の漢学者・佐原 盛純(さわら もりずみ/1835-1908)が明治17年(1884年)に記した漢詩「白虎隊」。
南 鶴ヶ城を望めば 砲煙あがる
痛哭(つうこく)涙を飲んで 且(か)つ彷徨(ほうこう)す
宗社(そうしゃ)亡びぬ 我事(わがこと)終る
十有九人(じゅうゆうくにん)
屠腹(とふく)して斃(たお)る
痛哭とは、ひどく嘆き悲しむこと。彷徨とは、あてもなくさまよい歩くこと。
宗社(そうしゃ)とは、宗廟(そうびょう)と社稷(しゃしょく)、転じて国家を意味する。ここでは旧幕府軍の会津藩のこと。
写真:飯盛山から望む鶴ヶ城(出典:Wikipedia)
十有九人(じゅうゆうくにん)とは、自刃した20名の白虎隊のうち落命した19人のこと(人数については異説あり)。屠腹(とふく)とは切腹のこと。
飯沼貞吉(貞雄)のみが一命を取り留め、その晩年、重い口を開き、白虎隊の悲劇を後世に伝えた。
三番の歌詞の意味
『白虎隊』三番の歌詞を次のとおり引用する。
飯盛山の 山頂に
秋吹く風は 寒けれど
忠烈今も 香(か)に残す
花も会津の 白虎隊
忠烈(ちゅうれつ)とは、きわめて忠義心の厚いこと。
飯盛山(いいもりやま)とは、白虎隊隊員らが自刃を決行した終焉の地。「白虎隊十九士の墓」には、年間200万人ともいわれる観光客が訪れる。山のふもとには土産屋が立ち並ぶ。
写真:飯盛山(福島県会津若松市)出典:Wikipedia
土産物の木刀は飯盛山が元祖
日本全国各地の観光地では、土産物としての木刀が土産物店で販売されており、修学旅行の児童・生徒らが買い求める定番の商品となっているが、この木刀のルーツは白虎隊と関連がある。
土産物としての木刀が初めて販売されたのは、白虎隊隊員らが自刃を決行した飯盛山の土産物店。白虎隊をモチーフにした「白虎刀」が大正時代に販売開始され、瞬く間に人気の商品となった。
写真:飯盛山の土産店で販売されている白虎刀(出典:TripAdvisor)
会津地方の山間部には、木刀の素材として適したホオノキ(朴の木)が多く生えており、材料の調達にも困らなかったようだ。
地元でのヒット商品となった木刀はその後、製造会社が東京や鎌倉、京都・奈良など各地の観光名所に売り込んだことで、日本全国の土産物の定番商品となっていったという。
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