朝 島崎藤村 歌詞の意味
朝はふたたびここにあり 朝はわれらと共にあり
「朝はふたたびここにあり」が歌いだしの『朝』は、明治34年(1901年)に刊行された島崎藤村の詩文集「落梅集」の詩に基づく歌曲。学校の音楽教科書にも掲載された。
同曲は、戦前の1936年から1941年まで放送されていたNHKラジオ番組「国民歌謡」内の楽曲(作曲:小田進吾)。繰り返し放送され人気の曲となった。
『朝』のヒットに続いて作曲されたのは、同じく島崎藤村の詩に曲をつけた『椰子の実(やしのみ)』。こちらも人気の曲となり、現在でも愛唱されている。
ちなみに、島崎藤村「落梅集」の詩を歌詞とする歌曲としては、『小諸なる古城のほとり』、『千曲川旅情の歌』が有名。
【YouTube】 島崎藤村『朝』/歌:高田彬生 コロムビア合唱団
歌詞
朝はふたたびここにあり
朝はわれらと共にあり
埋(うも)れよ眠り行けよ夢
隠れよさらば小夜嵐(さよあらし)
諸羽(もろは)うちふる鶏(くだかけ)は
咽喉(のんど)の笛を吹き鳴らし
きょうの命の戦闘(たたかい)の
よそおいせよと叫ぶかな
野に出(い)でよ野に出でよ
稲の穂は黄(き)にみのりたり
草鞋(わらじ)とく結(ゆ)え鎌も執(と)れ
風に嘶(いなな)く馬もやれ
小夜嵐(さよあらし)
小夜嵐(さよあらし)とは、夜に吹く強い風のこと。「小夜(さよ)」は夜の意味。先頭の「さ」は、語調を整えるための接頭語。
唱歌『冬景色 ふゆげしき』の「さ霧消ゆる」の「さ」も同じ接頭語。
鶏(くだかけ)
鶏(くだかけ)とは、ニワトリの古名・異名「くたかけ」のこと。
学研全訳古語辞典によれば、「くたかけ」とは漢字で「腐鶏」。意味としては、ニワトリを「バカ鶏」とののしる語だそうだ。朝早くからうるさく鳴くのに腹が立ったのだろうか。
「諸羽(もろは)うちふる鶏」とは、ニワトリが羽根をバタバタとさせる様子の意味。
草鞋とく結え
「草鞋(わらじ)とく結(ゆ)え」とは、「草鞋を早く結え」という意味。現代風に言えば、「靴ひもをさっさと結べ!」といった感じになるだろうか。
「とく」とは、古語「疾し(とし)」の連用形。武田信玄の風林火山の一節「疾如風(ときこと かぜのごとく)」の「とき」と同じ。
また、卒業ソング『仰げば尊し』の歌詞にある「思えばいととし」の「とし」とも同じ。
関連ページ
- 椰子の実(やしのみ)
- 島崎藤村作詞。名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ。
- 小諸なる古城のほとり
- 歌曲『朝』と同じく、島崎藤村の詩文集「落梅集」の詩に基づく
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