春宵一刻値千金
しゅんしょういっこく あたいせんきん
「春のうららの隅田川」でも歌われる中国の詩文
「春宵一刻値千金」(しゅんしょういっこく あたいせんきん)とは、春の夜は趣が深く、そのひと時は千金にもかえがたい価値がある、という意味のことわざ。中国の詩文に由来する。
「春のうららの隅田川」の歌いだしで有名な瀧 廉太郎の歌曲『花』では、この「春宵一刻値千金」を踏まえて、「げに一刻の花と散る」と春の美しさが歌われている。
写真:高遠城址公園の夜桜(出典:LINEトラベル/藤田 聡)
北宋代最高の詩人・蘇軾の詩文
ことわざ「春宵一刻値千金」は、中国の詩人・蘇軾(そしょく/1037-1101)が詠んだ次のような歌「春夜」(の一部)に由来している。
春宵一刻直千金 花有清香月有陰
(意味:春の夜の趣には千金の値打ちがある。花は清らかな香りを放ち、月はおぼろに霞んでいる。)
原詩では「直千金」となっているが、日本でのことわざとしては「値千金」の表記となっている。
蘇軾(そしょく)は、中国北宋代の政治家、詩人、書家。東坡居士(とうばこじ)と号したので、蘇東坡(そとうば)とも呼ばれる。
北宋代最高の詩人とされ、その詩は『蘇東坡全集』にまとめられている。
豚の角煮を考案した蘇軾
「春宵一刻値千金」を詠んだ蘇軾(そしょく)は、国政批判の罪で黄州(現在の湖北省黄州区)に数年間左遷されていた時期があった。
左遷先を東坡(とうば)と名付け、自らを東坡居士(とうばこじ)と名乗った。
東坡で厳しい生活を送る中、蘇軾は黄州の豚肉に目をつけ、皮付きの豚肉の醤油煮「紅焼肉(ホンシャオロウ)」を考案した。
写真:東坡肉(トンポーロウ/出典:新松戸の台湾料理屋「台葉(タイヨウ)」
これは後に「東坡肉(トンポーロウ/ドンポーロウ)」と呼ばれ、日本料理の豚の角煮(皮なし)の起源とも考えられている。
ちなみに、豚肉を使った沖縄料理のラフテーは、東坡肉と同様に皮つきのまま豚肉を調理し食される。
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