秋の日は釣瓶落とし 意味・理由は?
秋のことわざ/秋はなぜ日が暮れるのが速く感じる?
「秋の日は釣瓶落とし」(あきのひはつるべおとし)とは、井戸で水を汲むための桶「釣瓶(つるべ)」が滑車でするすると勢いよく落ちていくように、秋はいったん日が暮れだすとすぐに夕陽が沈んで暗くなってしまうという意味のことわざ。
この「秋の日は釣瓶落とし」では、日没の時刻が早まることよりも、日が沈みかけてから完全に暗くなるまでの時間が短くなる(速まる)ことに焦点が当てられているように思われる。
秋は日が暮れるスピードが本当に速いのだろうか?速く感じるのはなぜなのか?その理由について簡単にまとめてみた。
写真:石川県白山市・松任駅前の釣瓶(出典:mickのくもの巣日記)
秋は日没の時刻が早い
まず、秋は夏よりも日没の時刻が最大で2時間以上早くなる。夏の日没の時刻に慣れてしまうと、いつもよりも早い時間帯に日が暮れてしまうので、日暮れの「時刻」が早いという意味で、「秋の日は釣瓶落とし」が一つの意味を持つことになる。
秋は薄明が続く時間が短い
日没後もしばらくは空が暗くならず、ぼんやりと明るい状態が続く現象を「薄明(はくめい)」という。これは上空の大気が太陽光を散乱させることで生じる自然現象だ。
一年でこの薄明が継続する時間が最も長い月は6月で、秋頃(9月・10月)は6月と比べて30分近く薄明の時間が短くなる。
つまり、秋は日没から完全に暗くなるまでの時間が夏よりも短くなるため、薄暗くなってから急に真っ暗になるように感じ、その速さが「秋の日は釣瓶落とし」ということわざに表れているのだろう。
朝顔や つるべ取られて もらい水
余談だが、上の釣瓶(つるべ)の写真で岩に刻まれている俳句について若干解説しておきたい。
朝顔や つるべ取られて もらい水
加賀千代女
現代では「朝顔に つるべ取られて もらい水」と紹介されることもあるようだ。加賀千代女(かがの ちよじょ/1703-1775)は江戸中期の俳人。
歌の意味は、井戸で水を汲もうとしたら、朝顔のツタ(つる)が釣瓶に巻き付いており、ツタをちぎってしまうのは可哀想なので、隣の家に水をもらいにいったという内容。
ちなみに、秋の七草の朝顔(キキョウ)のように、古典文学では朝顔と書いてキキョウなどの花を表すことがあるが、この歌は江戸中期の俳句なので、現代のアサガオと同じ朝顔であると解釈してよいだろう。
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