へたっぴ 意味 由来「っぴ」「っぺ」

いなかっぺ・言い出しっぺの「っぺ」/へたっぴの「っぴ」など

福本伸行の人気漫画「カイジ」シリーズでは、大槻ハンチョウが「へたっぴ(下手っぴ)」という印象的なセリフを言うシーンがいくつかある。

あまり現実の日常会話では使う機会がない言葉なので、漫画などで目にすると逆に新鮮で印象に残ってしまうこの「へたっぴ」。

この言葉の意味は、文字通り「下手(へた)」または「下手クソ」などを表していることに疑問はないが、問題は末尾の「っぴ」が何を意味しているかだ。

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同様の言葉に、「田舎っぺ(いなかっぺ)」、「言い出しっぺ」などがあり、この場合も末尾の「っぺ」が何を意味しているのか、語源・由来は何なのか、疑問がわいてくる。

このページでは、これらのように末尾が「っぴ」または「っぺ」で終わる言葉について、その意味・語源・由来を簡単に探求してみたい。

「っぺ」の意味・由来

まずは、「田舎っぺ(いなかっぺ)」、「言い出しっぺ」などの末尾「っぺ」について考えてみよう。

これらの言葉は、それぞれ「田舎者(いなかもの)」、「言い出した人」のように、人の振る舞い・言動を意味しており、「っぺ」とはすなわち「人・者」を意味している言葉であると推測できる。

語源は田舎兵衛?

「っぺ」が「人・者」を意味するとして、その語源・由来は何だろうか?

これについては、「精選版 日本国語大辞典」(小学館)が「田舎兵衛」という語句を次のように解説している。

田舎兵衛(読み)いなかっぺえ

〘名〙 (「ぺえ」は、擬人名を作る接尾語。「いなかっぺい」とも) 田舎者をあざけっていう語。いなかっぺ。

「田舎兵衛」の読みが「いなかっぺえ」とされ、「ぺえ」が「擬人名を作る接尾語」としてはっきりと明記されている。

語源となった「兵衛(べえ/ひょうえ)」は、例えば戦国時代の武将で言えば、NHK大河ドラマの主人公にもなった豊臣秀吉の軍師・黒田官兵衛(かんべえ)や、同じく秀吉の参謀・竹中半兵衛(はんべえ)など、歴史上の人名の一部に用いられることが多い。

童謡『ごんべさんの赤ちゃん』の「ごんべ(権兵衛)」も、この「兵衛(べえ)」が末尾についた(抽象的な)人名として挙げられる。

やがて、「いなかっぺえ」または「いなかっぺ」の「っぺ」は、人を表す一般的な接尾語となり、「言い出しっぺ」のように他の語句とも結びついて定着していったと考えられる。

「っぴ」の意味・由来

それでは、「下手な事/下手な人」を意味する「へたっぴ(下手っぴ)」の末尾「っぴ」についてはどうだろうか?

「っぴ」の語源・由来については、辞書等の明確な資料を確認できなかったが、これはおそらく、人を表す「っぺ」の派生形であると推測される。

実際、地方によっては「へたっぴ」ではなく「へたっぺ」と発音して用いる地域もあり、「っぴ」が「っぺ」に由来する接尾語である可能性は高そうだ。

あやっぺ・まりっぺ

若い女の子の愛称として、「あやっぺ」、「まりっぺ」、「ゆりっぺ」などの例を見かけることがあるが、これらの「っぺ」も上述の「兵衛(べえ)」を語源とする人名の接尾語と考えられる。

ネガティブ(否定的)な意味合いはなく、パ行の丸く可愛らしい語感が末尾にくることで、4文字になって語呂が良くなるとともに、対象の女性の親しみやすさ・愛らしさ・愛嬌などを強調する意味合いが強く感じられる。

まとめ

「田舎っぺ(いなかっぺ)」、「言い出しっぺ」などの「っぺ」は、人名の末尾に用いられる「兵衛(べえ)」を語源としており、人・者を意味する接尾語と考えられる。

「へたっぴ(下手っぴ)」の末尾「っぴ」については、人を表す「っぺ」の派生形であると推測される。

「っぺ」は、「あやっぺ」「まりっぺ」などのように、若い女の子の愛称としても使われる。

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