ジョスランの子守歌 ゴダール

歌詞の意味・日本語訳・原曲のフランス語の歌詞

『ジョスランの子守歌 Berceuse de Jocelyn』(ベルスーズ・ドゥ・ジョスラン)は、19世紀フランスの作曲家ゴダールによるオペラ『ジョスラン Jocelyn』中のアリア(歌)。

オペラ『ジョスラン』が今日上演される機会はほとんどなく、『ジョスランの子守歌』だけが独立した楽曲として単独で演奏されるほか、安眠・リラックス系クラシック音楽CDの一曲としてコンピレーション・アルバムに収録されることがよくあるようだ。

日本では古くから唱歌として歌われており、『流浪の民』、『ローレライ』、『野ばらの名訳で知られる訳詞家の近藤 朔風(こんどう さくふう/1880-1915)による歌詞が現代まで伝えられている。

写真はフランスの世界遺産モン・サン=ミシェル修道院(Mont Saint-Michel)。フランス革命時に特権階級の聖職者は迫害され、モン・サン=ミシェル修道院は廃止された。1863年まで国の監獄として使用されていた。

【YouTube】"Berceuse" from Jocelyn - Summer Watson

訳詞:近藤 朔風

むごきさだめ 身に天降(あも)りて
汝(なれ)と眠る のろわれの夜(よ)
胸のうれい ゆめに忘れん
祈らばや ゆらぐ星のもと

夢のまきまきに あこがれよ み空へ
眠れいとし子よ 眠れ今は小夜中(さよなか)
あゝ夢ぞいのち マリアよ守りませ

愛のつばさに おおわれつ
わが来し方(こしかた) かえりみれば
流れたゆとう 波にも似たり
あわれいく日 祈りに泣きぬ

夢のまきまきに あこがれよ み空へ
眠れいとし子よ 眠れ今は小夜中
あゝ夢ぞいのち マリアよ守りませ

歌の内容は? キリスト教の過酷な運命とは?

近藤 朔風による『ジョスランの子守歌』の訳詞を見てみると、「むごきさだめ(惨き運命)」、「のろわれの夜(呪われの夜)」、「胸のうれい(憂い)」などと、冒頭から子守歌らしからぬ、ただならない雰囲気が漂っている。

「祈り」「マリア」といったキリスト教を連想させるキーワードも使われており、何かキリスト教に関連する過酷な運命の歴史が暗に示されているのではと感じるが、この辺の歴史的背景については、こちらのオペラ『ジョスラン Jocelyn』解説ページで若干補足しているので、ご興味のある方は是非とも参照されたい。

原曲:フランス語の歌詞・日本語訳

Berceuse de Jocelyn

Couchés dans cet asile
Où Dieu nous a conduits
Unis par le malheur
Durant les longues nuits

Nous reposons tous deux
Endormis sous leurs voiles
Ou prions aux regards
Des tremblantes étoiles !

神がお導きになった この安らぎの場所に隠れて
不幸ばかりの 永い夜を 二人で休もう
瞬く星が守ってくれる ベールの下で眠ろう

Oh ! Ne t'éveille pas encore
Pour qu'un bel ange de ton rêve
En déroulant son long fil d'or
Enfant, permette qu'il s'achève

あぁ、まだ起きないで
君の夢の中に現れる美しい天使が
長い金の糸を巻き取る間
御子よ、天使がそれを終えるまで

Dors ! dors ! Le jour à peine a lui !
Vierge sainte, veillez sur lui !

眠れ、眠れ、人生はほんのわずかのこと
マリアよ、人生を見守ってくれ

Sous l'aile du Seigneur
Loin du bruit de la foule
Et comme un flot sacré
Qui doucement s'écoule,

Nous avons vu les jours
Passer après les jours
Sans jamais nous lasser
D'implorer son secours !

神の安らぎのもと 雑踏の騒がしさから離れて
まるで聖なるしずくがゆっくりと流れるように
私たちは毎日を過ごした  助けを請い願うこともなく

<訳:大東文化大学准教授 山口謠司氏>

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