『波のピエロ』は、小学校の音楽教材として使われる合唱曲（斉唱）。NHK「みんなのうた」のような雰囲気も感じられるが、同番組で放送された楽曲ではない。

歌い出しは「ヤン　パン　パパン　ルラルラー」。擬音のような擬態のような不思議な響きで、小学生の時に歌ったことがある人なら、この歌い出しが強烈に記憶に残っていると思われる。

この歌い出しのフレーズは、漫画作品「ちいかわ」で、主人公の「ちいかわ」がよく口ずさむ歌の元ネタとのネット情報がある。詳細は後述する。

作曲は、定番の合唱曲『ひとつの朝』、『若い翼は』などで知られる平吉毅州（ひらよし たけくに/1936-1998）。

作詞は、平吉毅州とのコンビで『しおまねきのサンバ』を手がけた土肥武（どい たけし）。

表紙画像：ちいかわ　なんか小さくてかわいいやつ（１）

【YouTube】 波のピエロ

歌詞の意味・和訳（意訳）

歌い出しのフレーズが特徴的な『波のピエロ』だが、それ以外の歌詞はどのような内容なのだろうか？

作詞：平吉毅州による『波のピエロ』歌詞を次のとおり引用して、曲全体で表現されている題材について簡単に確認してみよう。

１．
ヤン　パン　パパン　ルラルラー
ヤンパン　パルラルラー

水に浮かぶ影　それはピエロのおどり
風にさそわれて　ほーら
きらめきながら

ヤン　パン　パパン　ルラルラー
ヤンパン　パルラルラー

夕やけの歌に　あわせて
いつまでも　ルラルラおどる

２．
ヤン　パン　パパン　ルラルラー
ヤンパン　パルラルラー

水にうつる影　それはピエロのわらい
さざなみにゆられ　ほーら
ただよいながら

ヤン　パン　パパン　ルラルラー
ヤンパン　パルラルラー

夕やみの歌に　おわれて
とけてゆき　ルラルラきえる

この歌詞を見ると、「水に浮かぶ影」、つまり水面に何らかの物体が映って、それが波に揺られてゆらゆら動いている様子が、まるで「ピエロのおどり」のようであると表現されている。

「ルラルラおどる」という歌詞から、この「ルラルラ」が波にゆられて踊っているように見える様子を表す擬態語であることが分かる。

ヤン パン パパン とは？

歌詞冒頭の「ヤン パン パパン」の部分については、歌詞全体を見てもこれ以上情報が得られないので、これが何なのかを推測していく必要がある。

筆者の私見では、年末のクリスマス・シーズンになると流れる楽曲『リトル・ドラマー・ボーイ』の「ラパパンパン」という擬音がヒントになるのではないかと想像している。

「ラパパンパン」とは太鼓（ドラム）を叩く音を表現した擬音であり、『リトル・ドラマー・ボーイ』以外にも海外で一般的に使われる。「ランパンパン」とも表現される。

太鼓の擬音「ラパパンパン」は、リズム良く太鼓を叩く表現であり、これが『波のピエロ』で用いられているとしたら、それはリズム良くピエロが踊っている様子を表しているように思われる。

ただその際、「ラパパンパン」をそのまま用いてしまうのは安易すぎるし、その後に続く「ルラルラ」の部分とラ行の音が重複してしまうので、「ラン」を「ヤン」に変更したのではないだろうか。

ちいかわ元ネタ

上述のとおり、「ヤン　パン　パパン　ルラルラー」の部分は、漫画作品「ちいかわ」で主人公の「ちいかわ」がよく口ずさむ歌の元ネタになっている可能性がある。

ちいかわは様々な場面で異なる表現で歌っているが、一例として次のとおり「ちいかわ」の１コマを引用して確認してみよう。

画像：ナガノ (イラストレーター)による漫画作品「ちいかわ」より

この１コマでは「ヤャ～…ン　パパ…　ルパルパ♪」とカタカナ表記されているのが分かる。

「ルパルパ」の部分は、「ルーララ」や「ヒュパヒュパ」など、場面によって様々な表現が使われる。

歌詞をわざと変えてる？

「ヤン　パン　パパン　ルラルラー」と「ヤャ～…ン　パパ…　ルパルパ♪」では、似ているようで歌詞が微妙に異なっている。

これは、『波のピエロ』に歌詞を完全一致させてしまうと、漫画での商用利用として著作権料の支払いが必要になってしまうので、完全一致しないようにうまく歌詞をぼかしているのではないかと推測される。

「ちいかわ」では著作権が存続している楽曲をガッツリと使用している回もいくつかあるが、当然楽曲使用には追加コストがかかるので、なるべく楽曲使用にあたらないように工夫した結果「ヤャ～…ン　パパ…　ルパルパ♪」となった可能性がありそうだ。

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