聖母たちのララバイ 歌詞と解説 原曲・元ネタ

アメリカのタイムスリップ映画サントラを元に作曲されたヒット曲

『聖母(マドンナ)たちのララバイ』は、1982年5月にリリースされた岩崎宏美のシングル。作詞:山川啓介、作曲:木森敏之(共作扱い/詳細は後述)。

「火曜サスペンス劇場」初代エンディングテーマとして1コーラス分が作曲され、その後の反響を受けてフルコーラスが製作された。

発売2週目でオリコンシングルチャート1位を獲得。累計売上は130万枚を超えるミリオンセラーとなり、同年11月には第13回日本歌謡大賞を受賞した。

岩崎宏美ベスト盤

ジャケット写真:岩崎宏美ベスト盤

【YouTube】 聖母たちのララバイ 岩崎宏美

歌詞

さあ 眠りなさい
疲れきった体を投げだして
青いそのまぶたを
唇でそっと ふさぎましょう

ああ できるのなら
生まれ変わり あなたの母になって
私のいのちさえ
差しだして あなたを守りたいのです

この都会(まち)は 戦場だから
男はみんな 傷を負った戦士
どうぞ 心の痛みをぬぐって
小さな子供の昔に帰って
熱い胸に 甘えて

そう私にだけ
見せてくれた あなたのその涙
あの日から決めたの
その夢を支えて 生きてゆこうと

恋ならば いつかは消える
けれども もっと深い愛があるの
ある日あなたが 背中を向けても
いつも私は あなたを遠くで
見つめている 聖母(マドンナ)

今は 心の痛みをぬぐって
小さな子供の昔に帰って
熱い胸に 甘えて

映画主題歌と似てる?

『聖母(マドンナ)たちのララバイ』曲前半のメロディは、アメリカ映画「ファイナル・カウントダウン」サントラとの類似性が指摘されることがある。

映画「ファイナル・カウントダウン」(The Final Countdown)とは、1980年に公開されたアメリカ映画。原子力攻撃空母ニミッツが太平洋戦争中にタイムスリップする架空戦記(歴史改変SF)。

映画 ファイナル・カウントダウン The Final Countdown

イギリスの作曲家ジョン・スコット(John Scott)が音楽(サントラ)を手がけた。盗作発覚後、『聖母たちのララバイ』は木森敏之とジョン・スコットとの共作扱いに訂正されている。

『聖母たちのララバイ』の元ネタとされるサントラ『ローレル&オウエンス(Laurel And Owens)』について、どれぐらい似ているのか、YouTube動画で確認してみよう。

【YouTube】Laurent and Owens

曲の前半部分が、ほぼそのまま『聖母たちのララバイ』のそれと共通している。ここまで大胆な引用もなかなか珍しい。

もともと『聖母たちのララバイ』は、「火曜サスペンス劇場」エンディングに1コーラスだけ流れる限定的な作品だったので、おそらく作曲者の予想では、こんな短い楽曲にそれほど注目は集まらないだろう、だから大胆な引用が問題化することもないだろう、と甘く見ていた部分があったのかもしれない。

歌詞にも共通点が?

元ネタとされる映画「ファイナル・カウントダウン」との共通点は、メロディだけではなく、歌詞の一部にも見られる。該当部分を次のとおり引用する。

この都会(まち)は 戦場だから
男はみんな 傷を負った戦士

<引用:山川啓介『聖母たちのララバイ』歌詞より>

「戦場」「戦士」といったキーワードが、タイムスリップ戦争映画である「ファイナル・カウントダウン」と偶然にも内容的に近接しているのが興味深い。

かわぐちかいじ「ジパング」元ネタ?

余談だが、映画「ファイナル・カウントダウン」のストーリーは、講談社の漫画雑誌「モーニング」で2000年から2009年まで連載されていた漫画「ジパング」にも影響を与えている。

漫画「ジパング」では、海上自衛隊のイージス艦が太平洋戦争中にタイムスリップし、歴史の波に飲み込まれていく。

かわぐちかいじ「ジパング」コミックス第1巻

写真:かわぐちかいじ「ジパング」コミックス第1巻

「ジパング」も「ファイナル・カウントダウン」も、どちらも現代から太平洋戦争中へのタイムスリップであり、海上の嵐(あらし)が引き金になるという状況も似ていることから、「ファイナル・カウントダウン」は「ジパング」着想に大きな影響を与えたと考えられる。

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