サンタ・ルチア 歌詞の意味 場所はどこ?

船頭が観光客を呼び込むためのコマーシャルソングだった?!

『サンタ・ルチア』(Santa Lucia)は、ナポリ湾のサンタ・ルチア地区(Borgo Santa Lucia)の船頭らによって歌われた伝統的なナポリ民謡・カンツォーネ。

日本では、同じくナポリ湾のソレントを歌った『帰れソレントへ』と同様に、中学校の音楽教科書に日本語の訳詞がよく掲載される。

サンタ・ルチア地区とナポリ湾

写真:サンタ・ルチア地区とナポリ湾(出典:Google Map)

サンタ・ルチア地区の地図 ナポリ湾

地図:ナポリ湾のサンタ・ルチア地区(赤い矢印部分)

歌詞の内容は、ナポリ湾のボルゴ・サンタ・ルチア地区で観光客相手に商売をしていた小舟の船頭が、自分の船に乗って夕涼みするよう通行人に誘いかけるコマーシャルソングとなっている。

ちなみに、イタリア歌曲『フニクリ・フニクラ』は登山電車のコマーシャルソング。

サンタ・ルチア通り

写真:サンタ・ルチア地区のサンタ・ルチア通り(出典:Google Map)

このページでは、まず原曲(イタリア語版)の歌詞の意味・和訳を掲載し、次に、音楽教科書に掲載される日本語の歌詞を引用して、その内容を簡単に比較してみたい。

なお、イタリア語の歌詞は、1849年にイタリアの音楽家テオドロ・コットラウ(Teodoro Cottrau/1827–1879)によってナポリ語から翻訳されたものが定着している。

【YouTube】サンタルチア Santa Lucia

原曲(イタリア語)歌詞の意味

1.
Sul mare luccica l’astro d’argento.
Placida è l’onda, prospero è il vento.

Venite all’agile barchetta mia,
Santa Lucia! Santa Lucia!

<注:実際にはそれぞれ2回繰り返して歌う>

輝く海 銀色の星空
穏やかな波 そよぐ風
お乗りください
軽やかな私の小舟に
サンタ・ルチア!
サンタ・ルチア!

2.
Con questo zeffiro, così soave,
O, com’è bello star’ sulla nave!

Su passeggeri, venite via!
Santa Lucia! Santa Lucia!

優しいそよ風とともに
美しい景色が 船上に
お通りの方 お乗りください!
サンタ・ルチア!
サンタ・ルチア!

3.
In fra le tende, bandir la cena
In una sera così serena,

Chi non dimanda, chi non desia.
Santa Lucia! Santa Lucia!

テントの中に
夕食は取っておいて
こんな穏やかな晩に
誰が望まないことがあろうか
サンタ・ルチア!
サンタ・ルチア!

4.
Mare sì placida, vento sì caro,
Scordar fa i triboli al marinaro,

E va gridando con allegria,
Santa Lucia! Santa Lucia!

穏やかな海 心地よい風
船乗りの悩みも消え去る
陽気に叫びながら
サンタ・ルチア!
サンタ・ルチア!

5.
O dolce Napoli, o suol beato,
Ove sorridere volle il creato!

Tu sei l’impero dell’armonia!
Santa Lucia! Santa Lucia!

美しいナポリ 豊かな土地
笑顔あふれる 主の創造物
神の王国 調和の国
サンタ・ルチア!
サンタ・ルチア!

6.
Or che tardate? Bella è la sera.
Spira un’auretta fresca e leggiera.
Venite all’agile barchetta mia,
Santa Lucia! Santa Lucia!

何をためらう?美しい夕暮れに
そよ風は新鮮で軽やか
お乗りください
軽やかな私の小舟に
サンタ・ルチア!
サンタ・ルチア!

日本語の訳詞

『サンタ・ルチア』の日本語歌詞(訳詞)は主に二つあるが、近年の音楽教科書によく掲載される小松清による訳詞を次のとおり引用する。

1.
そらにしろき つきのひかり
なみをふく そよかぜよ
そらにしろき つきのひかり
なみをふく そよかぜよ
かなたしまへ ともよゆかん
サンタルチア サンタルチア

2.
しろがねの なみにゆられ
ふねはかろく うみをゆく
しろがねの なみにゆられ
ふねはかろく うみをゆく
かなたしまへ こよいまた
サンタルチア サンタルチア

3.
ともよいざ ふねにのりて
なみをこえ とくゆかん
ともよいざ ふねにのりて
なみをこえ とくゆかん
かなたしまへ ともよいざ
サンタルチア サンタルチア

小松清による日本語の訳詞では、原曲と同じく夜の海が舞台となっているが、向こうの島へ友達と船で出かけようという、原曲とは異なる内容のストーリーが展開されている。

3番の歌詞にある「とくゆかん」の「とく」は「疾く」、ここでは「速く」という意味。卒業ソング『仰げば尊し』の「思えばいととし この年月」の「とし」も同じ。

もう一つの訳詞

現代の音楽教科書には掲載されないが、参考までに、堀内敬三の訳詞による『サンタ・ルチア』の日本語歌詞を次のとおり引用しておきたい。

1.
月は高く 海に照り
風も絶え 波もなし
月は高く 海に照り
風も絶え 波もなし

来よや友よ 船は待てり
サンタ ルチア
サンタ ルチア
来よや友よ 船は待てり
サンタ ルチア
サンタ ルチア

2.
ほのかなる 潮(しお)の香(か)に
流るるは 笛の音(ね)か
ほのかなる 潮の香に
流るるは 笛の音か

晴れし空に 月は冴(さ)えぬ
サンタ ルチア
サンタ ルチア
晴れし空に 月は冴えぬ
サンタ ルチア
サンタ ルチア

3.
愛(め)ぐしナポリ 夢の国
憂いなく 悩みなし
愛ぐしナポリ 夢の国
憂いなく 悩みなし

水夫(かこ)の歌の 遠くひびく
サンタ ルチア
サンタ ルチア
水夫の歌の 遠くひびく
サンタ ルチア
サンタ ルチア

4.
いざや出(い)でん 波の上
月もよし 風もよし
いざや出でん 波の上
月もよし 風もよし

来よや友よ 船は待てり
サンタ ルチア
サンタ ルチア
来よや友よ 船は待てり
サンタ ルチア
サンタ ルチア

堀内敬三は明治時代生まれの作詞家なので、訳詞の表現も若干古めかしい印象を受ける。だが、その古めかしい感じが逆にいい味を出しているようにも感じられる。

サンタ・ルチアって誰?

サンタ・ルチア(Santa Lucia/Saint Lucy/283-304)は、聖ルチアの名で知られるキリスト教の殉教者・聖人。

「ルチア(Lucia)」とは、ラテン語で「光」を意味する「Lux(ルクス)」または「Lucid(ルシード)」から派生した名前。

サンタ・ルチア 肖像画

イタリアのシチリア島南東部に位置する都市シラクサ(シラクーサ/シラカス/シラクス/Syracuse)で生まれ育ったことから、「シラクサのルチア」とも呼ばれる。

シラクサ(下写真)は、有名な数学者であるアルキメデスが生まれ育った町であり、太宰治の短編小説「走れメロス」の舞台ともなっている。

ルチアはキリスト教の熱心な信者だったが、ローマ帝国の皇帝ディオクレティアヌスによる迫害政策により、彼女は厳しい拷問を受け、棄教か死かの選択を迫られた。

しかし、彼女は最後まで決してキリスト教への信心を棄てることはなく、様々な拷問を受けたあげく、短剣で殺されてしまったという。

この拷問の中で、彼女は目をくりぬかれたと伝えられている。このことから、彼女が描かれている絵画には、お盆の上に目玉が二つ並んで置かれているもの等、目を描写した作品が多く見られる。

関連ページ

フニクリ・フニクラ
行こう 行こう 火の山へ!鬼のパンツは いいパンツ?
帰れソレントへ
中学校の音楽教科書に掲載される有名なイタリア歌曲
オーソレミーオ(私の太陽)
1898年に作曲されたカンツォーネ・ナポレターナ(ナポリ歌曲)。ハバネラのリズムが特徴的。
タイム・トゥ・セイ・グッバイ Time To Say Goodbye
盲目のテノール歌手ボチェッリとサラ・ブライトマンのデュエット曲
有名なイタリア民謡・童謡・歌曲
『オーソレミーオ』、『帰れソレントへ』、『フニクリ・フニクラ』など、日本でも有名なイタリア民謡・童謡・カンツォーネ