ローレライ 歌詞の意味・和訳

ドイツ・ライン川の岩山「ローレライ」に伝わる妖精の歌声

『ローレライ(Die Lorelei)』は、ドイツの作曲家フリードリヒ・ジルヒャー(Friedrich Silcher1789-1860)による1838年作曲のドイツ歌曲

歌詞は、ドイツの著名な詩人ハインリッヒ・ハイネによる詩集『歌の本』収録の詩が用いられた。

日本では、明治42年の『女声唱歌』に掲載された近藤朔風(こんどう さくふう)による訳詞が広く知られている。

ライン川にそびえる岩山 ローレライ

写真:ライン川にそびえる岩山ローレライ

ローレライ(Loreley)は、ドイツ・ライン川流域の町ザンクト・ゴアルスハウゼン近くにある、水面から130mほど突き出た岩山(上写真)。

ライン川下りでも有名で、周辺にはフドウ畑や古城が点在し、ローレライの岩の上に登ることもできる。

ローレライ伝説とは?

ローレライの岩のあたりは、川幅が少し狭く流れも急になるため、昔から遭難する船が多かったという。

ローレライには、昔からいくつかの妖精の伝説が残されている。内容には多少の違いがあるようだが、ローレライとは、不実な恋人に絶望してライン川に身を投げた乙女で、水の精となった彼女の声は漁師を誘惑し、岩山を通りかかった舟を次々と遭難させていったという。

ドイツ歌曲『ローレライ』の歌詞では、このローレライ伝説が描写されている。

【YouTube】ローレライ Die Lorelei ドイツ語 原曲

原曲の歌詞(ドイツ語) 意味・和訳

1.
Ich weiß nicht, was soll es bedeuten,
Daß ich so traurig bin;
Ein Mährchen aus alten Zeiten,
Das kommt mir nicht aus dem Sinn.

私には分からない
どうしてこんなに悲しいのか
遠い昔の物語が
心から離れない

Die Luft ist kühl und es dunkelt,
Und ruhig fließt der Rhein;
Der Gipfel des Berges funkelt
Im Abendsonnenschein.

風は冷たく 辺りは暗い
静かに流れるライン川
山の頂は夕日に輝く

2.
Die schönste Jungfrau sitzet
Dort oben wunderbar
Ihr gold’nes Geschmeide blitzet,
Sie kämmt ihr gold’nes Haar.

美しい乙女が座っている
金の飾りは輝き
金色の髪を梳いている

Sie kämmt es mit gold’nem Kamme,
Und singt ein Lied dabei;
Das hat eine wundersame,
Gewaltige Melodei.

金色の櫛で髪を梳かし
乙女は歌を口ずさむ
その歌は不思議で
力強いメロディ

3.
Den Schiffer im kleinen Schiffe
Ergreift es mit wildem Weh;
Er schaut nicht die Felsenriffe,
Er schaut nur hinauf in die Höh’.

小舟に乗った舟人は
その歌に心を奪われて
岩礁は目に入らず
上を仰ぎみるばかり

Ich glaube, die Wellen verschlingen
Am Ende Schiffer und Kahn;
Und das hat mit ihrem Singen
Die Lore-Ley gethan.

舟人は波に飲まれるだろう
彼女の歌声によって
それはローレライの仕業

日本語の歌詞・訳詩

日本語の歌詞で歌う『ローレライ』としては、明治時代に活躍した訳詞家・近藤 朔風(こんどう さくふう/1880-1915)による訳詞が知られている。

【YouTube】ローレライ 日本語版

明治時代に訳詞された歌詞なので、現代から見ると若干意味の分かりにくい難解な表現も見られる。

近藤 朔風の訳詞による『ローレライ』の日本語歌詞を次のとおり引用するとともに、その歌詞の意味を簡単に補足してみたい。

一.
なじかは知らねど 心わびて
昔の伝説(つたえ)は そぞろ身にしむ
さびしく暮れゆく ラインのながれ
入日(いりひ)に山々 あかく栄(は)ゆる

二.
美(うるわ)し少女(おとめ)の 巖頭(いわお)に立ちて
黄金(こがね)の櫛(くし)とり 髪のみだれを
梳(す)きつつ口吟(くちずさ)ぶ 歌の声の
神怪(くすし)き魔力(ちから)に
魂(たま)もまよう

三.
こぎゆく舟びと 歌に憧れ
岩根(いわね)も見為(みや)らず 仰げばやがて
浪間(なみま)に沈むる ひとも舟も
神怪(くすし)き魔歌(まがうた)
謡(うた)うローレライ

訳詞の意味

なじかは知らねど

なぜかは分からないが

心わびて

心細くなって、さびしくなって

そぞろ

わけもなく、なんとなく、なんだか、なぜか

身にしむ

身に深くしみるように感じる、しみじみと身に味わう、痛切に感じる

栄(は)ゆる

いっそう鮮やかに見える、引き立って見える。映ゆる。

巖頭(いわお)

岩の上、岩の突端

神怪(くすし)き

神秘的である、神妙である。「くすし(奇し)」の連体形「くすしき」。

岩根(いわね)

どっしりと安定した大きな岩、ここでは川の水面に突き出た岩礁(がんしょう)。

見為(みや)らず

その方向を見ることなく。見遣らず。

仰げば

上を向けば、上方を見れば

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