思い出(久しき昔)Long Long Ago
あの歌を歌ってくれないか 君が歌っていたあの歌を
『Long Long Ago』(ロング・ロング・アゴー)は、イギリスの古い歌曲。邦題は『思い出』、『久しき昔』など。
1833年にイギリスの音楽家トーマス・ヘインズ・ベイリー(Thomas Haynes Bayly/1797-1839)によって作曲された。
このページでは、原曲の英語の歌詞を和訳した上で、日本の訳詞や替え歌についていくつか引用して、その内容を簡単に比較してみたい。
写真:ロンドンの王立公園ハイドパーク Hyde Park
【YouTube】Long Long Ago - Jo Stafford & Gordon Macrae
原曲の歌詞(歌詞)と和訳(意訳)
1.
Tell me the tales
that to me were so dear,
Long long ago, long long ago
Sing me the songs
I delighted to hear,
Long long ago, long ago
懐かしいあの話をしてくれないか
とおい とおい 昔の
喜んで聞いていたあの歌を歌ってくれないか
とおい とおい 昔の
Now you are come,
all my grief is removed
Let me forget that
so long you have rov'd;
Let me believe that
you love as you lov'd
Long long ago, long ago
君に会えば 全ての悲しみは消え去る
君の移り気は忘れよう
昔の君を信じてみたいんだ
とおい とおい 昔の
2.
Do you remember
the path where we met?
Long long ago, long long ago
Ah, yes, you told me
you ne'er would forget
Long long ago, long ago
僕等が会った小道を覚えているかい?
とおい とおい 昔に
そうさ 君は絶対に忘れないと言っていた
とおい とおい 昔に
Then to all others
my smile you preferr'd
Love, when you spoke,
gave a charm to each word;
Still my heart treasures
the praises I heard,
Long long ago, long ago
誰よりも僕の笑顔を
好きでいてくれた君
愛は全ての言葉を魅力的に感じさせた
君の言葉は今も大切に心に留まる
とおい とおい 昔に
3.
Though by your kindness
my fond hopes were rais'd
Long long ago, long long ago
You by more eloquent
lips have been prais'd
Long long ago, long ago
君の優しさが僕の期待を募らせ
とおい とおい 昔の
君への褒め言葉は饒舌になる
とおい とおい 昔の
But by long absence
your truth has been tried
Still to your accents
I listen with pride;
Blest as I was
when I sat by your side
Long long ago, long ago.
長い留守の間 君は誠実でいられるか
君の話し方を誇らしげに聞いていた
僕はとても幸せだった
君の隣で座っているときが
とおい とおい 昔の
日本語歌詞『思い出』
『Long Long Ago』の日本語歌詞としては、1947年(昭和22年)に音楽教科書「六年生の音楽」で発表された『思い出』が最も有名と思われる。
作詞者は、『追憶(星影やさしく またたくみ空)』の作詞で知られる古関吉雄(こせきよしお)。
古関吉雄『思い出』の歌詞を次のとおり引用し、原曲の英語の歌詞と比較しながら簡単にその内容を確認してみよう。
1.
かき(垣)に赤い花さく
いつかのあの家
ゆめに帰るその庭
はるかなむかし鳥のうた木々めぐり
そよかぜに花ゆらぐなつかしい思い出よ
はるかなむかし2.
白い雲うかんでた
いつかのあの丘
かけおりた草のみち
はるかなむかしあの日の歌うたえば
思い出す青い空なつかしいあの丘よ
はるかなむかし
原曲の内容とは異なり、この日本語歌詞では、家や庭、草木や花、空や丘、草の道など、遠い昔に目にした懐かしい自然描写が中心となっている。
ちなみに、歌い出しの「かき(垣)に赤い花さく」の部分については、「柿に赤い花咲く」と勘違いされることがあったようだ。
柿の花の開花時期は初夏の5月~6月頃。白や黄色の小さい花が咲く。
歌詞改訂版
古関吉雄『思い出』の歌詞は、1952年(昭和27年)頃から部分的に改訂された。改訂後の歌詞を次のとおり引用する。
一、
かきにあかいはなさく
いつかのあのいえ
ゆめにかえるそのにわ
はるかなむかしとりはうたいさえずり
そよぐかぜにはなちるむねにひめるおもいで
はるかなむかし二、
しろいくものうかんだ
いつかのあのいえ
くさのひかるそのみち
はるかなむかしいまもうたうあのうた
目にもうかぶあおぞらひとりおもいわすれぬ
はるかなむかし
歌詞が改訂されただけでなく、例えば改訂前の「鳥のうた木々めぐり そよかぜに花ゆらぐ」の所では、「とりはうたいさえずり そよぐかぜにはなちる」となって、音節の切れ目が自然になり、小学生にもより歌いやすくなっている。
訳詞『久しき昔』
1907年(明治40年)には、『野ばら』、『ローレライ』、『菩提樹』などの訳詞で知られる近藤朔風が、唱歌『久しき昔』として『Long Long Ago』の訳詞を行っている。
近藤朔風 『久しき昔』の歌詞を次のとおり引用し、原曲の英語の歌詞と比較しながら簡単にその内容を確認してみよう。
一
語れめでし真心 久しき昔の
歌えゆかし調べを 過ぎし昔のなれ帰りぬ ああ嬉し
永き別れ ああ夢かめずる思い変わらず 久しき今も
二
逢いし小道忘れじ 久しき昔の
げにもかたき誓いよ 過ぎし昔のながえまい 人にほめ
なが語る 愛に酔うやさし言葉のこれり 久しき今も
三
いよよ燃ゆる情(こころ)や 久しき昔の
語る面はゆかしや すぎし昔のながく汝(なれ)と別れて
いよよ知りぬ 真心ともにあらば楽しや 久しき今も
明治時代に作詞された歌詞なので、難解で意味が分かりにくい部分もあるが、原曲の英語の歌詞にある程度忠実な内容で、原曲を尊重する姿勢が感じられる。
よく訪ねてくれたね♪
『Long Long Ago』の替え歌としては、「よく訪ねてくれたね♪」の歌い出しで知られる伊藤武雄『思い出』が有名。小学校の音楽の授業で歌ったという情報もネットで確認できたが、作曲の経緯や発表時期等の詳細は不明。
伊藤武雄の作詞による替え歌『思い出』の歌詞を次のとおり引用し、その内容を簡単に確認してみよう。
1.
よく訪ねてくれたね
よくまあ ねえきみ
よく訪ねてくれたね
さあさあ かけたまえきょうまでの出来事を
みんな話そうお互いによく訪ねてくれたね
さあさあ かけたまえ2.
あの頃はお互いに
まだまだ幼くて
ずいぶんけんかもやったよね
ほんとに懐かしいあの角(かど)のお菓子屋の
マキノ君(娘さん)はどうしたろあの頃はお互いに
ずいぶんあばれたね3.
よくここを忘れずに
よくまあ ねえきみ
よく訪ねてくれたね
ぼくはうれしいよこの次はきみの家
ぼくがきっと訪ねるよそうだ次の日曜に
ではさようなら
目の前の人物に語りかけているような口語的な文体で、NHK「みんなのうた」でそのまま放送されてもおかしくなさそうな親しみやすさとインパクトがある。
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