ゴンドラの唄
いのち短し 恋せよ少女

日本の歌謡曲/朱き唇 褪せぬ間に 明日の月日の ないものを

「いのち短し(命短し) 恋せよ乙女」の歌い出しが印象的な歌謡曲『ゴンドラの唄』は、劇団・芸術座により1915年(大正4年)に公演が行われた『その前夜』における劇中歌として作曲された。

日本映画の巨匠・黒澤明(くろさわ あきら/1910-1998)監督による1952年の作品「生きる」では、雪の降る夜ブランコをこぎながら、主人公が『ゴンドラの唄』を口ずさむシーンが登場する。

作曲は『シャボン玉』の中山 晋平

作曲者は、『シャボン玉』、『証城寺の狸囃子』、『背くらべ』など、今日でも愛唱される数多くの童謡・唱歌のメロディを生み出した中山 晋平(なかやま しんぺい/1887-1952)。

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作詞者は、歌人・劇作家の吉井 勇(1886-1960)。石川啄木らと共に雑誌「スバル」の編集にあたり、坪内逍遥に推され戯曲の脚本家としてキャリアを重ねた。

なぜヴェネツィアのゴンドラ?

『ゴンドラの唄』の歌詞だけを見ると、タイトルにあるキーワード「ゴンドラ」との関連性が即座には明らかではなく、なぜこの曲が『ゴンドラの唄』と名付けられたのか疑問に思う方も少なくないだろう。

この疑問を解決するには、この曲を生んだ劇団・芸術座の公演『その前夜』の内容に軽く触れる必要がある。

『その前夜』の原作は、ロシアの小説家・ツルゲーネフによる同名の戯曲。この中で、主人公の女性・エレーナは、恋人とヨーロッパへの旅路から戻る途中、イタリアのヴェネツィアで船を待っている場面で、ゴンドラの船頭が集ってざわめくシーンが登場する。

イタリアのヴェネツィアにおける船といえば、古くから「ゴンドラ gondola」と呼ばれる手漕ぎボートが用いられてきた。原作では、ここで曲が歌われることはないのだが、劇団・芸術座による日本独自の演出により、ヴェネツィアの船待ちシーンで『ゴンドラの唄』が劇中歌として追加されることとなった。

歌詞の内容のルーツは?

ヴェネツィアのゴンドラを待つ場面で歌われる曲ということで、『ゴンドラの唄』の歌詞についても、やはりゴンドラに関係する内容が意図された。

作詞にあたって参考にされたのが、アンデルセンの長編小説『即興詩人』(訳:森鴎外)。その中で、ヴェネツィアへ行く船の水夫が歌っていた舟歌の内容が、『ゴンドラの唄』の歌詞に大きく反映されているという。なお一説には、かつてヴェネツィアで流行していた歌がルーツとする説明もあるようだ。

日本の民謡・童謡・唱歌 歌詞と視聴

【試聴】『ゴンドラの唄』東京混声合唱団

【試聴】ゴンドラの唄 森昌子

歌詞: 『ゴンドラの唄』

いのち短し 恋せよ少女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日の ないものを

いのち短し 恋せよ少女
いざ手をとりて 彼の舟に
いざ燃ゆる頬を 君が頬に
ここには誰れも 来ぬものを

いのち短し 恋せよ少女
波に漂う 舟の様に
君が柔手を 我が肩に
ここには人目も 無いものを

いのち短し 恋せよ少女
黒髪の色 褪せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを