ハート・オブ・オーク Heart of Oak

オークの堅い心材の如き 屈強で勇敢なイギリス海軍の水兵たち

『ハート・オブ・オーク Heart of Oak』は、イギリス海軍(ロイヤル・ネイビー)の公式行進曲・軍歌

元々は、オペラ作品の一曲として1759年に作曲された楽曲で、作詞はイギリスの俳優・劇作家デイヴィッド・ギャリック(David Garrick)、作曲はオルガン奏者ウィリアム・ボイス(William Boyce)。

イギリス海軍のネルソン提督が指揮した旗艦ヴィクトリー

写真:トラファルガーの海戦(1805年)でイギリス海軍のネルソン提督が指揮した旗艦ヴィクトリー(HMS Victory)出典:Wikipedia。

曲名の「オーク Oak」とは、かつてイギリス海軍で木造船の建造に使われていた落葉樹のヨーロッパナラ(イングリッシュ・オーク)のこと。

木の表面に近い辺材に比べ、中心部分に近い心材(heartwood/ハートウッド)は色が濃く堅い。オークの堅い心材を意味する「ハート・オブ・オーク Heart of Oak」は、屈強で勇敢な水兵・海兵を表す慣用句として用いられている。

18世紀に作曲されたイギリス愛国歌『ルール・ブリタニア Rule, Britannia!』でも、オークの木に関する歌詞が用いられている。

【YouTube】 Royal Navy - Heart of Oak

【YouTube】Heart of Oak - HM Royal Marines

歌詞の意味・和訳(1759年原詩)

Come cheer up, my lads!
'tis to glory we steer,
To add something more
to this wonderful year;
To honour we call you,
not press you like slaves,
For who are so free
as the sons of the waves?

さあ奮い立て お前たち
これは栄光への舵取り
華々しい戦果を挙げたこの年に
さらに花を添えるのだ
お前たちを称えよう
隷従を強いることはない
自由な海の申し子たちよ

Chorus:
Heart of oak are our ships,
heart of oak are our men;
We always are ready,
steady, boys, steady!
We'll fight and we'll conquer
again and again.

我らの船は堅固なり
我らの仲間は精強なり
備えは常に万全
慌てるな 仲間たち 用心しろ
我らは戦い そして打ち勝つ
幾度も幾度も

歌詞の補足

「wonderful year」(ワンダフル・イヤー)とは、1756年からヨーロッパで始まった七年戦争において、イギリス侵攻計画を実行したフランスをイギリス海軍が何度も撃破した大勝利の1759年を指している。

『ハート・オブ・オーク Heart of Oak』はこの1759年に作曲された楽曲である。

ロイヤル・オーク伝説

イギリスとオークの関係を示す出来事として、チャールズ2世を救ったロイヤル・オークの伝説について簡単にご紹介したい。

1642年に始まった清教徒革命により、国王チャールズ1世は処刑された。亡命していた後のチャールズ2世はスコットランドに上陸したが、クロムウェル率いる議会派軍に大敗し、シュロップシャーのボスコベル館に逃げ込んだ。

ロイヤル・オークの息子

議会派軍は館の中まで攻め込んできたが、後のチャールズ2世は側近と共に大きなオークの木の枝の中に一晩隠れ、難を逃れた。写真はその子孫にあたるオーク(ボスコベル館にて撮影。出典:Wikipedia)。

王を救ったオークの木は後に「ロイヤル・オーク」の称号を与えられ、王権を象徴する図柄や紋章などに好んで用いられた。イギリス海軍には「ロイヤル・オーク」と名付けられた軍艦が複数存在する。

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