パフ・ザ・マジック・ドラゴン
Puff, The Magic Dragon

日本語版の歌詞の比較と元ネタ・考察など

『パフ』は、アメリカのポピュラーソング『Puff, The Magic Dragon パフ・ザ・マジック・ドラゴン』を原曲とする子供向けの歌・キッズソング

NHKの幼児教育番組「おかあさんといっしょ」で放送されるほか、小学校の音楽の教科書にも日本語版が掲載され、音楽の授業で合唱される。

上ジャケット写真:CD付き絵本「Puff, The Magic Dragon」英語版

歌詞については、異なる訳詞者による3つのバージョンが広く知られている。「ふしぎなパフ かいじゅうだ♪」で歌った方もいれば、「パフ 魔法の竜が暮らしてた♪」で覚えている方も少なくないだろう。詳細は後述。

なお、日本語版『パフ』の原曲、ピーター・ポール&マリー『パフ・ザ・マジック・ドラゴン Puff, The Magic Dragon』の歌詞・日本語訳についてはこちらを参照されたい。

【試聴】 パフ(日本語歌詞:野上彰バージョン)

日本語版の歌詞の比較

『パフ』日本語版の歌詞については、2016年現在で主に3つのバージョンが定着している。簡単なまとめは次のとおり。

中山知子バージョン

歌い出し:「ふしぎなパフ かいじゅうだ きれいな海から 毎朝おはよう」

別れの理由:海の向こうの町へ行きたくなったから

解説:歌詞は5番まで。架空の島ホナリー(ハナリー)などの固有名詞が省略されシンプルで親しみやすい。海賊も王様も出てこない。パフとジャッキーが仲良く遊ぶ様子が丁寧に描写されているため、別れが唐突すぎて切ない。

野上彰バージョン

歌い出し:「パフ 魔法の竜が暮らしてた 海に秋の霧 たなびくホナリー」

別れの理由:いつしか大人になったから

解説:NHK「おかあさんといっしょ」や由紀さおりの楽曲で使用されている。原曲にもっとも近い訳詞。「ホナリー」が島の名前であることが子供には分かりにくいかも。

芙龍明子バージョン

歌い出し:「パフ 魔法の竜が暮らしてた 低く秋の霧 たなびく入り江」

別れの理由:旅に出たから

解説:歌詞は3番まで。「野上彰バージョン」の圧縮版か。教育芸術社による小学生向け音楽の教科書「小学校の音楽3」に掲載されている。

元ネタは「カスタード・ザ・ドラゴン」?

『パフ』のストーリーについては、アメリカの詩人オグデン・ナッシュによる1936年の絵本向けポエム「カスタード・ザ・ドラゴン Custard the Dragon」が元ネタになっているという。

『パフ』原曲歌詞の作詞者は、アメリカのフォークグループ、ピーター・ポール&マリーのメンバーであるピーター・ヤロー(ヤーロウ/Peter Yarrow/1938-)と、その大学時代の友人レニー・リプトン(Lenny Lipton)がクレジットされている。

レニー・リプトンは、図書館で読んだ「カスタード・ザ・ドラゴン Custard the Dragon」の詩にインスピレーションを受けて、タイプライターに『パフ・ザ・マジック・ドラゴン Puff, The Magic Dragon』の原案を打ち込んで放っておいた。

その原案を偶然読んだピーター・ヤローは、そのストーリーを大変気に入り、追加の歌詞を肉付けして現在の『パフ』のストーリーが完成したと伝えられている。

ピーターパンとの関係は?

『パフ』原曲作詞者のピーター・ヤロー氏の名前を見ると、ディズニーのアニメ映画「ピーターパン」がふと思い出される。

「ピーターパン」は、スコットランドの作家ジェームス・マシュー・バリーの戯曲『ピーター・パンあるいは大人になりたがらない少年』(初演:1904年)を原作とする。

1953年にはディズニーのアニメ映画「ピーター・パンとウェンディ」が公開され世界的に人気となった。『パフ』の原曲である『パフ・ザ・マジック・ドラゴン Puff, The Magic Dragon』がリリースされたのはその10年後の1963年。

ネバーランドに住む主人公のピーターパンは、決して大人になることがない「永遠の少年」。黒髪と黒ひげの海賊フック船長を宿敵としている。

魔法の竜パフもピーターパンと同じく年をとらない存在。逆に、パフと仲良しの少年ジャッキーは、やがて年をとり大人になっていく存在。

『パフ』原曲の歌詞では、ピーターパンへのオマージュ的な世界観を取り入れつつ、不老不死の魔法の竜パフと対比させることで、逆に「やがて大人になる少年」という存在や「失われていく純真さ・子供心」を巧みに表現できているのだろう。

ドラゴンが登場する海外のアニメ映画について

魔法の竜パフと少年ジャッキーのように、「ドラゴンと少年」という組み合わせは昔から相性が良いらしく、1948年には、子供のドラゴンを救出する物語「エルマーのぼうけん My Father's Dragon」がアメリカで出版されている。

1977年にはディズニー映画「ピートとドラゴン Pete's Dragon」(実写+アニメ)が公開され、孤独な少年ピートを守るドラゴンのエリオットが人気となった。

東京ディズニーランドの夜のパレード「エレクトリカルパレード・ドリームライツ」では、緑の大きなドラゴンのエリオットが少年ピートと一緒に登場する。

2010年には、「シュレック」や「カンフーパンダ」シリーズで知られるドリームワークスの3Dアニメ映画「ヒックとドラゴン How to Train Your Dragon」が公開され、北米では200億円を越えるヒットとなった。

『パフ』では、ドラゴンと少年が現実的で悲しい別れを迎え、救いもカタルシスもなくただただ寂しい結末となっているので、取り残されたかのような喪失感を補うかのように、こうしたアニメ映画で後味の良いストーリーを楽しんでみるのもアリかも知れない。

パフ続編? 少年ジャッキーの娘とパフとの出会い

あまりに突然で悲しい別れとなった魔法の竜パフと少年ジャッキー。2007年、そこへ一筋の救いの光が差し込んだ。

「Puff, the Magic Dragon」を題材としたCD付き絵本が2007年に出版され、その中では、後日談的に、ジャッキー少年によく似た女の子がパフのところへ遊びに来るシーンが描かれているのだ。

絵本は100万部を越える大ベストセラーとなり、日本でもローカライズされた日本語版が出版された。現在では新品入手は難しいが、図書館で予約すれば閲覧可能と思われる。

「トイストーリー」シリーズの「忘れられたオモチャたち」のように、少年が大人になって一人残された魔法の竜パフだったが、今度は少年の娘がパフに会いに来るという、パフにとっての、そして読者にとっての救いがもたらされた歴史的瞬間だった。

ちなみに、『パフ』原曲作詞者のピーター・ヤロー氏には実際に娘べサニー(Bethany Yarrow)がおり、父と娘はライブ競演で『Puff, The Magic Dragon』を披露している。

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『パフ ザ・マジック・ドラゴン』元ネタ
ピーター・ポール&マリー『パフ・ザ・マジック・ドラゴン』歌詞・日本語訳
パフ原曲。アメリカのフォークソング・グループ「ピーター・ポール&マリー」による1963年のヒット曲。
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