パフ・ザ・マジック・ドラゴン 歌詞の意味・和訳
Puff, The Magic Dragon

原曲の英語の歌詞 日本語版の歌詞の比較と元ネタ・考察

『パフ』は、アメリカのポピュラーソング『Puff, The Magic Dragon パフ・ザ・マジック・ドラゴン』を原曲とする子供向けの歌・キッズソング

NHKの幼児教育番組「おかあさんといっしょ」で放送されるほか、小学校の音楽の教科書にも日本語版が掲載され、音楽の授業で合唱される。

上ジャケット写真:CD付き絵本「Puff, The Magic Dragon」英語版

歌詞については、異なる訳詞者による3つのバージョンが広く知られている。「ふしぎなパフ かいじゅうだ♪」で歌った方もいれば、「パフ 魔法の竜が暮らしてた♪」で覚えている方も少なくないだろう。詳細は後述する。

まずは、原曲のピーター・ポール&マリー『Puff, The Magic Dragon』の英語の歌詞と和訳を掲載したうえで、小学校などで歌われる日本語の歌詞について簡単に比較してみたい。

【YouTube】Peter Paul & Mary - Puff The Magic Dragon (with Lyrics)

英語の歌詞 意味・和訳(意訳)

『Puff, The Magic Dragon』

作詞・作曲:ピーター・ヤロー(Peter Yarrow)、レニー・リプトン(Lenny Lipton)

ピーター・ポール&マリー ベスト盤

写真:ピーター・ポール&マリー ベスト盤

Puff, the magic dragon
Lived by the sea
And frolicked in the autumn mist
In a land called Honah Lee

パフ 魔法の竜
海辺に住んでた
秋の霧の中
ホナリー島で遊んでた

Little Jackie paper
Loved that rascal puff
And brought him strings and sealing wax
And other fancy stuff

幼いジャッキー・ペーパーは
いたずらっ子なパフが大好き
ヒモやロウなどのオモチャ
パフのために持ってきた

Together they would travel
On a boat with billowed sail
Jackie kept a lookout
Perched on puffs gigantic tail

二人は帆船で旅をした
ジャッキーは見張り番
パフの大きなシッポの上で

Noble kings and princes
Would bow whenever they came
Pirate ships would lower their flag
When puff roared out his name. oh!

高貴な王様と王子様は
ジャッキー達におじぎをした
パフが彼の名前を叫べば
海賊船だって旗を降ろした

A dragon lives forever
But not so little boys
Painted wings and giant rings
Make way for other toys

ドラゴンは不老不死
けど少年はそうじゃない
ペイントした翼も大きな輪っかも
他のオモチャに負けてしまう

One grey night it happened
Jackie paper came no more
And puff that mighty dragon
He ceased his fearless roar

ある灰色の夜 それは起こった
ジャッキー・ペーパーはもう来なくなった
あんなに強いドラゴンのパフも
力強い叫びを止めてしまった

His head was bent in sorrow
Green scales fell like rain
Puff no longer went to play
Along the cherry lane

パフは悲しみでうなだれ
緑色のうろこは
雨のように剥がれ落ちた
桜の道にも行かなくなった

Without his life-long friend
Puff could not be brave
So puff that mighty dragon
Sadly slipped into his cave. Oh!

大切な友達なしでは
パフも勇敢にはなれなかった
強いドラゴンのパフは
悲しそうに洞穴(ほらあな)へ帰っていった

Puff, the magic dragon
Lived by the sea
And frolicked in the autumn mist
In a land called Honah Lee

パフ 魔法の竜
海辺に住んでた
秋の霧の中
ホナリー島で遊んでた

日本語版の歌詞の比較

『パフ』日本語版の歌詞については、2016年現在で主に3つのバージョンが定着している。簡単なまとめは次のとおり。

中山知子バージョン

歌い出し:「ふしぎなパフ かいじゅうだ きれいな海から 毎朝おはよう」

別れの理由:海の向こうの町へ行きたくなったから

解説:歌詞は5番まで。架空の島ホナリー(ハナリー)などの固有名詞が省略されシンプルで親しみやすい。海賊も王様も出てこない。パフとジャッキーが仲良く遊ぶ様子が丁寧に描写されているため、別れが唐突すぎて切ない。

野上彰バージョン

歌い出し:「パフ 魔法の竜が暮らしてた 海に秋の霧 たなびくホナリー」

別れの理由:いつしか大人になったから

解説:NHK「おかあさんといっしょ」や由紀さおりの楽曲で使用されている。原曲にもっとも近い訳詞。「ホナリー」が島の名前であることが子供には分かりにくいかも。

芙龍明子バージョン

歌い出し:「パフ 魔法の竜が暮らしてた 低く秋の霧 たなびく入り江」

別れの理由:旅に出たから

解説:歌詞は3番まで。「野上彰バージョン」の圧縮版か。教育芸術社による小学生向け音楽の教科書「小学校の音楽3」に掲載されている。

元ネタは「カスタード・ザ・ドラゴン」?

『パフ』のストーリーについては、アメリカの詩人オグデン・ナッシュによる1936年の絵本向けポエム「カスタード・ザ・ドラゴン Custard the Dragon」が元ネタになっているという。

『パフ』原曲歌詞の作詞者は、アメリカのフォークグループ、ピーター・ポール&マリーのメンバーであるピーター・ヤロー(ヤーロウ/Peter Yarrow/1938-)と、その大学時代の友人レニー・リプトン(Lenny Lipton)がクレジットされている。

レニー・リプトンは、図書館で読んだ「カスタード・ザ・ドラゴン Custard the Dragon」の詩にインスピレーションを受けて、タイプライターに『パフ・ザ・マジック・ドラゴン Puff, The Magic Dragon』の原案を打ち込んで放っておいた。

その原案を偶然読んだピーター・ヤローは、そのストーリーを大変気に入り、追加の歌詞を肉付けして現在の『パフ』のストーリーが完成したと伝えられている。

ピーターパンとの関係は?

『パフ』原曲作詞者のピーター・ヤロー氏の名前を見ると、ディズニーのアニメ映画「ピーターパン」がふと思い出される。

「ピーターパン」は、スコットランドの作家ジェームス・マシュー・バリーの戯曲『ピーター・パンあるいは大人になりたがらない少年』(初演:1904年)を原作とする。

1953年にはディズニーのアニメ映画「ピーター・パンとウェンディ」が公開され世界的に人気となった。『パフ』の原曲である『パフ・ザ・マジック・ドラゴン Puff, The Magic Dragon』がリリースされたのはその10年後の1963年。

ネバーランドに住む主人公のピーターパンは、決して大人になることがない「永遠の少年」。黒髪と黒ひげの海賊フック船長を宿敵としている。

魔法の竜パフもピーターパンと同じく年をとらない存在。逆に、パフと仲良しの少年ジャッキーは、やがて年をとり大人になっていく存在。

『パフ』原曲の歌詞では、ピーターパンへのオマージュ的な世界観を取り入れつつ、不老不死の魔法の竜パフと対比させることで、逆に「やがて大人になる少年」という存在や「失われていく純真さ・子供心」を巧みに表現できているのだろう。

ドラゴンが登場する海外のアニメ映画について

魔法の竜パフと少年ジャッキーのように、「ドラゴンと少年」という組み合わせは昔から相性が良いらしく、1948年には、子供のドラゴンを救出する物語「エルマーのぼうけん My Father's Dragon」がアメリカで出版されている。

1977年にはディズニー映画「ピートとドラゴン Pete's Dragon」(実写+アニメ)が公開され、孤独な少年ピートを守るドラゴンのエリオットが人気となった。

東京ディズニーランドの夜のパレード「エレクトリカルパレード・ドリームライツ」では、緑の大きなドラゴンのエリオットが少年ピートと一緒に登場する。

2010年には、「シュレック」や「カンフーパンダ」シリーズで知られるドリームワークスの3Dアニメ映画「ヒックとドラゴン How to Train Your Dragon」が公開され、北米では200億円を越えるヒットとなった。

『パフ』では、ドラゴンと少年が現実的で悲しい別れを迎え、救いもカタルシスもなくただただ寂しい結末となっているので、取り残されたかのような喪失感を補うかのように、こうしたアニメ映画で後味の良いストーリーを楽しんでみるのもアリかも知れない。

パフ続編? 少年ジャッキーの娘とパフとの出会い

あまりに突然で悲しい別れとなった魔法の竜パフと少年ジャッキー。2007年、そこへ一筋の救いの光が差し込んだ。

「Puff, the Magic Dragon」を題材としたCD付き絵本が2007年に出版され、その中では、後日談的に、ジャッキー少年によく似た女の子がパフのところへ遊びに来るシーンが描かれているのだ。

絵本は100万部を越える大ベストセラーとなり、日本でもローカライズされた日本語版が出版された。現在では新品入手は難しいが、図書館で予約すれば閲覧可能と思われる。

「トイストーリー」シリーズの「忘れられたオモチャたち」のように、少年が大人になって一人残された魔法の竜パフだったが、今度は少年の娘がパフに会いに来るという、パフにとっての、そして読者にとっての救いがもたらされた歴史的瞬間だった。

ちなみに、『パフ』原曲作詞者のピーター・ヤロー氏には実際に娘べサニー(Bethany Yarrow)がおり、父と娘はライブ競演で『Puff, The Magic Dragon』を披露している。

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