ロココの主題による変奏曲

チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840-1893)

『ロココの主題による変奏曲 イ長調』作品33は、チャイコフスキー作曲によるチェロと管弦楽のための楽曲(単一楽章)。初演は1877年。チャイコフスキー国際コンクールにおけるチェロ部門の課題曲として知られる。

ロココとは、18世紀に広まった美術様式の一つで、建築・絵画・音楽など幅広い芸術分野で取り入れられた。豪壮・華麗なバロック、優美・繊細なロココと比較されるが、両者の境界は必ずしも明確ではない。

音楽分野におけるロココ様式は、モーツァルトやクープランなどの作品に見られるような装飾音符を多用した軽快・優美・繊細な音楽様式が特徴。

ちなみに挿絵は、ロココ時代を代表する18世紀フランスの画家フランソワ・ブーシェによる絵画「ポンバドゥール侯爵夫人の肖像」1756年。

【試聴】The Variations on a Rococo Theme for cello and orchestra

フィッツェンハーゲンによる大幅修正について

『ロココの主題による変奏曲』は、チャイコフスキーの親友であったヴィルヘルム・フィッツェンハーゲンのために作曲された。初演もフィッツェンハーゲンのチェロ独奏で演奏されている(指揮はニコライ・ルビンシテイン)。

フィッツェンハーゲンは初演に際して、無断で第8変奏をカット、変奏の曲順を大幅に入れ換えて演奏するなど、オリジナルに大幅な改訂を加えたため、チャイコフスキーや出版社らを大いに困惑させたという。

しかも改訂の方法は、チャイコフスキーの自筆譜に直接同じインクで書き入れるという大胆なものだった。作曲者は苛立ちをあらわにしつつも、得意げな友人に配慮して改訂版の使用を黙認していたという。

20世紀に入り、チャイコフスキーの自筆譜を復元する試みが進められた。モスクワ犯罪科学調査研究所の協力により、X線と電子光学整流器によりチャイコフスキーの筆跡が解析され、20年以上かけて1955年7月にオリジナル楽譜の復元に成功。翌1956年にチャイコフスキー全集として出版された。

復元後もフィッツェンハーゲン版を用いた演奏は多いが、オリジナル版も普及が進んでおり、チャイコフスキー国際コンクールのチェロ部門では、第12回(2002年)大会からオリジナル版が課題曲として規定されている。

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