糸を紡ぐグレートヒェン シューベルト
ゲーテ「ファウスト」に曲をつけたシューベルト歌曲
『糸を紡ぐグレートヒェン』(Gretchen am Spinnrade)は、ゲーテ「ファウスト 第一部」を基にしたシューベルトの歌曲。1814年作曲。
ゲーテの作品に曲をつけたシューベルト歌曲としては、1815年の『魔王 Erlkönig』が世界的に有名だが、この『糸を紡ぐグレートヒェン』はシューベルトにとって初となるゲーテ関連歌曲であり、同曲をもってドイツリート(歌曲)誕生の瞬間とみなす解説もあるようだ。
【YouTube】Lucia POPP sings "Gretchen am Spinnrade"
愛しいファウストに会えず嘆き悲しむグレートヒェン
ゲーテ「ファウスト 第一部」では、メフィスト(悪魔)に魂を売ったファウスト博士が少女マルガレーテ(グレートヒェン)と出会い結ばれる場面が描かれる。
ファウストはワルプルギスの夜(ヴァルプルギスの夜)の饗宴に連れて行かれ、ファウストと合えないマルガレーテ(グレートヒェン)は嘆き悲しみ、彼との赤子を手にかけ投獄されてしまった。
シューベルト『糸を紡ぐグレートヒェン』の歌詞は、愛するファウストと会えなくなったマルガレーテ(グレートヒェン)が悲嘆に暮れる様子が彼女の立場から描写されている。
歌詞の意味・日本語訳(意訳)
Meine Ruh ist hin,
Mein Herz ist schwer,
Ich finde sie nimmer
Und nimmermehr.
私の安らぎは去った
心も重い
二度と安らぎを見出せない
もう二度と
Wo ich ihn nicht hab,
Ist mir das Grab,
Die ganze Welt
Ist mir vergällt.
あの人がいなければ
墓の中も同然
そんな世界なんて
ただいまわしいだけ
Mein armer Kopf
Ist mir verrückt,
Mein armer Sinn
Ist mir zerstückt.
私の哀れな頭は正気を失い
私の哀れな心は引き裂かれた
Meine Ruh ist hin,
Mein Herz ist schwer,
Ich finde sie nimmer
Und nimmermehr.
私の安らぎは去った
心も重い
二度と安らぎを見出せない
もう二度と
Nach ihm nur schau ich
Zum Fenster hinaus,
Nach ihm nur geh ich
Aus dem Haus.
あの人を求めて
窓から外を眺め
ただあの人を求めて
外に出てみる
Sein hoher Gang,
Sein' edle Gestalt,
Seines Mundes Lächeln,
Seiner Augen Gewalt,
立派な足取り
高貴な身なり
口元は微笑み
眼は力強く輝く
Und seiner Rede
Zauberfluß,
Sein Händedruck,
Und ach, sein Kuß!
魔性を帯びた話しぶり
手を握る力強さ
そしてああ、あのキス!
Meine Ruh' ist hin,
Mein Herz ist schwer,
Ich finde sie nimmer
Und nimmermehr.
私の安らぎは去った
心も重い
二度と安らぎを見出せない
もう二度と
Mein Busen drängt
Sich nach ihm hin,
Ach dürft' ich fassen
Und halten ihn,
私の胸は
あの人へと引き寄せられる
ああ許されるのなら
彼を捕まえて抱きしめたい
Und küssen ihn,
So wie ich wollt',
An seinen Küssen
Vergehen sollt'.
望むままに
口づけを交わしたい
たとえそのまま消え去ろうとも
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