『君をのせて』歌詞の意味・解釈
映画『天空の城ラピュタ』主題歌

小学校の音楽の授業で歌う合唱曲

『君をのせて』は、1986年公開のアニメ映画「天空の城ラピュタ」主題歌(エンディング曲)を元にした合唱曲。歌詞は、宮崎駿監督による原案をベースに、高畑勲と久石譲の補作により作詞された。

天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎

ジャケット写真:天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎

『君をのせて』のメロディに関しては、映画「天空の城ラピュタ」が公開される数ヶ月前に発売されていたイメージアルバム内の一曲『パズーとシータ』が原曲として用いられている(詳しくは後述)。

【YouTube】君をのせて 井上あずみ

【YouTube】君をのせて 合唱曲版

『君をのせて』歌詞

歌詞の意味を解釈するにあたり、まず、作詞:宮崎駿(補作:高畑勲・久石譲)による『君をのせて』の歌詞を次のとおり引用する。

あの地平線輝くのは
どこかに君をかくしているから

たくさんの灯がなつかしいのは
あのどれかひとつに 君かいるから

さあ でかけよう ひときれのパン
ナイフ ランプ かばんにつめこんで

父さんが残した 熱い想い
母さんがくれた あのまなざし

地球はまわる 君をかくして
輝く瞳 きらめく灯

地球はまわる 君をのせて
いつかきっと出会う 僕らをのせて

父さんが残した 熱い想い
母さんがくれた あのまなざし

地球はまわる 君をかくして
輝く瞳 きらめく灯

地球はまわる 君をのせて
いつかきっと出会う ぼくらをのせて

作詞の経緯

『君をのせて』作詞の経緯については、2001年に出版された「天空の城ラピュタ ロマンアルバム」内で、プロデューサーの高畑勲が次のようにインタビューに答えている。

イメージアルバム曲『パズーとシータ』についても言及されている。

エンディング用に、売れそうな曲をその筋専門の作詞作曲家に頼んだりするのじゃなくて、映画全体と有機的に結びついたものでなければならない。イメージ・アルバムの「パズーとシータ」という曲はまさにそれにぴったりでした。

このメロディーを映画のなかでふたりのテーマとして一貫して使い、最後に歌にして聞かせたい。それで久石さんに提案して、あのメロディーに「サビ」を書き加えてもらったんです。中間部の盛り上がるところですね。

そしてその一方で宮さんに、主題歌を入れるならどういう内容にしたいか、どういうことを云いたいか、それをメモでもなんでもいいから書いてくれ、といったんです。

その両方ができて、メロディを口ずさみながら宮さんの走り書きをつらつら見ていたら、おどろいたことに、これがうまくあいそうなんです。それで言葉をちょっと変えたり削ったり伸ばしたりして譜につけてみたんです。

そのいい加減なものを出発点の叩き台にして、あとぼくと久石さんで補作というか、整理したのがいまの歌詞なんです。 

<「天空の城ラピュタ ロマンアルバム」より引用>

歌詞の意味・解釈

高畑勲が「映画全体と有機的に結びついたものでなければならない」「ふたりのテーマ」として作詞したという『君をのせて』。

その歌詞の意味を解釈するにあたっては、映画「天空の城ラピュタ」のストーリーや設定を踏まえたものになるのが自然な流れだろう。

テレビ(地上波)で何度も放送されている人気の作品であり、改めて歌詞とストーリーの関係を詳細に述べるのは野暮なので、ここでは主人公の少年パズーの父親と母親について補足しておくに留めたい。

『君をのせて』の歌詞で言うと、「父さんが残した熱い想い 母さんがくれた あのまなざし」の部分に関連する。

父さんが残した熱い想い

小説版「天空の城ラピュタ」によれば、「スラッグ渓谷に母親と一緒に来る前、パズーが住んでいた町で、冒険家の父親は、新飛行船建造のためのスポンサー探しに出かけた時、不慮の事故で死んだ」と記述されている。

ラピュタの発見に関して詐欺師の汚名を着せられたまま死んだ父のため、パズーは自作の飛行機でラピュタの実在を証明することを夢見ていた。

『君をのせて』歌詞の「父さんが残した熱い想い」とは、まさにこの「ラピュタの実在を証明する」という冒険家の父の悲願を意味していることになる。

亡くなったパズーの母親については詳しい設定資料を見つけられていないが、恐らく冒険家の父を陰ながらそっと支える寛容で夫想いの包容力ある女性だったに違いない。

全体的な解釈

最後に、映画のストーリーから『君をのせて』の歌詞を全体的に解釈すると、歌詞は少年パズーの視点から描写されており、「君」とはヒロインのシータ、「ぼくら」とは「パズーとシータ」を意味することになる。

ラピュタを求めて志半ばで倒れた父の「熱い想い」と、優しい母のまなざしを胸に、パズーはシータと出会い、ラピュタへと冒険の旅を進めていくというパズー視点のテーマ曲ということになろう。

亡くなった母親への想い?

宮崎駿監督の母親は、映画「風の谷のナウシカ」(1984年)が公開される少し前に他界している。結核に冒され病弱だった母親の存在は、1988年「となりのトトロ」にも表れているように、宮崎駿監督の作品に色濃く反映されている。

1986年の「天空の城ラピュタ」では、シータやドーラ(空中海賊ドーラ一家の女ボス)のキャラクター設定に宮崎駿の母親への想いが反映されているとの解釈もあるようだ。

「たくさんの灯がなつかしいのは あのどれかひとつに君がいるから」

『君をのせて』の歌詞にあるこの一文は、宮崎駿監督が亡き母への思いをそっと忍ばせているようにも感じられる。

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