望月 もちづき 満月の別名 意味・由来・語源

月の満ち欠けの名前・呼び方・読み方

望月(もちづき/ぼうげつ)は、旧暦の十五夜における月、すなわち満月の別名。語源は、中国の暦法である太陰太陽暦に由来する。

太陰太陽暦では、新月を朔(さく)、満月を望(ぼう)といい、朔日(さくじつ)が月の初めの日となった。

日本では、明治時代初期まで太陰太陽暦に基づく暦が使われていた(参照:日本の暦の歴史まとめ 明治改暦とは?)。

「望」を「もち」と読む由来は?

望月(ぼうげつ)の「望(ぼう)」を「もち」と読ませるのは日本独自の読み方だが、この語源・由来は一体どこから来ているのだろうか?

著書『日本語の起源』、『日本語練習帳』などで知られる元・学習院大学名誉教授の大野 晋(おおの すすむ/1919-2008)氏によれば、「満月」の「満」の訓読みである「みち」から「もち」への母音交替形と考えられるという。

確かに、「満潮(みちしお)」のように「満月」を「みちづき」と読めば、「望月(もちづき)」へ意味的にも音的にもスムーズにつながりそうな雰囲気は感じられる。

お餅(もち)との関係は?

素朴な疑問だが、望月(もちづき)、すなわち満月の丸い形と「もち」という発音から想像すると、望月とお餅(もち)は何らかの関係にあるのではないだろうか?

この点については、埼玉県加須市の株式会社もちやWebサイトで次のような解説がなされていた。

昔からおもちの名前の由来には、様々な説があります。
谷川士清が「倭訓の栞」で、契沖(江戸時代の国学者)の影響を受けたかどうかわかりませんが、「もちは望月の望である」と述べています。

<株式会社もちやWebサイトより>

この解説によれば、お餅(もち)の「もち」は、望月(もちづき)の「もち」に由来しているとの説があるようだ。

望月・満月の丸い形と「もち」を重ねることで、家庭円満や満願成就などにつながる縁起物としての意味合いもあったのではないだろうか。

ちなみに、月でウサギが餅つきをしているという伝説も、この「望月(もちづき)」から「餅つき」が連想されたのではないかと想像される。

中国の月餅との関係は?

望月(もちづき)とお餅(もち)といえば、中国の月餅(げっぺい)も思い出される。

月餅(げっぺい)とは、満月に見立てた丸く平たい中国のお菓子で、中にアンコが入っている。

中国では唐の時代から、中秋の名月を楽しむ「中秋節」に餅を食べる風習があったという。現在の形の月餅は明の時代に入ってから流行したようだ。

望月(もちづき)と月餅の関係については、起源や由来としての関係性はないと思われるが、餅(もち)と月の関係性や相性の良さが伺われる興味深い伝統文化の一つであることは間違いないだろう。

望月と和歌

最後に、「望月(もちづき)」を用いた有名な和歌をご紹介。作者は、平安時代中期に摂関家として栄華を極めた藤原 道長(ふじわらのみちなが)。

この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば

<『小右記』より/原文漢文>

「この世は、自分(道長)のためにあるようなものだ。望月(満月)のように、何も足りないものはない」といった意味になる。

「望月(もちづき)」は万葉集でもよく用いられており、奈良時代には既に定着していた言葉であることが伺われる。

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