長い道を Дорогой длинною

ロシア歌曲(ロマ音楽風)/亡命ロシア人の愛唱歌

『長い道を Дорогой длинною』は、ロシア革命(1917年)後まもなく作曲されたロシア歌曲(ロマ音楽風/ジプシー歌謡)。

作詞:V. フォーミン(フォミーン)、作曲:K. ポドレフスキー。

同曲は、1969年にポール・マッカートニーがプロデュースした女性歌手メリー・ホプキンのシングル『Those Were The Days』としてカバーされ世界的大ヒットを記録。日本でも『悲しき天使』、または『花の季節』のタイトルで親しまれている。

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歌詞の意味・日本語訳(意訳)

1.
Ехали на тройке с бубенцами,
А вдали мелькали огоньки.
Эх, когда бы мне теперь за вами,
Душу бы развеять от тоски!

鈴の音と共にトロイカで走りゆく
遠くには灯火がまたたく
ああ、君らの後を追って行けたら
心の憂さも吹き払らえるのに!

Дорогой длинною, погодой лунною,
Да с песней той, что вдаль летит звеня,
И с той старинною, да с семиструнною,
Что по ночам так мучила меня.

<コーラス>
長い道をゆく 月明かりの中
遠く響きわたる歌と共に
夜ごと私を苦しめた七弦ギターと共に

2.
Да, выходит, пели мы задаром,
Понапрасну ночь за ночью жгли.
Если мы покончили со старым,
Так и ночи эти отошли!

いたずらに我々は歌い
むだに夜ごと遊びに熱くなった
昔の事を断ち切れたら
こんな夜も消えうせただろうに!

<コーラス>

3.
В даль родную новыми путями
Нам отныне ехать суждено!
Ехали на тройке с бубенцами,
Да теперь проехали давно!

はるか遠くの故郷
新たな道をゆく運命
トロイカと鈴の音も
今はもう遠い昔

<コーラス>

ロマ音楽と七弦ギター

当時のロシアでは、移住・放浪生活を送るロマ(ジプシー)らによるロマ音楽がモスクワなどで演奏され、七弦ギターやフィドルの伴奏にのせてソウルフルに歌うスタイルが特徴とされた。

『長い道を』もこうしたロマ音楽風の歌謡曲(ジプシー歌謡)として歌われたようだが、後にロシア革命後の共産党政府によって発禁処分となり、作曲者のV. フォーミン(フォミーン)も活動を禁止されてしまったという。

歌詞の内容は? 亡命ロシア人の愛唱歌

ロシア歌曲『長い道を』の歌詞では、遠い昔の日々を振り返り、変わってしまった世の中を嘆きつつも、祖国への新しい道を探りながら、昔の思い出を胸に強く生きていこうとする主人公の心境が切々と歌い込まれている。

これらの歌詞は、いったい何を暗に意味しているのだろうか?何のことを遠回しに表現しているのだろうか?

『長い道を』が作曲されたのがロシア革命後まもなくであること、その後の共産党政府から発禁処分を受けていること、歌詞にある「遠い故郷」「新しい道」「七弦ギター」などの単語から考えれば、この曲は、ロシア革命によって祖国を追われた亡命者の心境を暗示した作品だったのではないだろうか?

実際、ジプシー歌謡『長い道を』は発禁処分になったのちも、ロシアから海外へ亡命したロシア人たちの愛唱歌となり、望郷の思いを胸に多くの亡命ロシア人によって歌い継がれていったという。

亡命ロシア人が異国の地で思いをはせる、遠い祖国への「長い道」。散り散りになってしまった友人・知人らは元気だろうか?いつか故郷へ帰る日が来るのだろうか?激動の歴史の波に翻弄されたロシア人たちの心の叫びが聞こえてくるようではないか。

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