いちじくにんじん 歌詞と意味
わらべうた・数え歌・遊び歌
『いちじくにんじん』は、手まり歌(まりつき歌)、羽子突き唄、おはじき歌などとして古くから親しまれてきた日本のわらべうた・数え歌。
1はイチジク、2はニンジン、3はサンショウ(山椒)、4はシイタケ(椎茸)といったように、数字の読みと語頭が一致する名前の食材や植物などが順番に歌い込まれていく(下写真は筑前煮)。
「さんしょにしいたけ」以降の歌詞については、地域によって異なる食材や植物が歌われることもあるようだ。まずは、代表的な『いちじくにんじん』の歌詞を見ていこう。
歌詞の一例
いちじく にんじん
さんしょに しいたけ
ごぼうに むくろじゅ
ななくさ はつたけ
きゅうりに とうがん
むくろじゅ(ムクロジ)
『いちじくにんじん』で歌われる食材や植物の中には、普段あまり聞きなれないものもいくつか登場する。
まずは「むくろじゅ(無患子)」。ムクロジ科の落葉樹で、果皮には多量のサポニンが含まれ、かつては石鹸として洗濯などに珍重されていた。
むくろじゅ(ムクロジ)の黒くて硬い種子は、羽子板の羽根の玉や数珠(じゅず)の材料としても使われていたという。
写真:ムクロジの実と種子
ななくさ(七草)
ななくさ(七草)には、お正月の七草(春の七草)と秋の七草がある。
春の七草は、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。
秋の七草は、ススキ、ハギ、クズ、オミナエシ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ。
はつたけ(初茸)
「はつたけ(初茸)」とは、特に関東圏で親しまれていた食用キノコの一つで、他の地域では「あいずり」、「あおはち」、「あいたけ」などと呼ばれている。
初茸は炊き込みご飯にしたり、味噌焼き・しょうゆ焼き、吸い物や煮物など、幅広い料理法で食される。
写真:ハツタケ(出典:Wikipedia)
とうがん(冬瓜)
とうがん(トウガン/冬瓜)とは、ウリ科のつる性植物で、果実を食用する夏野菜。実は夏に収穫され、冬まで貯蔵することができるため冬瓜とよばれる。果肉はやわらかく、淡泊な味わいで煮物料理などに使われる。
写真:とうがん(冬瓜)
他の歌詞について
数え歌『いちじくにんじん』には、他のわらべうたと同様、歌われる地域によって歌詞に若干のバリエーションが存在する。
例えば、「しいたけ」を「シソ(紫蘇)」、「むくろじゅ」を「むかご」や「ろうそく」、「はつたけ」を「はくさい」や「はじかみ」、「きゅうり」を「くわい」に、「とうがん」を「とおがらし」などと置き換えて歌うケースもあるようだ。
「むかご」とは、ヤマイモ(山芋)やジネンジョ(自然薯)などで、わき芽が養分を貯え肥大化した部分(小さな肉芽)のこと。塩ゆでする、煎る、米と一緒に炊き込むなどの調理法がある。
写真:ヤマノイモのむかご(出典:Wikipedia)
「はじかみ」とは、料理に添えられる赤と白の2色の生姜(しょうが)のこと。
「くわい」(下写真)とは、オモダカ(水生多年草)の塊茎。日本では「芽が出る」縁起の良い食物とされ、煮物にしておせち料理などで食べられる。
数え歌なので、数字の読みとの関連性さえあれば、基本的にどんな食材を当てはめても自由に歌うことができる。こうした多様性こそわらべうたの醍醐味の一つだろう。
「いち にい サンマのしいたけ」との関係は?
『いちじくにんじん』以外の有名な数え歌として、「いち にい サンマのしっぽ」と歌う数え歌があるが、地域によっては「いち にい サンマのしいたけ」と歌われることもあるという。
「サンマのしいたけ」という意味不明なフレーズについては、おそらく、『いちじくにんじん』の歌詞である「さんしょに しいたけ」の影響を受けているのではないかと推察される。
数え歌『いちにサンマのしっぽ』は、このほかにもわらべうた『いろはにこんぺいとう』との融合バージョンも確認されており、子供たちの創造力豊かな遊び心が体現されているようで非常に興味深い。
数え歌・わらべうた関連ページ
- いちにさんまのしっぽ
- ゴリラの息子 菜っ葉 葉っぱ 腐った豆腐!
- 一番はじめは一の宮
- 二は日光東照宮 三は讃岐の金比羅さん 四は信濃の善光寺
- 一かけ二かけて
- 『一番はじめは一の宮』と同じメロディで歌われるわらべうた
- 手まり歌・まりつき歌
- ゴムまり遊びで歌われる定番の手毬唄・まりつき歌まとめ
- 有名なわらべうた
- 「あんたがたどこさ」、「はないちもんめ」、「おちゃらかほい」、「ずいずいずっころばし」など、日本の古いわらべうた