たきび 歌詞の意味・解説

かきねの かきねの 曲がり角 たきびだ たきびだ 落ち葉焚き

『たきび』(たき火)は、作詞:巽聖歌、作曲:渡辺茂による日本の童謡。1941年(昭和16年)にNHKのラジオ番組「幼児の時間」で放送された。

戦後の1949年(昭和24年)にも、NHKのラジオ番組「うたのおばさん」で松田トシや安西愛子が歌い、全国の幼稚園や保育園、小学校に広まっていた。

サザンカの垣根

写真:サザンカの垣根(出典:PhotoAC)

作詞者の巽 聖歌(たつみ せいか/1905-1973)、本名:野村 七蔵(しちぞう)は、岩手県出身の児童文学者。『たきび』作詞当時は東京都中野区上高田に在住していた。

自宅近辺(上高田3丁目付近)には、樹齢300年を越す大きなケヤキが6本ある「ケヤキ屋敷」と呼ばれる家があった。その家にはケヤキの他にもカシやムクノキなどがあり、住人はその枯葉を畑の肥料にしたり、焚き火に使ったりしていた。

ケヤキ屋敷の付近をよく散歩していた巽は、その風景をもとに『たきび』の詞を完成させたという。

【YouTube】たきび

歌詞の意味

童謡『たきび』の歌詞の意味について、簡単に補足したい。作詞:巽 聖歌による歌詞を次のとおり引用する。

かきねの かきねの まがりかど
たきびだ たきびだ おちばたき
「あたろうか」「あたろうよ」
きたかぜ ぴいぷう ふいている

さざんか さざんか さいたみち
たきびだ たきびだ おちばたき
「あたろうか」「あたろうよ」
しもやけ おててが もうかゆい

こがらし こがらし さむいみち
たきびだ たきびだ おちばたき
「あたろうか」「あたろうよ」
そうだん しながら あるいてく

<引用:巽 聖歌『たきび』歌詞より>

「かきね」(垣根)とは、敷地や庭の境界にそって背の高い植物を植えて、壁のように整えた自然の囲いのこと。竹なら竹垣(たけがき)、その他の植物なら生垣(いけがき)と呼ばれる。

「さざんか」は、ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹サザンカ(山茶花)のこと。 秋の終わりから初冬にかけて、赤や白・ピンクの花を咲かせる。下写真はサザンカの花。

サザンカの花

「こがらし」とは?

「こがらし」(木枯らし)とは、秋の末から冬の初めにかけて吹く強く冷たい風。冬の季語。

気象庁で定義されている「木枯らし」は、10月から11月にかけて、冬型の気圧配置(西高東低)における最大風速毎秒8メートル以上の北風を指す。

その年最初の木枯しは「木枯し1号」と呼ばれることが多い。この定義に当てはまらない年、つまり木枯しが吹かない年も少なくない。

「ぴいぷう」は独自の擬音

「ぴいぷう」は、寒い北風を表現した擬音。風の音を表す「ピューピュー」「ヒューヒュー」などはよく使われるが、「ぴいぷう」は童謡『たきび』の歌詞でのみ使われる独特な表現と言える。

「ぱぴぷぺぽ」の「ぱ行」をあえて使うことで、歌詞の印象が優しく丸い感じになり、子供にも歌いやすい童謡らしさ・親しみやすさが効果的に演出されている。

NHKみんなのうた『北風小僧の寒太郎』の歌詞では、「ヒューン ヒューン ヒュルルン ルンルンルン♪」と表現されているが、こちらは「はひふへほ」の「は行」で、風の冷たさ・厳しい寒さが強調されているように感じられる。

ちなみに、冬の北風がスキマをとおって笛のような音で鳴ることを「もがりぶえ(虎落笛)」と呼ぶ。俳句で使われる冬の季語。「もがり(虎落)」とは竹の柵(さく)のこと。

発祥の地と歌碑

作詞者が住んでいた童謡『たきび』発祥の地である東京都中野区上高田3丁目は、西武新宿線の新井薬師前駅が最寄り駅。

新井薬師前駅の南口を出て、線路沿いに東へ50メートルほどの交差点を右折し、100メートルほど南へ進むと、左手に竹垣で囲まれた広い敷地が目に入る。そこがまさに、童謡『たきび』の歌詞のモデルとなった上高田3丁目のお屋敷だ。

童謡『たきび』発祥の地 中野区上高田3丁目

写真:童謡『たきび』発祥の地(中野区上高田3丁目/出典:Google Maps)

現在では竹垣になっているが、童謡『たきび』の作詞者が近所に住んでいた頃は、サザンカと茶の木の生け垣だった。

歌碑は、竹垣で囲まれた敷地の南東側の入り口付近にある。竹垣より少し奥まったところに隠れるように立っている。遠くからはちょっと分かりにくい。

童謡『たきび』発祥の地 歌碑

写真:童謡『たきび』発祥の地 歌碑(出典:中野区公式観光サイトまるっと中野)

歌碑には、次のような碑文が記されている。

聖歌は、この詩が作られた昭和五、六年頃から約十三年間、萬昌院のすぐ近く、現在の上高田四丁目に家を借りて住んでいました。朝な夕なにこのあたりを散策しながら「たきび」の詩情をわかせたといわれています。

歳月が流れ、武蔵野の景観が次第に消えて行くなかで、けやきの大木がそびえ、垣根の続くこの一角は、今もほのかに当時の面影をしのぶことができる場所といえましょう。

<引用:中野区上高田3丁目 童謡『たきび』歌碑より>

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