男なら 歌詞の意味 山口県民謡

幕末の長州藩・萩地方で外国船の襲撃に備える女性たちの唄

『男なら』は、山口県萩地方に伝わる民謡。幕末の長州藩で、外国船の襲撃に備えるための土塁工事に携わった女性たちによって歌われ始めた女性視点の歌(もし私が男ならば、の意味)。

歌詞にもある囃し言葉の「オーシャリ」(意味:おっしゃるとおり)から『オーシャリ節』とも呼ばれる。現代の萩夏まつりでは、よさこい風にアレンジされた踊りでも親しまれている。

神功皇后

挿絵:月岡芳年筆「日本史略図会 第十五代神功皇后」部分抜粋

長州藩士や奇兵隊などの妻や子供たちによって歌われ、明治維新の頃に流行した。長らく忘れられていたが、1936年(昭和11年)に音丸のレコードがヒットし、その後赤坂小梅のレコードも発売され人気となった。

【YouTube】男なら(山口県民謡:国村千鳥)

歌詞の一例

男なら
お槍かついで お中間(ちゅうげん)となって
ついて行きたや 下関
国の大事と 聞くからは
女ながらも 武士の妻
まさかの時には 締め襷(だすき)
神功皇后さんの 雄々(おお)しき姿が
鑑(かがみ)じゃないかいな
オーシャリ シャーリ

女なら
京の祗園(ぎおん)か 長門(ながと)の萩よ
目もと千両で 鈴をはる
と云うて国に事あらば
島田くずして若衆髷(わかしゅまげ)
紋付袴(もんつきはかま)に身をやつし
神功皇后さんの はちまき姿が
鑑じゃないかいな
オーシャリ シャーリ

男なら
三千世界の 烏(からす)を死なし
主(ぬし)と朝寝が してみたい
酔えば美人の 膝枕(ひざまくら)
さめりゃ天下を 手で握り
咲かす長州 桜花(さくらばな)
高杉晋作さんは 男の男よ
傑(えら)いじゃないかいな
オーシャリ シャーリ

中間(ちゅうげん)

「中間(ちゅうげん)」とは、江戸時代において武家に奉公する者の身分の一つ。中間は 脇差1つを挿し、時には戦いにも参加し、平時は雑用を行った。

一般的に、年季契約など必要な時のみ雇い入れる形が多く、武家屋敷の多い江戸など大都市では、屋敷を渡り歩く「渡り中間」が見られた。世襲の中間身分(足軽に近い)も存在した。

神功皇后

神功皇后(じんぐうこうごう)は、日本の第14代天皇・仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)の皇后。

熊襲征伐を達成後、海を越えて朝鮮半島の新羅(しらぎ/しんら)へ攻め込み、続いて百済(くだら/ひゃくさい)、高麗(こうくり/コグリョ)をも服属させた(三韓征伐)。

三千世界の烏を死なし

「三千世界の烏を死なし」の歌詞は、幕末における長州藩の尊王攘夷志士・高杉晋作(たかすぎ しんさく)が詠んだとされる都々逸(どどいつ)「三千世界の鴉を殺し 主と朝寝がしてみたい」からきている。

「三千世界(さんぜんせかい)」とは、仏教の世界観における宇宙の単位で、ここでは単に「世の中すべての」といった意味合いで使われている。

朝からカーカーうるさいカラスをすべて退治して、江戸の花街でゆっくり朝寝をしてみたい、という意味。

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