南京玉すだれ 由来・ルーツと有名な技・歌詞の意味
チョイと伸ばせば 浦島太郎さんの 魚釣り竿にチョイと似たり
「♪さては南京玉すだれ♪」と軽妙な歌に合わせ、小さなすだれで釣り竿や橋などを表現する日本の大道芸・古典芸能「南京玉すだれ」。
日本の芸能なのになぜ「南京」?ルーツ・由来は?代表的な技や歌詞の意味など、南京玉すだれについて簡単にまとめてみた。
写真:2016年神戸まつり 南京玉すだれパレード(出典:日本南京玉すだれ協会)
なぜ南京?中国との関係は?
南京玉すだれの「南京」は、言うまでもなく中国の都市名だが、南京玉すだれが日本で独自に生み出された芸能であることには異説はない。
では、なぜ「南京」なのか?それは、演技の前に行う前置きの挨拶、いわゆる「口上(こうじょう)」の文句がルーツとなっている。
先御免を蒙りまして、京・大坂・江戸、三ヶの津に置きまして流行り来るハ、唐人阿蘭陀南京無双玉すだれ、竹成る数が参拾六本、糸の数が七拾と弐結び、糸と竹との「はりやい」を持ちまして、神通自在御覧に入れます。
<引用:「日本庶民文化史料集成 第8巻」三一書房 1976年出版>
この口上にある「唐人・阿蘭陀・南京・無双(とうじん・おらんだ・なんきん・むそう)玉すだれ」の謳い文句が、今日の「南京玉すだれ」の名称のルーツと考えられている。
唐人(とうじん)とは中国の人、阿蘭陀はオランダ、無双とは「比べる物がない」といった意味。つまり、「中国やオランダでもこんな珍しいものはない」という宣伝文句となっている。
富山県の「こきりこ祭り」がルーツ?
小さなすだれを踊りの道具に用いる芸能のルーツとしては、2002年3月に日本南京玉すだれ協会により、五箇山の白山宮が「南京玉すだれのふるさと」(発祥の地)として認定されている。
富山県・五箇山(ごかやま)は、民謡『こきりこ節』や『麦屋節(むぎやぶし)』で有名な谷あいの村。白山宮の境内では、毎年9月下旬に「こきりこ祭り」が開催される。
「こきりこ踊り/ささら踊り」(上写真)では、竹の板を紐で結わえた「ささら」と呼ばれる楽器が用いられ、この「ささら」が「南京玉すだれ」のルーツとして紹介されることもあるようだが、形状はかなり異なっている。
こきりこ踊りの「ささら」よりも、同じく五箇山の「編み竹踊り」で用いられる「編み竹」の方が「南京玉すだれ」に近い。
技の種類は? 代表的な歌詞の意味
「南京玉すだれ」の定番ともいえる代表的な技・歌詞の一例と意味は次のとおり。有名な3つの技「浦島太郎の魚釣竿」、「瀬田の唐橋」、「阿弥陀如来の後光」をご紹介。
アさて アさて アさてさてさてさて
さては南京玉すだれ
チョイと伸ばせば 浦島太郎さんの 魚釣り竿にチョイと似たり
浦島太郎さんの 魚釣り竿が お目に止まればおなぐさみ
お目に止まれば元へと返す
子供にも人気の昔ばなし「浦島太郎」を題材とした有名な技。玉すだれを長く伸ばして、浦島太郎が持っていた釣り竿に見立てている。
「おなぐさみ」(お慰み)とは、芸を披露する者が使う決まり文句。「大した芸ではございませんがお楽しみください」といった謙遜や皮肉の意味が込められている。
瀬田の唐橋(せたのからはし)
アさて アさて さては南京玉すだれ
チョイと返せば 瀬田の唐橋 唐金擬宝珠
擬宝珠ないのがおなぐさみ
瀬田の唐橋 お目に止まれば元へと返す
「瀬田の唐橋」(せたのからはし)は、滋賀県大津市の瀬田川に架かる橋。唐金擬宝珠(からかね・ぎぼし)とは、橋の欄干にある青銅製のタマネギ状の装飾のこと。
阿弥陀如来の後光
アさて アさて さては南京玉すだれ
チョイと伸ばせば 阿弥陀如来か 釈迦牟尼か
後光に見えればおなぐさみ
阿弥陀如来が お目に止まれば元へと返す
阿弥陀如来(あみだにょらい)は、鎌倉の大仏で有名な阿弥陀仏。釈迦牟尼(しゃかむに)はお釈迦様。細く伸ばした玉すだれの両端を持ち、丸く形作って後光を表現する。
2020年の東京五輪マークにも?
阿弥陀如来の後光を5人で作って、後ろ三人・前二人で五つの輪を作れば、オリンピックの五輪マークが表現出来る(写真:大阪狭山博悠会ブログより)。
2020年の東京オリンピックの際には、大道芸やイベントなどで、「南京玉すだれ」で作った東京五輪マークを見かける機会があるかもしれない。
時代に合わせて変幻自在に形を変える「南京玉すだれ」の真骨頂と言えそうだ。
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