蛍の宿は川端楊(やなぎ) 柳との違いは?
柳と楊のそれぞれの漢字が意味するヤナギの違いとは?
「蛍のやどは 川ばた楊(やなぎ)」が歌い出しの『蛍(ほたる)』は、1932年(昭和7年)に音楽教科書「新訂尋常小学唱歌」で発表された文部省唱歌。作詞:井上赳、作曲:下総皖一。
「川端柳/楊」(かわばたやなぎ)とは、川沿いに生えているヤナギの木のこと。
写真:川辺のネコヤナギ(出典:neko-yanagi.jp)
同じ「やなぎ」の読みで「柳」と「楊」の二つの漢字が使われるが、その違いは何だろうか?
小学館デジタル大辞泉の解説によれば、「柳」はヤナギ科ヤナギ属の落葉樹の総称だが、枝が長く垂れ下がるシダレヤナギを指すことが多いとのこと。
「楊」については、ネコヤナギやカワヤナギなどのように、しだれないヤナギを指す場合に使われるようだ。
「蛍のやどは 川ばた楊」の歌詞では、ヤナギの漢字として「柳」ではなく「楊」が使われているので、この歌で描写されるヤナギは、しだれないネコヤナギやカワヤナギに類するヤナギということになる。
【YouTube】 蛍 文部省唱歌
【YouTube】 蛍 歌:ひまわり
歌詞
蛍のやどは 川ばた楊(やなぎ)、
楊おぼろに 夕やみ寄せて、
川の目高(めだか)が 夢見る頃は、
ほ、ほ、ほたるが 灯をともす。
川風そよぐ、楊もそよぐ、
そよぐ楊に 蛍がゆれて、
山の三日月 隠れる頃は、
ほ、ほ、ほたるが 飛んで出る。
川原のおもは 五月(さつき)の闇夜(やみよ)、
かなたこなたに 友よび集(つど)い、
むれて蛍の 大まり小まり、
ほ、ほ、ほたるが 飛んで行く。
歌詞の意味
「おぼろ」とは、ぼんやりとかすんで物の形がはっきり見えない様子。『朧月夜(おぼろづきよ)』や『祇園小唄』などのように、春の夜の月に使われることが多い。
「目高(めだか)」は、川に生息する淡水魚のメダカのこと。語源は、目が大きく、頭部の上端から飛び出していることに由来する。
「川原のおも」とは、川の水面のこと。
「大まり小まり」とは、ホタルが群れ飛ぶ様子を丸い「毬(まり)」に例えたもの。
ネコヤナギ
ネコヤナギは、川辺に広く自生するヤナギ科ヤナギ属の落葉低木。根元は水につかる。
名称は、ネコのしっぽのような銀白色の毛の花穂をつけることに由来している。花穂は生け花にも使われる。
写真:ネコヤナギの花穂(出典:Wikipedia)
ネコヤナギの仲間にカワヤナギがあるが、カワヤナギはネコヤナギより葉っぱが細くとがっている。ネコヤナギの葉の裏には白い毛が密生している。
ちなみに、アニメ「天才バカボン」オープニング主題歌で「ヤナギの下にネコがいる だからネコヤナギ」と歌われているが、もちろんこれは冗談であり、名称の由来ではない。
写真:ネコヤナギと猫(出典:おもしろ画像集@NAVER)
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