ストドラパンパ Stodola Pumpa
ユニークで意味不明な呪文系チェコ民謡
『ストドラパンパ Stodola Pumpa』は、NHK「みんなのうた」で『牧場の小道』として1962年に初回放送されたチェコ民謡(スロバキア民謡)。
明るく爽やかなメロディ進行も然る事ことながら、「ストドラ ストドラ ストドラパンパ♪」と素早く繰り返される謎の呪文のようなコーラス部分の存在感・インパクトが非常に大きい。
こういった謎の呪文系「世界の民謡・童謡」といえば、『サラスポンダ』、『アチャパチャノチャ』、『チェッチェッコリ』などがあるが、この『ストドラパンパ』もこれらの人気曲に勝るとも劣らないほどの存在感を示している。
ストドラパンパの意味は?
アメリカから日本へ渡ったとされる『ストドラパンパ』は、英語では「Stodola Pumpa」、「Stodole Pumpa」などと表記され、これをチェコ語としてGoogle翻訳にかけると「barn pump」、すなわち「納屋の井戸」と訳出される。
ウィキペディアでは「農場の井戸」を意味していると解説されているが、納屋は農場で穀物を保管するのに用いられることから、「納屋の井戸」でも「農場の井戸」でも大きな方向性の違いはないように思われる。
単なる囃子言葉か?
なお、詳しくは後述するが、『ストドラパンパ』の原曲ではないかと推測されるチェコ民謡の歌詞にある「stará pumpa」を訳してみると、「古い井戸」といった意味が見い出される。
ただ、どこのどんな井戸だったにしても、前半の歌詞の内容とほとんど関連性が感じられない。仮に関連性があったとしても、ここまで連呼される必要性もなさそうだ(何らかの隠語や暗喩である可能性もなくはないが)。
おそらく、「ストドラパンパ」という言葉に日本語訳が必要なほどの意味合いはなく、日本のわらべうた『ずいずいずっころばし』のように、発声時の語呂の良さで選ばれた、歌全体のリズムやメリハリ、バランスを取るための囃子言葉(はやしことば)として捉えるのが自然なように思われる。
【YouTube】レイカシスターズ ストドラパンパ
歌詞:『牧場の小道』 NHK「みんなのうた」
牧場に沿いて辿る
僕等の 若き胸に
星は青く瞬(またた)く
美(うる)わしき 夜の道
ヘイ!
<コーラス>
ストドラ ストドラ ストドラ パンパ
ストドラ パンパ ストドラ パンパ
ストドラ ストドラ ストドラ パンパ
ストドラ パンパ パンパンパン
森を抜け 丘越えて
はるばると 友と行けば
月は明るく照らす
美わしき 夜の道
ヘイ!
<コーラス>
アメリカでは様々な替え歌が存在
『ストドラパンパ』はアメリカから日本へ輸入された曲だそうだが、確かにネットで検索してみると、それらしき曲名や歌詞、YouTube動画などが次々と検索にヒットしてくる。
上述のとおり、英語では「Stodola Pumpa」、「Stodole Pumpa」などの表記が見られるほか、「Walking At Night」、「Above a Plain」などの歌詞の歌い出しを曲名とするケースも多いようだ。
それでは、実際に英語バージョンの『ストドラパンパ』の歌詞をみていこう。なお、英語バージョンには無数の替え歌が存在し、以下の歌詞はあくまでもその一例である。
『Stodola Pumpa』
Far in the hills I hear the nightingale
Singing a song that brings home back to me.
Three years ago at home I left my love.
Still she is waiting, waiting there for me.
Hey!
丘の向こうで 歌うサヨナキドリ(ナイチンゲール)
その歌で故郷を思い出す
3年前 故郷に残した恋人
彼女はまだ僕を待っている
CHORUS:
Stodola, stodola, stodola pumpa.
Stodola, pumpa, stodola pumpa.
Stodola, stodola, stodola pumpa,
Stodola pumpa, pum, pum, pum.
ストドラ ストドラ ストドラ プンパ(パンパ)
ストドラ プンパ ストドラ プンパ
ストドラ ストドラ ストドラ プンパ
ストドラ プンパ プンプンプン(パンパンパン)
Three years to wait is much too long for us.
My love and I, we now could married be.
Yes, she and I, we now would have a son,
Strong and so handsome, handsome just like me!
Hey!
CHORUS:
僕らに3年は長すぎた
恋人と僕 今こそ結婚しよう
そうさ僕らは息子を授かる
強くてハンサム、僕みたいな息子をね!
Son, when you're grown, you must not stay at
home.
Into the army you will come with me.
Here in the army you will learn to drill.
When you are good, then you can march with me!
Hey!
CHORUS:
息子よ 大きくなったら家を出て
僕と一緒に軍隊へ入るんだ
そこできびしい訓練をして
上達したら一緒に行進しよう!
サヨナキドリ(ナイチンゲール)とは?
サヨナキドリ (小夜啼鳥)とは、スズメ目ヒタキ科の鳥類。夕暮れ後や夜明け前によく透る声で鳴く。英語ではナイチンゲール(Nightingale)とも呼ばれる。美しい鳴き声は「西洋のウグイス」と称えられ、「ヨナキウグイス(夜鳴鶯)」とも呼ばれる。
【YouTube】Stodola Pumpa (歌詞は上記と異なる)
アメリカでの替え歌 その2
様々な替え歌が存在するアメリカ版『ストドラパンパ』のうち、比較的に普及率が高いと思われるのが、ここで紹介する『Walking at Night』 (夜道を歩けば)である。
「夜道を歩く」という内容は、NHK「みんなのうた」で『牧場の小道』として訳詞された日本語歌詞バージョンとある程度共通性が見られる。日本語に訳詞した元の歌詞があるとすれば、この『Walking at Night』が参考にされた可能性が高いと思われる。
『Walking at Night』 (夜道を歩けば)
1.
Walking at night along the meadow way.
Home from the dance beside my maiden gay.
(繰り返し)
HEY!
夜の草地を歩いていく
ダンスパーティの帰り道
綺麗な彼女を連れて
CHORUS:
Stodola, stodola, stodola pumpa.
Stodola pumpa, stodola pumpa.
Stodola, stodola, stodola pumpa.
Stodola pumpa, pum-pum-pum.
2.
Nearing the wood we heard the nightingale.
Sweetly it helped me tell my begging tale.
(繰り返し)
HEY!
近くの森では サヨナキドリ(ナイチンゲール)が鳴き
その声は甘く 愛のささやきを助ける
CHORUS
3.
Many the stars that brightly shone above.
But none so bright as her one word of love.
(繰り返し)
HEY!
夜空に輝くあまたの星々
されど何よりも輝く 彼女の愛の言葉
CHORUS
原曲のチェコ民謡とは?
原曲はチェコ民謡とされる『ストドラパンパ Stodola Pumpa』だが、ではその原曲のチェコ民謡とは一体どのような曲なのであろうか?
残念ながら、『ストドラパンパ』のルーツ・原曲であると自信を持って断言できるほどの情報源に接触することは時間の都合上できなかった。
ただそれでも、関連性が比較的高いと思われるチェコ民謡らしき曲に巡り合うことができたので、ここで簡単に紹介することで、本稿を締めたいと思う。
『Kanafaska』
カナファスカ(チェコの民族衣装の一種)
Proto jsem si kanafasku koupila,
carija koupila, carija koupila,
abych se ti, můj miláčku líbila,
carija líbila, carija líbila.
服を買ったわ。貴方のために綺麗になりたくて。
Ref.:
Stará, stará pumpa, pumpa stará, stará pumpa,
stará, stará pumpa, pumpa stará, pum, pum, pum.
古い井戸、古い井戸・・・
(発音はシュタラ・プンパ」に近い)
Koupila jsem na červenou na bílou,
carija na bílou, carija na bílou,
aby si mi nechodíval za jinou,
carija za jinou, carija za jinou.
赤と白の服を買ったの。他の女の子に目を向けて欲しくないから。
Ref.:
注:フォークダンスの「カナファスカ」とは別の曲
【YouTube】『Kanafaska』 カナファスカ (歌詞は上記と異なる)
関連ページ
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