ごっこ 語源・由来は? どんな意味?

子供たちが真似して遊ぶ「ごっこ遊び」の「ごっこ」って何?

鬼ごっこや電車ごっこなど、子供たちの「ごっこ遊び」の「ごっこ」とは、一体どんな意味があるのだろうか?語源・由来は何だろうか?

辞書を引くと、「ごっこ」とは、子供が何かの真似をして遊ぶ際の名称として使われる旨の解説がみられたが、残念ながら語源・由来までは解説されていなかった。

ごっこ 語源 由来 意味

ネットで確認できる情報では、語源・由来などについてそれなりに筋の通った説明を見かけるが、出典などの客観的な資料が明示されていないため、客観性・信憑性に欠ける。

このページでは、「ごっこ」の語源・由来・意味について、辞書の解説やネットの情報を簡単にまとめたうえで、現時点における筆者なりの仮説を立ててみたい。

辞書の解説

まずは、辞書による「ごっこ」の解説を確認してみよう。「デジタル大辞泉」(小学館)による「ごっこ」の説明を次の通り引用する。

ごっこ[接尾]

名詞に付いて、二人以上のものがその動作・行為をすることを表す。

1 いっしょにある動作のまねをすること、特に子供の遊びについていう。「鬼ごっこ」「プロレスごっこ」

2 交代して同じような動作をすることにいう。ばんこ。

「代はり—にする茶番だから」〈滑・八笑人・五〉

この解説によれば、「ごっこ」とは、真似をする子供の遊び、または交互に同じ動作を行うことを意味している。

「ごっこ」の語源・由来については記述がない。ここで強引にそれらしい説明をしようとすれば、真似事(まねごと)の「ごと(事)」、または「こうご(交互)」が変化して「ごっこ」になったと解説することになるだろうか。

実際にネットで検索してみると、この「事」と「交互」を「ごっこ」の語源・由来として説明しているブログや書き込みをよく見かける。

それなりに説得力があるが、残念ながらどれも文献の引用など客観的な裏付けがされておらず、個人の憶測の域を出ていない。推測であるのならそう明示すべきだろう。

では、「事」と「交互」が「ごっこ」の語源・由来ではないとしたら、他にどんなルーツが考えられるだろうか?

ここで筆者は、接尾語の「こくら(ごくら)」を語源の一つの可能性としてご紹介したい。

こくら・ごくら

「デジタル大辞泉」(小学館)では、「こくら(ごくら)」という接尾語について、次のように解説している。

こくら[接尾]

《古くは「こぐら」「ごくら」とも》動詞の連用形、まれに名詞などに付いて、競争する意を表す。くらべ。くら。「走りこくら」「飛びこくら」

この解説によれば、「こくら(ごくら)」とは「競争」を意味する古語であることが分かる。

さらに「精選版 日本国語大辞典」(小学館)で調べてみると次のとおり。

こくら 〘接尾〙

(「ごくら」「こぐら」とも) 動詞の連用形、また、まれに名詞などに付いて、競争する意を表わす。くらべ。くら。ごく。

これらの解説では、まだ「ごっこ」につながらない。そこでさらに、例示されている「ごく」という古語について「精選版 日本国語大辞典」(小学館)を調べてみると次のとおり。

ごく 〘接尾〙

(「こくら」の変化した語) 近世の上方語。動詞の連用形に付いて、競争の意を表わす。くらべ。くら。ごっこ。「走りごく」「にらみごく」など。〔随筆・守貞漫稿(1837‐53)〕

「ごく」とは「こくら」の変化した古語であり、さらに「ごっこ」という語が例示されている。「にらみごく」は「にらめっこ」の語源だろう。

発音的にも「ごく」と「ごっこ」は近く、これで「こくら」と「ごっこ」がつながったと言えそうだ。

現代とは意味が違う?

ただし、「こくら」を「ごっこ」の語源・由来とするには、解決しなければならない大きな問題点一つがある。

現代における「ごっこ」は、「電車ごっこ」や「お店屋さんごっこ」などのように、子供が何かを真似て遊ぶ場合に用いられているが、「こくら」を語源とする「ごっこ」は「競争」の意味合いで使われており、「真似ごと」と「競争」では意味合い上の断絶があるのではないかという疑問だ。

一体いつ頃からどのような形で「ごっこ」は「競争」から「真似ごと」へ変化していったのだろうか?

残念ながら、この点について明確に説明された資料等を確認することはできなかった。

競争から真似事へ?

ただ、筆者の私見では、「競争」の「ごっこ」と「真似ごと」の「ごっこ」をつなぐ一つの仮説を立てることは可能だと考えている。

例えば、「チャンバラごっこ」という子供の遊びを考えてみた場合、武士(大人)が真剣で切り合うような動作を子供が木や竹の棒などで「真似」する遊びであると共に、相手を打ち負かすという「競争」の要素も含まれている。

さらに、「戦争ごっこ」や「兵隊ごっこ」などについても、大人の真似という要素と、相手と勝ち負けを争う「競争」の要素がある(場合が多い)ように思われる。

これらの例のように、「真似」と「競争」の両方の要素がある子供の遊びについて「ごっこ」が使われ、それがやがて「真似」て遊ぶ方に使われることが主流となったとすれば、「競争」の意味合いで使われていた「こくら」を「ごっこ」の語源・由来と考えることも十分に可能だろう。

競争の方は「っこ」へ

では、「競争」の意味があった「こくら」は、現代ではどこにつながっていくのだろうか?

これについては、「かけっこ」、「あてっこ」、「投げっこ」、「にらめっこ」などの接尾語「っこ」に継承されているのではないかと筆者は推測している。

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